第22話
暗闇が消えた時、大きな岩の上に我はいた。
岩から転げ降りて、我は、足を痛めてしまった。
痛い。父さま。痛いよー。涙が出てきた。
そういえば、変な声が、おんもの力を、なんたらとか言ってたのを思い出した。
歩けなくなった我を、乗せてくれる物。力なき我の代わりに、戦える強い物。
我は、そう思いながら式神召還を試してみた。
白い大きな猫が、現れ我の顔を、ペロリと舐めた。
我は、少々漏らしてしまったが、痛む足を無理やり動かし後ずさり、大猫と離れようとした。
しかし、大猫は近づいてくる。我は、背中が木にあたり、観念して座り込んだ。
大猫の口が迫り、我の後ろ首を噛もうとしている。ああ、だめだ。父さま・・・
ふっと体が持ち上がり、ぽいっと投げられ、ストンと大猫の背に落ちた。
我は、大猫の背から落ちないように、背の毛にしがみついた。
「がう」と大猫が鳴き、我の方を見ている。我も大猫を見つめる。綺麗な目をしている。
我は理解した。この大猫は式神で、我の僕だと。止まらない涙を、大猫の背に顔をうずめ拭いた。
我が行きたい方向に、心地よい速さで大猫は走ってくれる。途中に小鬼の集団がいたが、大猫を恐れ、散り散りに逃げていった。
我は、谷を目指した。剣士がいるはずだ。我を助けてくれる剣士が。
走れど走れど、谷らしき場所には着かない。谷にいかないと剣士に会えない。
我は、涙ぐんだ。このところ、勝手に涙と鼻水が出てくる。
大猫の背にしがみつき、泣いていたら寝てしまったらしい。
目が覚めた時、夜になっていて、街の明かりが見えた。みたことの無い、まぶしい明りだ。我は、街に入ることにした。こちらに来てから、何も食べていない。
式神送還を唱えると、大猫が消え、我はまた一人になり、自然と涙が出てくる。街の方へ足を引きずり、我は歩いた。




