英気を養わねば2
美鈴ちゃんが横切る人に紛れて、じっとこちらを見ていた。
え?美鈴ちゃん?!幻?
そういえば美鈴ちゃんのバイト先の近くだった、ここ。これからバイトなのかな?
話しかけるほど仲良くなれてないし、どうしようかな?と考えていると美鈴ちゃんの目がキッと鋭くなった。
あれ?私睨まれてる?
な、な、なんで?!私、一体なにをした?!
「未希、食べないの?」
先輩からの言葉に、視線を戻してアイスを食べさせてもらう。
それから美鈴ちゃんの方を向くと、さっきまでとは比にならないほど睨みつけられた。
どうしてか分からず茫然とする私をよそに、美鈴ちゃんは顔を背けて歩きだしてしまった。
「どうしたの?」
「え、えっと……。なんでもないです」
ちょっと放心気味になった私に、葵先輩が首を傾げる。
「なにかあった?」
「いや、本当になんでもないんです。気にしないで下さい」
「そっか」
私は皿に残っているミルフィーユの残りにフォークを突き刺す。
美鈴ちゃんに睨まれた原因を考えれば、今になって察したその理由。
きっと、葵先輩だ。
やっぱり美鈴ちゃんの好きな人は葵先輩なのだ。だから先輩と一緒にいた私の存在に怒ったのだ。
それなら睨まれたのだって納得できる。
どうして、こんな簡単なことにすぐに気付けなかったんだ、私!
脳内でそう結論づけた私。
美鈴ちゃん、怒ってたなぁ。ちょうどいい機会だし、そろそろ役目をまっとうしようじゃないか!
「そういえば、もうすぐ文化祭だね。千香が言っていたけど、未希のクラスはアイスの販売なんだよね?」
「ふぇ?あ、はい」
いけない。違うことを考えていたせいで全く話聞いていなかった。
「初めての文化祭だけど、頑張ってね」
ああ、文化祭の話か。
「頑張ります!いろんなクラスで食べ物の販売するみたいだし、今から楽しみなんです」
「あ、そういえば未希は文化祭だったっけ?風紀委員の仕事の担当」
そういえば、そんなものがあったかもしれない……。
もう決めたのなんて随分前だから忘れてたよ。
葵先輩の顔色が曇る。
なんで?なんで?
「それだと、未希は文化祭を回るの難しいかもね」
「な、な、なんですと!」
「外部からのお客さんが多いから見回りの頻度が多いんだ。だから……」
ショック!
楽しみにしてたのに。学校中の食べ物のお店を回ろうと思ってたのに。
なんてことだ。知ってたら、文化祭の担当になんてならなかったのに。
「元気出して。俺も文化祭の見回りするから、大丈夫そうならちょっと見て回ろう」
「はい……」
全制覇はできそうにないようだ。
くそぅ。来年こそは、絶対に食べつくしてやるんだから。




