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追憶令嬢の徒然日記 小話  作者: 夕鈴


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レティシア3年生  報復

セリア視点


ルメラ様に絡まれて疲れているレティの気分転換に庭園でお昼を食べることにした。


レティの隣で食事をするカーチス様のお茶に、今年も色々巻き込んだ仕返しに薬を仕込んだ。

身体に害のない悪戯程度の薬を。


「レティシア、最近リオ様と一緒にいないんだな」


レティは恋心を自覚してからリオ様を見ると赤面してしまうのが恥ずかしくて、前よりも距離をとっていた。



「レティシア、大丈夫か!?」


カーチス様の言葉にレティがサンドイッチをうまく飲み込めずむせこんで、カーチス様に差し出されるお茶を一気に飲み込んだ。


待って、レティが飲んだのって…。

カーチス様に飲ませる予定だった薬入りのお茶…。

息を整えたレティが薬の作用でぼんやりしはじめた。


「レティ、ちょっときて」


レティが隣にきたので膝の上に寝かせる。


「授業までには起こすから寝ていいわ」


レティは頷いて瞳を閉じた。


さて相手はどうしようか。そうね、思うところがあるし、決めた。


「シエル、サイラス・グランド様をよんできて。急いで」

「リオ様はよろしいですか?」

「リオ様はいらないわ。グランド様だけでいいわ」

「わかりました」


レティが目を開けないように手のひらをレティの瞼の上に軽く乗せる。

不審に見てくるカーチス様達の視線は気にしない。


この薬を飲むと眠気に襲われる。

目覚めて最初に見た相手に魅了される。

短時間だけど。


シエルが戻ってきたわね。

グランド様とやっぱりリオ様もついてきた。

まぁいいわ。


「グランド様、こちらに。シエル、リオ様はそれ以上近付けないで。レティのためよ」


シエルがリオ様の足止めをしている間にレティを起こす。


「レティ、起きて」


グランド様がレティをのぞきこんだので、レティの瞼をおさえていた手を離す。

レティとグランド様の目が合った。

まだ試作品なんだけど、薬の効果はどうかな・・。


レティが慌てて起きあがり、私の背中に隠れた。


「シア、どうした?」


リオ様の声にも反応せずにレティの視線はグランド様。

私の背中に隠れて顔を赤面させて見惚れている。

ちゃんと薬の効果は出ているみたいね。


「シオン嬢、俺に用ってなに?」

「レティがグランド様に会いたいと」

「セリア、だめ。言わないで、おねがい」


眉間に皺を寄せるグランド様にレティはしょんぼりした顔をした。

グランド様に自分が迷惑がられてると思ったのよね。

間違ってはないんだけど。



「サイラス、俺のシアに何をした?」


リオ様がグランド様を睨んでる。


「いや、俺もなにがなんだか」

「覚悟はいいよな」

「リオ、落ち着け、殺気おさえて」


リオ様、レティのしょんぼり顔にも弱いのよね。

グランド様には色々思うところもあったし、この状況はリオ様もおもしろくないわ。

やっと自分を意識した可愛い婚約者が他の男に見惚れるなんて。


「リオ、グランド様を困らせるのはやめてください」

「シア?」


レティがリオ様を睨んでいる。リオ様動揺しているわ。

リオ様がレティに伸ばした手をレティは躱した。リオ様はショックで固まってるわ。

良い気味だわ。


「ルーン嬢、どうしたの?」


二人の様子にまずいと思ったのかグランド様が声をかけた。

いつもそんな風に二人を取り持ってるのかしら。


「グランド様、あの」


レティは顔を真っ赤に染めて見惚れて言葉がでない・・。


「ルーン嬢、具合悪い?」


「ちがいます。セリア、もうどうしたらいいか」



背中に隠れていたレティに抱きつかれる。

グランド様に見つめられてさらに顔を赤くして照れてるレティは可愛い。


リオ様が睨んでるわね。

私は別に怖くもなんともないけど。


「セリア、シアに何をした?」


「さぁ」

「シアを被験者に使うなと言ってあるよな」


昔、1度だけレティに使って面倒なことになったのよね・・。

珍しくリオ様においしい思いをさせてあげたのに、レティを被験者につかった報復をしてきたのよね。

リオ様にしては手ぬるい報復だったけど・・。


「偶然です。私もレティに使うつもりはありませんでした」

「体に害はないんだな?」

「もちろん」


さすがに悪戯には身体に害のない薬しか使わないわ。

リオ様がレティの腕を掴んでもがくレティを力づくで抱きしめて、耳元でなにか囁いている。

意識を失ったレティを抱き上げた。

この男、まさか


「レティシアは午後の授業は体調不良で早退だ。ニコル、頼むな」

「リオ様、魔法でレティを寝かせるなんてひどいです」

「セリアには言われたくない」

「私も行きます」

「来るな。シアの友達でもあんまり目に余るなら妨害するよ。うちに横槍入れられたら困るだろ?」



確かにマール公爵家に妨害されれば国外からの取り寄せができなくなる。

マール公爵家の紹介の伝手もあるし・・・。


「わかりました。今日は譲ります。でも場合によっては本気になります」

「成人まで手は出さないよ。」


リオ様がレティを抱きあげたまま去っていった。


「シオン嬢、あんまりリオを刺激しないでよ」

「あら?なんのことだか」

「リオの相手するの大変なんだよ」

「知りません。もう少し見ていたかったのに残念です」

「俺が殺されるからやめて。なんの薬をつかったの?」

「惚れ薬の試作品です。レティだとどこまで効果が出てるか怪しいから実験結果としては足りませんね。」

「物騒な薬を・・。」


翌日レティに話を聞いたら、眠った後の記憶がないみたい。

当事者に記憶が残らないのは危険ね。この薬は失敗だわ。

リオ様への嫌がらせも失敗におわった。

この日からレティはリオ様と距離を置くのをやめた。

結局リオ様に良い思いをさせることになってしまった。

リオ様達への嫌がらせはまた考えればいいか。


おまけ


リオ視点


シエルが教室に来たので、シアになにかあったのかと立ち上がるとサイラスを呼びにきていた。

嫌な予感がしてサイラスと一緒にシアの3年1組に行くとシアが寝ていた。


シアに俺を近づけるなという命にシエルは戸惑っていた。

無言でシエルに視線をむけるとシエルは後ろに控えた。

シエルの優先順位はルーン公爵家。次点は友人のセリアよりも婚約者の俺の方が優先される。

レティシア以外の命に従う必要はないんだけど、シアがシエルにセリアや俺が命をだすことを許容しているから従うだけだ。


なぜかサイラスに見惚れて様子おかしいシアに唖然とする。

シアに伸ばす手も避けられる。

セリアの背中に隠れるシアの目が虚ろだ。

なにか飲まされたか・・。

セリアが悪戯に使うのは弱い薬。

時間と共に効果も切れるだろう。

シアに眠りの魔法をかけて、部屋に戻ることにした。


俺のシアがサイラスに見惚れているのも嫌だし、この可愛いシアを周りに見られるのも許容できない。

セリアは厄介だ。

シオン伯爵家は特別だから手出ししにくい。俺にできるのは研究の妨害だけ。

セリアが一番嫌うのは妨害だから手を打つことは可能だ。

ただ手を回せば、シアがしょんぼりするよな。

シアはセリアのこと大好きだもんな。

俺の妨害を知れば悩むよな。セリアも俺が本気で手を回せないことは気付いているしな。



俺の膝の上で寝ているシアの顔を眺める。

シア、セリアは危険って認識してくれないか・・。

わからないんだろうな。言ったら怒るよな。

そろそろ起きるかな。

食事をさせないとだよな。


目を開けたシアの顔を覗き込む。


「リオ?」


シアの頭を撫でるとふんわり笑う。もう大丈夫だな。

こばまれなかったことに安堵する。


「気分は悪くないか?」

「ぼんやりするだけです。」


起き上がったシアを抱きしめる。


「リオ、暖かくてまた眠くなってしまいます」

「もう少し寝てていいよ」

「うーん、駄目です。授業に遅れます」


シアが俺の腕から離れた。

時計を見て固まっている。


「体調不良で早退って言ってある」

「あんまり欠席すると成績が」

「試験で高得点をとれば大丈夫だ。たまには俺と過ごしてよ」


シアの顔が赤く染まった。


「だって、リオを見ると心臓が。顔も赤くなって、こんな姿ルーン公爵令嬢として許されません。」


可愛いよな。


「シアへの非難は俺がなんとかするから、俺といてよ。」


シアがどうしていいか悩んでるな。


「リオはずるいです。私ばっかり。なんでそんなに余裕があるんですか」


俺は昔からお前に翻弄されまくりだけど・・。


「私ばっかりリオのこと・・・」


「好きだよ。俺はシアが好きで婚約を整えてもらった。自分でもいつからシアが好きだったか覚えてない。ただ昔からお前が可愛くて仕方なかった」


「リオ?」

「だからシアが思っているよりもずっと惚れこんでる。シアの願いはなんでも叶えてやる。」


シアが抱きついてきた。


「リオ、大好きです。リオが一番です。だから傍にいてください」


俺の胸から顔を上げないシアが愛しくてたまらない。

シアからの一番も傍にいてほしいも初めてだ。

ここまで長かった。

たぶんシアは赤面した顔を見られたくないんだろうな。


「俺もレティシアが一番だよ。絶対に離す気はないから安心して」


しばらくして顔をあげたシアはにっこり笑った。

少しは信頼されたかな。

シアは昔の記憶のトラウマでいつか捨てられると思ってるから。

シアはよく俺の予想をこえていく。

だから、油断はしてはいけない気がする。

でもどんなことがあっても俺がシアを離さないことは変わらない。


その後、シアはやっぱり眠った。

そして、記憶を飛ばした。

今のいっぱいいっぱいのシアには俺を好きとは言える余裕はないよな…。

セリアの薬のせいかな。

本心ではあるんだろうけど。

今はシアの寝顔を堪能するか…。

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