王太子の後悔 おまけ2話 エイベル編
王太子の後悔 おまけ 1話の続きです。
私は目が覚めてからずっとルーン公爵邸で過ごしています。
お父様は私の体が回復するまでは目が醒めたことは公表しないそうです。
お父様達と時々訪問するリオと穏やかにすごしております。
食事量も少し増えましたのよ。まだ邸内を歩き回るほど回復できてませんが。
ノックの音ですね。
「どうぞ」
入ってくるのは嘘、慌てて立ち上がるとふらついてうずくまります。
「レティシア!?」
駆け寄ってくるエイベルに腕を伸ばして制します。
侍女に視線を向けます。
「触らないでください。絶対にシエルを私の部屋にいれないでください。呼ぶまでシエルは自室で休ませてください。わかりました?。命令ですわ」
侍女に命じる。困惑顔ですわね。
「お嬢様?」
「シエルに私の命令と伝えなさい。お茶はあとでいいですわ。すぐにシエルのところに行きなさい。わかりましたね」
「かしこまりました」
慌てて侍女が去って行きます。シエルが傍にいなくてよかったです。
怯えた侍女の顔など気にしてる余裕はありません。
一度目の命令で動けなかったことは気になりますがそれは後ですわ。
力を振り絞って立ち上がり優雅にソファに座ります。体力を温存しないと。
まさか一生うちに訪ねてくることはないと思った人間がくるなんてね。
令嬢モードで武装しますわ。
「ごきげんよう。エイベル、今日はどうされましたの?」
「いや、その」
「私を殺しにきましたの?お望みならお相手しますわ。」
「違う」
「シエルに手も出させませんわ。それとも今回はなんです?私のどんな罪を告発しますの?」
「マールの後をつけたらここにきてて、」
リオ、なにやってますの!?
でもお父様に用があった時かもしれない。
よく私のことだと思いましたね。
リオに気づかれずに後をつけるなんてさすがですわね。
「私が無事だとわかって、いてもたってもいられなくなりました?そこまで憎まれてるとは思いませんでしたわ」
「違う。謝りたくて」
「はい?」
「悪かった。俺の勘違いで」
今更、謝られても。
相変わらずまっすぐですわね。
いまはもう、呆れるしかできませんが。
「どうしてそんなに簡単に信じるものを変えられますの?」
「真実からは目を背けるわけにはいかない。裏をとったらお前は無実だった。」
ため息がでます。相変わらず脳筋ですわね。
すぐに考えずに行動しますのよね。昔から浅はかさなんですわよ。普通は裏を取った上で行動しますのよ。
でも裏を取りに行けただけでも成長ですかね。
「私に謝罪してどうしたいんですの?」
息をのみましたね。
嘘でしょ。その顔、考えてなかったの!?私が目覚めたと知って謝罪しにきた。
悪いと思ったから。ありえませんわ。
相変わらず考えがたりませんわ。
「私、シエルを傷つけたこと許す気ありませんので謝罪は不要ですわ。用がすんだらお帰りくださいませ」
突っ立って考えこんでますね。
いつまでいますの?
本当に手のかかる人ですわ。
「何を悩んでますの?」
私、あなたに裏切られたことわかってますの?。
この幼馴染は。
仕方ありません。ため息は我慢しませんわ。
「幼馴染のよしみで聞いてあげますわ。おかけください。」
座りましたね。
「俺は殿下のためだと思ったんだ」
「殿下ってどちらの?」
「俺の忠誠はクロード殿下に捧げている」
あら?レオ殿下側ではなかったんですの。
私は、裏切ったのかと思いましたわ。
もうどうでもいいことですが。
「それで?」
「殿下の側近から外された」
「努力して登りつめるしかありませんわ」
「不要と言われたのに?」
貴方は私を殿下から不要だからって切り捨てましたよね。
どの面さげて言いますの。
殿下がそこまで申されるなんてそっか、仕事を増やしたから怒ってますのね。
失笑が隠せませんわ。
「同じ不要仲間の私と分かち合いたいと?」
「違う。レティシアは不要じゃない。殿下はお前を婚約者として大事にされていた」
まさか…。信じられませんわ。
自分のしたことわかりませんの?
エイベルの思惑はわかりましたわ。
でも私、絶対にごめんですわよ。
「私に取りなしは無理ですわ。私、もう殿下との婚約を破棄してますもの」
「目覚めたんだから、もう一度」
ありえないわ。殿下か側近から外した理由をわかってないんですわね。放っておきたいんですが、きっと言わないとわからないんですよね。
「バカですの?一度醜聞を持った私が後宮に入ることはありません。クロード殿下と婚姻することはありませんわ」
驚いてますわね。本当にありえませんわ。
エイベル、こんなにバカでしたっけ?
あれ?殿下の護衛と命令に従って動いている記憶しかありませんわ。
「嘘だろ!?だから、俺は、」
側近を外された理由に気づきましたのね。
今更すぎますわよ。
殿下は仕事が増やされることが大嫌い。
こんな面倒な自体を招いたこと怒ってますのよ。
「殿方がその手の情報に疎いのは仕方ありませんが、もう少し情報収集と状況判断をするべきですわ」
そんな落ち込んだ顔をされても困りますわ。
落ち込みたいのは私ですわよ。
「レティシアはこれからどうするんだ?」
「お父様の判断にお任せしますわ。私は私にできることをするだけです」
「婚約者じゃないのに?」
「私はルーン公爵令嬢ですもの。殿下とルーン公爵のために務めをはたすだけですわ」
「なんでそんなに前向きなんだ?」
貴方なんかに絶対に弱ったところなんて見せませんわよ。
貴方は加害者、私は被害者なんですよ。
わかってますの?
相手にするだけ無駄ですわ。
「後悔するより先をみないと。」
「殿下以外に嫁ぐのか?」
「ええ。醜聞もちの私を望んでくださり、ルーン公爵家に利を提示してくださる方なら」
「俺が婚約申しこむよ。責任とる」
絶対に嫌ですわ。お父様の命令なら仕方ありませんが。
責任をとってくださるなら二度と私の手を煩わせないでくださいませ。
「お断りですわ。ルメラ様はどうしましたの?」
「彼女は姿を消したよ」
「探しにいかないんですの?」
「俺はビアード公爵家の嫡男だから。」
恋より家を選んだんですね。
わかりやすいですわね。
「私の醜聞は私の失態なので気にしないでくださいませ。責任を感じていただかなくて結構ですわ」
「俺、殿下もレティシアもいないと、どうしていいかわからなくて」
はい!?
「ありえませんわ。今回のことを反省してもっとよく考えて行動してください」
「考えた結果が今回の」
「嫌ですわよ。どうして私が貴方の面倒をみないといけないんですの。」
「物心ついた時から一緒にいただろ。醜聞なんて守ってやるからさ。な?」
ありえません。貴方に嫁ぐなら修道院に入った方がマシですわよ。
一生貴方の面倒を見るなんてごめんですわ。
「頼りになりませんわ。お断りです」
「家の利ならあるだろ?俺とお前の子供なら武術の才能あるだろ。魔力も申し分ない。有事の際はうちからルーン公爵家に兵の派遣もできる。同派閥だし結束も深まる」
弱いですわ。それくらいじゃ利益になりませんわ。
「うちにはターナー伯爵家とのつながりがあるので十分です。そんなに考えたくないならリオと一緒にいればいいでしょ?リオ、考えるのも教えるのも得意ですわ」
「マールは怖い」
情けないですわね。
私が面倒みるよりマシですわ。
「リオに手紙を書いてあげます。優しく指導してくださいね。リオ兄様って。」
「やめろ。」
「考えたくないからって嫁に来いとかありえませんわ。もう疲れたので帰ってくださいませ」
「悪い。病み上がりだよな。また来るよ」
「来なくて結構ですわ。さようなら」
エイベルは帰っていきましたわ。
エイベルは私の社交能力を目当てに勧誘しにきます。
部屋ではリオとエイベルの喧嘩が日課になりました。
時々エドワードも加わります。ため息がつきませんわ。
辺境伯にでも嫁ぎましょうかね。
私がもしも望むなら好きな縁談を選んでもいいって言われてますもの。
「なぁレティシア、頼むから」
「お前みたいなやつにシアは任せられない。どの面さげてくるんだよ」
「謝罪した」
「許さないって言われたろ?」
「本人はそんなに気にしてないみたいだから、大丈夫だろ?」
「それはお前が決めることじゃない。シアが気にしててもお前なんかに本音話すかよ」
「あいつは嘘つかないだろ?」
「世の中には本音と建前があるんだよ。察しろよ。もう来るな。迷惑だ」
「二人とも姉上は病み上がりなんです。邪魔です。僕は姉上はずっとうちにいればいいと思うのでさっさと他をあたってください」
「うちとの縁談も利があるだろ?ビアード公爵夫人なんて令嬢の憧れだろう」
「僕、バカな人間に姉上を任せたくないんです。僕が娶りたいくらいです」
「兄妹は駄目だろう」
「抜け道はありますよ」
うるさいですわ。
疲れましたわ。喧嘩するなら部屋から出て言ってくださいませ。
「なぁ、シア、うちにくる?ここだと休めないだろ」
「名案かもしれませんね。騒がしくて疲れますわ」
「リオ、姉上をそのまま囲いこむなんて許しませんよ」
「マール、お前、もしかしてレティシアのこと」
「さあな。」
休ませてくださいませ。
もうこのまま寝てしまいましょうか。
また倒れたと騒がれても大変ですわ。
一度放っておいて、ソファで眠ったら医務官呼ばれて大変でしたもの。
申しわけありませんがどなたか助けてくださいませ。
お父様、お母様早く帰ってきてくださいませ。
養生したいのに周りが養生させてくれません。




