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文化祭前に波乱の予感1


結局、あの時以降美鈴ちゃんとの接触はない。


葵先輩が好きなんだって信じてるけど、なかなか美鈴ちゃんと先輩が二人になるシーンがないのだ。

二人きりのところに乱入したら、嫌な奴っぽい雰囲気出ると思ったんだけどな。

このままだと作戦を考え直さないといけない。



で、だ。あっという間に文化祭の前日になってしまった。

風紀委員の見回りは本当にすごく多い頻度で入っていて、空き時間はクラスの売り子をしたらほとんど潰れてしまう。

うぅ、無念。


そういえば、私のクラスではアイスの販売をするらしい。全然知らなかった。

千香ちゃんに昨日聞いたら案の定呆れられた。

随分前にクラスで話し合っていたみたい。いつやってたんだろう?


それで、小道具とかはクラスの文化祭委員が中心になって作っていたようなんだけど、教室の改造はできていなかった。

昨日まで通常授業があったから、これはしかたない。飾り付けられた部屋で授業とかシュール過ぎるし。


でも、文化祭前日の今日はまる一日授業がなくなる。

全ての時間を準備に充てて良いのだ。


机の運び出しとか、内装とか、とにかく忙しい。

明日になったら人が来てしまうから、急ピッチで飾りつけを進めないといけないのだ。


そんな中で私は教室の廊下の飾りつけをすることになった。

一面にダンボールを貼り付けるらしい。

教室の飾り付けを仕切ってる子にそう指示された。完成像を全く知らないから、そうやって指示してもらえてすごく助かっている。


そして。な、な、なんと!このダンボールがただのダンボールじゃない。

アイス屋さんをイメージして、事前にペンキで絵が描かれているのだ。

これが結構良く描かれていて、完成度の高さに驚く。

私、こういう小道具制作に全く関わっていないのだ。なんだか申し訳ない気持ちになってくる。


貼るためのガムテープが不足しているから、グダグダとガムテープが来るまで廊下で待つ。

他のクラスの廊下も人が沢山である。忙しなく動き回り、そこら中で指示の声が飛ぶ。

なんとも大変そうだ。


「あっ!」

「あれ、橋本さん?」

「林!」


隣のクラスの廊下に出てきたのは林だった。

両手いっぱいに色とりどりの造花を抱えている。

野暮ったい男と大量の花って、似合わない!ぷくく……、笑える。


「その花、何に使うの?」

「廊下の飾りに使うんだって」

「ふーん、そうなんだ。そういえば、林のクラスって何の店をするの?」


林のクラスの教室を覗き込むけど、まだ内装が完成してないし、全く何の店か検討がつかない。

ただ、なんとなくカラフルだなって印象を受ける。


「僕のクラスは飲み物を売るんだ。タピオカジュースだって。橋本さんタピオカ好き?」

「タピオカー!行きたい!すごい行きたい。でも見回りがー……。でも隣のクラスだし頑張れば買えるかもしれない。いやそこを……ぶつぶつ」

「……好きみたいだね」


林に教えてもらって、一気にテンションが上がり、すぐに急降下して、どうすれば帰るか案を練りだした私。

傍から見たら情緒不安定である。分かってる、分かってるけどー。こっちは文化祭で夢の全制覇ができないから、きっちり優先順位をつけないといけないのである。私だって大変なのだ!

悩み多きお年頃なのだ。


脳内会議で忙しい私をよそに、林が全く別の方向に首をひねる。


「あ、愛咲さん。中で委員長が探してたよ」

「え、本当?」


脳内会議を一時中断して顔を上げると、廊下の反対側から来たらしい美鈴ちゃん。

遠くから見るのはあったけど、睨まれて以降こんなに近くにいることははじめてである。


「あっ」


また睨まれちゃうかな?なんて、美鈴ちゃんを見てたらガッツリ目が合った。

林に対して笑顔だったのに、私を見て口角が下がりだす。

うわー、私への好感度めっちゃ下がってるじゃん。悲しい……。

だがしかし、これはライバルキャラの宿命だよね!


「あー、美鈴っちいたー。中の飾りつけで聞きたいことあるんだよ。早く来て来てー」


教室の中から一人の女子が出てきて、美鈴ちゃんの腕を取った。

そのまま連行されていく美鈴ちゃん。


でも私との間の視線は長い時間途切れることがなかった。

睨みつけてはないけど、厳しい視線を向けられている。睨む一歩手前くらいの鋭さである。

当然、笑顔成分なんて一切ない。


美鈴ちゃんが顔を背け、中に消えたことを確認してから、ゆっくり林が口を開く。


「橋本さん、一体何をしたの?」

「まだ何もしてないよ」


信じられないといわんばかりの目で見られている。疑いが晴れない。

林、人をむやみに疑ってはいけませんって小学校で習わなかったのか?!


「嘘だ。愛咲さんの表情いつもと大分違ったよ。盗撮とかバレたんじゃないの?」

「盗撮なんてしてないからね。私の心のカメラでなら撮りまくってるけど……」

「絶対そういうのがバレたんだ。僕、いつかこうなると思ってたんだよ。早く謝った方がいいと思うよ!」

「失礼な奴だな!」


バレてないです。

あれは美鈴ちゃんの嫉妬なの!

葵先輩といるところ見られちゃったからなの!


と、勝手に美鈴ちゃんの恋愛事情をバラすわけにはいかない。

林も一応美鈴ちゃんに片思いしてるし。不用意に人様の秘密を言ったらダメなのである。


それに、林の失恋を慰めるの面倒くさい。絶対、泣くもんコイツ。




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