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予期せぬ再会


 リニアレールに揺られること数十分ほどして、俺達はハワイアンというショッピングモールへ到着した。


 このハワイアンは中にリニアレールの駅が設置されているほかに有名ブランド、学生向けのショップなど様々な店舗が並んでいることから利用者はとても多い。金持ちから貧乏学生までが夕方や休日にこのショッピングモールにやってくる。


「おいおい、何で俺の後ろに隠れる」


「ひ、ひ、人が多すぎます」


「そりゃショッピングモールだからな。人が多くて当然だろ」


「う、ううぅぅぅぅ」


 この子、人ごみが苦手なのか?


 首をかしげながらも俺は彼女の手を握り締める。


「ふぇっ!?」


「迷子になったら大変だからな。こうしておいたら大丈夫だろ」


「は、ひゃい」


 この人ごみの中で俺よりも背が低い少女が透明になったらみつけられる自信はない。


 見失わないように手を取った。


 するとトマトみたいに顔を真っ赤にしている。少し、可愛い。


「そ、そりゅれでどうやって探すんですか!」


「うーん、まぁ、気ままに店を回ろうか」


 へ?と首をかしげている彼女の手を引いて俺はショッピングモールの中へ向かう。


 王国学院の制服を着ている生徒がちらほら見えるが自分の買い物が忙しいんだろう。俺達へ目を向ける人はいない。


 人ごみの中で有名人がいたとしても中々みつけられないだろう。


 だから、俺は人ごみが大好きだ。


 自分のペースで進めない、人が一杯は好きじゃないと思うだろうけれど、俺は違う。この中にいれば俺という個人が特定されることは無い。


 人ごみの中で相馬ナイトは集団のひとつとしてしか認識されない。


 学院に来てから俺は平穏というものを全く味わえていない。俺個人という存在が注目を浴びてしまっているからだ。けれど、人ごみの中にいることで相馬ナイトという存在は隠され「学生その一」という扱いになる。


 存在が消されるのと同じかもしれないが今の俺には癒しとも。


「・・・・ん?」


 変なことを考えていた俺は隣の小宮山さんが一言も喋っていないことに気づいて、俺は首を動かす。


 彼女はある場所をじぃーっと視ていた。


「ふむ」


「あ、ご、ごめんなさい。私」


「レッツゴーーー」


「えぇ!?」


 驚く彼女を引っ張って俺は近くのぬいぐるみ店へ突撃した。


 小さなお店だが、国内、海外のくまのぬいぐるみというぬいぐるみを揃えているらしく、多種多様なくまさんが並んでいる。


「うわぁ~」


 小さなくまさんをみて小宮山さんは目を輝かせている。


 手前にあるぬいぐるみを触る。うん、色やふわふわしている以外ぬいぐるみの違いがわからない。


 ずらーと並んでいるぬいぐるみをきらきらした瞳でみている小宮山さんへ尋ねる。


「どれか気に入ったのとかある?」


「あ、えっと・・・・ない、です」


 慌てて目を逸らす。


 ふむ、あれか。


 俺は表示されている値札をみてから財布を開く。


 うむ、少し前に安倍から掏り取ったお金を使えばなんとかなる。


「すいません、これください」


「えっ!?」


「包装しますか?」


「いいえ、このままでお願いします」


 店員さんへお金を払って俺達は店を出る。


「はい、プレゼント~」


「ど、どうして」


 渡したぬいぐるみをみて小宮山さんは目を見開いた。


「うん?欲しかったんじゃないの」


「ほ、欲しかったですけど・・・・どうして、わかったんですか?」


「ただの直感です」


「えぇえ!?」


 にやり、と笑ってから俺はぬいぐるみを彼女へ渡す。


「欲しいと思ったんでしょ?大事にしてな」


「は、はい!」


 ビシッと直立して彼女はぬいぐるみを受け取る。


 彼女の仕草、一つ一つが愛くるしい。


 まるで小さい頃の――。


「・・・・ん?」


 頭の中でノイズが走った。


 俺は額に手を当てる。


 今のなんだ?


 もう一度、記憶を探ろうとする。けれど、ノイズが激しく終には頭痛がおき始める。


「ど、どうしました?」


「少し頭痛がしただけ・・・・」


「べ、ベンチで休みましょう!!」


「いや、大丈夫だから」


「ダメです!頭の症状は注意しないといけないんです!体が何かを訴えているということはそれに応えないといけないんですよ!!」


「おい、ちょっ」


 有無を言わせぬ雰囲気で小宮山さんはショッピングモールの噴水広場のベンチへ俺を座らせる。


「失礼します!」


 小宮山さんはぐぃっと近づいて俺の頭を触り始めた。


 どこか怪我が無いか調べてくれているみたいだけれど、体制が問題だ。


 ベンチに座っている俺へ覆いかぶさっている。


 後頭部などを調べる為に必然と距離を詰めていくから肌と肌が触れあう。


 シャンプーの臭いが鼻腔をくすぐる。


「どこか怪我をしたとかそういうわけではないみたいです。貧血かな?」


「いや、そんなことは今までになかったけど」


「うーん、いっそ病院で検査を」


 おいおい、何か話がどんどん変な方へ向かってないか?


「いやね、落ち着こうよ。病院は大げさで」


「おやおやぁ、楽しそうなことをしておられますなぁ?」


 喧騒が静まり返った。そう錯覚してしまうような声が耳に入った。


 人ごみの中、黒衣で体をすっぽりと隠した者が立っている。


 だが、行き交う人達は誰もソイツを見ようとしない、ぶつかることもない。


 俺の中で警鐘がなり始めた。


 原因はわからない、本能染みた部分が警戒を強めていた。


「きゃっ?」


 即座に立ち上がり小宮山さんを守るように位置を替えて、相手を睨む。


「お姫様を守る騎士というわけかぁ、面白い面白いなぁ~」


「・・・・」


「安心しなよ。俺様はキミ達を襲いにきたというわけじゃない。噂の相馬ナイトを一目見ようと脚を運んできただけさぁ」


「それはそれはどんな噂なのか聞いてみたいなぁ」


 相手の動きに警戒しつつ、俺は答える。


「ま、ありきたいなものから恋バナまで、まさに種類豊富、退屈しないって感じだねぇ~。でもさぁ」


――そんなビクビク震えていると小動物みたいだねぇ。


「ひぅ!」


 小宮山さんが小さな悲鳴を漏らす。


 一瞬で黒装束が眼前に姿を見せる。


「噂の相馬ナイトがこの程度のことに対応できないなんて期待はずれもいいところだなぁ・・・・これならすぐに俺様が二代目を襲名できそうだ」


「お前、一体」


「これは宣戦布告であり、警告、命令だ。相馬ナイト、そう遠くない未来に俺はグラングニョルでこの街を破壊する。止める気があるなら追いかけろ!俺様を止められなければ、“ファントム”の名前は貰い受ける!」


 さっきまでへらへらしていた者とは思えない感情の篭り方に俺は動けなかった。


 相手は伝えると人ごみの中へ消えようとする。


「ま、待て!」


「待ってください!」


 小宮山さんを置いて俺は黒装束を追いかける。


 奴のいっていた言葉通りならとんでもないことをしようと企んでいる。放置しておいたらいつか俺へやってくるかもしれない。


 だったら、そうなる前に阻止する。


 なにより。


「グランギニョル」


『これは宣戦布告であり、警告、命令だ。相馬ナイト、そう遠くない未来に俺はグラングニョルでこの街を破壊する。止める気があるなら追いかけろ!俺様を止められなければ、“ファントム”の名前は貰い受ける!』


 奴の言葉、何かが引っかかる。


 人ごみを押しのけながら俺は黒装束を追う。


 行き交う者達が睨んでくるのを無視しながら探す。


「くそっ、どこに」


 見失ったか?と目を動かす。


 視界の片隅で黒いものを捉える。


「逃がすかよ!」


 地面を蹴って黒装束を見失わない。


「きゃっ!?」


「あだ!」


 角を曲がったところで俺は誰かとぶつかる。額に何かがぶつかって仰け反る。


 相手は思いっきりぶつかってしまったようで尻餅をついていた。


「すいません、急いでいたもので、大丈夫ですか?」


「痛いわねぇ、もう!前くらいちゃんと見な――」


「申し訳ありません」


 尻餅をついた相手は鋭い瞳で俺を睨む。


 悪いのは自分だとわかっているから素直に謝罪をして手を差し伸べる。


「・・・・あの?」


 相手は俺の手を握らずじぃーっと見ていた。


 黒装束を探さないといけないのにと焦っているのが顔に出たのか、相手は立ち上がると顔を近づける。
























「あんた・・・・相馬ナイトね」





















告げられた言葉に俺の時が一瞬、止まった。



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