英気を養わねば1
週末、葵先輩にケーキを食べるお誘いを受けた。
もちろん即答で行くと答えたよ!当然!
行く場所は、前に美鈴ちゃんと遭遇した時に行った所の近くなんだって。あの辺、可愛いお店多かったから、とても楽しみである。
「今日はどんな店なんですか?」
「ミルフィーユが美味しい店だよ。未希、ミルフィーユも好きだったよね?」
「はい!」
ていうか、なんでも食べます。なんでも好きです!
いつも通りというか、なんというか。
千香ちゃんは今回も一緒じゃない。ちぇー。
千香ちゃんにも今度ミルフィーユ作ってって頼んでみよう。あ、ミルクレープとかも美味しいかも。
想像したら涎が……。じゅるり。
「ここだよ」
「オシャレな店ですね」
店は、美鈴ちゃんのバイト先の喫茶店から徒歩五分くらいの場所だった。
大通りに面していて、店の外にはテラス席も並んでいる。今日は日差しも強くない上に、そよ風が吹いてて過ごしやすい。だから外で食べても気持ちよさそうである。
その気持ちが顔に出ていたのか、葵先輩がクスリと笑う。
「外で食べようか」
「いいんですか?」
こんな気持ちのいい日に、美味しい物を頬張る。
うん。美味しい物がそれ以上に美味しく感じるシチュエーションだよね!
「いいよ。未希が喜んでくれたら俺も嬉しいし」
近くの席のイスを引いて先輩が手招きする。
「未希はミルフィールとアイスティーでいいのかな?」
「大丈夫です」
「なら俺が買ってくるから、ここに座って待ってて」
私がイスに座ると、後ろから頭をポンポンとしてから店内に向かった先輩。
わざわざありがとうございまーす。
ワクワクしながらテラス席の横を通り過ぎる人の流れを眺める。
ミルフィーユが楽しみで、そこを通る人みんなに自慢してあげたい。さすがに、迷惑だから実行はしないけどさ。
「お待たせ。こっちが未希のね」
葵先輩が、私の前にミルフィーユとアイスティーを並べる。
生クリームと果物でデコレーションしてあるミルフィーユは、見た目からキラキラしている。
見ただけで分かる。絶対、コレ美味しいよ!
皿に釘付けになっている私に、先輩からの声がかかる。
「食べていいよ」
「いただきますっ!」
顔を上げることなく、皿から視線を離さずにフォークを握る。
ああ、ミルフィーユって食べるの難しいんだよね。崩れてしまう。
でも、私負けない!
ちょっと崩れて皿の上が不恰好になってしまったけど、味は変わらないからいいのである。
「うまっー」
「幸せそうな顔してるね」
頬に左手を当てる。
支えていないと頬っぺたがずり落ちる。
頬の心配はするけど、右手は止まらない。フォークに一口大のミルフィーユを乗せて絶えず口に運び込む。
ああ、なんて幸せな時間なんだ。
「未希。ちょっと手を止めて口を開けてごらん?」
ミルフィーユの皿にしか視線がいっていなかった私に、葵先輩の声。
やっと目線を上げて先輩の顔を見ると、私の口の前に先輩が差し出したスプーン。
ある意味条件反射のように差し出される物の先を口に含めば、口内に甘い冷たさが広がった
ミルフィーユとは違う味。濃厚なバニラの香り。
「アイス?」
「そう。こっちも美味しいでしょ?」
「はい、美味しいです」
私が食べた後のスプーンを使って、先輩もアイスを一掬いして食べている。
このお店すごいね!甘い物がすごく美味しいよ。
「もっと食べたい?」
「はい」
素直に頷けば、葵先輩が楽しそうな顔でアイスの乗ったスプーンを私の口にのばす。
「未希、あーん」
えへへ、えへへ。美味しいですぞ。ご満悦状態です。
ミルフィーユだけでなくアイスも味わえるなんて、先輩と二人で来てよかった。
二人で別の物を食べたら、二種類味わえる。なんて、お得!
勝手にニコニコしちゃう私の口角。元に戻りません。
でも、それでもしょうがないよね。美味しい物が目の前にあるんだもん。
と、思いながら葵先輩からの餌付けを受け入れていたら、ちょっとした視線を感じた。
通行人の方に目を向けると、こっちを見ている美鈴ちゃんと目が合った。




