最強で最恐エリア2
強い長には女が集まってくるものだが、ここに住むものは大半が女で総数は男が十に対し女が三百二十六……どう見たって多すぎだ。
しかも若い男は一人しかいない。
数千年生きる龍でも、長い目を見れば、このままでは絶滅してしまう。
こればっかりはドーグはどうする事も出来ない。
適齢期の女は、ドーグから見れば女の子よりさらに下……幼子の様に見えるし、ほとんどが血縁関係にある。極めつけは先に述べた若い男も末の孫で男の九人中五名が血縁関係にあり、残り四名は最初から自分に着いてきてくれたものだ。
男が生まれなかったわけではない。運が悪い事に何年か前に、集団で巣立って行ってしまったのだ。
そして、二年前から若い男は、複数の女と子作りには励んでいるのだが一向にできる気配は無い。そこにドクタの事を聞いて渡りに船というわけだ。
「うむ、というわけなのだが、何か改善の策はあるか」
表面上は何でもないような感じで言ってるが、内心は冷汗ものだ。
ドクタが首を横に振れば、又白紙に戻ってしまう。まだ時間はあるにはあるが、迫りくる滅びと対峙するのはなかなか骨が折れる所だ。
ドーグの気が高ぶりすぎて、木々は波打ち、ドクタも吹き飛ばされそうになり、ドーグの両足に糸を巻き付け、何とか踏ん張っている。
「ドーグさん、落ち着いてください。患者さんを診ていないので何とも言えませんが、何個か案があります。まずは案内していただけないでしょうか」
「おお、そうかそうか、歩きではゆけない場所だ。我の背中に乗れ小さき救世主よ」
ドーグの顔はどこか嬉しそうだった。
上空に飛び上がると、ドクタはすぐに理解した。徒歩ではとてつもないが無理だと。
数少ない生還者はこう語っている。
まるで天空都市だと。
ドーグは斜め上空に移動する。雲を突き破り着いた先は、昔の楽園跡地。
その名も『天空巨大都市ラフィーネ』
~天空巨大都市ラフィーネ~
所々に建物があり、レンガ造りで、天井が壊れ、剥き出しになっている家や跡地だと思われる瓦礫の山、そのほとんどが何処かしらかけている事から時代の古さがあり、ひび割れているが、舗装された道。生活感があり、昔住んでいた名残がある。
(「まるでこの森の縮図だな」)
空中から見た景色を見てドクタは思う。
平原があり、森と闇森があり、湖があり、荒野があった。
パノラマを見ているように美しく、移り変わる景色の中、目的場所の前にドーグは降りたった。
そこは洞穴というより、むしろ巨大な門の様に、ドクタは見えた。
それもそのはず、ここは、龍達の住処だ。龍達が通れるように中も当然広い。
「案内しよう。我についてこい」
ドーグの先導でどんどん奥へと進んでいく、
薄暗いが暗闇というほどではなく、蛍光虫と呼ばれる蛍見たいなものが淡く照らしている。
迷路の様に入り組んでおり、右へ左へと分かれ道を移動し、初めて入った者なら間違いなく目的地に着かずに迷う。
「ここは昔、防空壕として造られた物だ。そこを我らが住処として使用している。ここまで入り組んでいるのはそのためだ。我の後ろからはぐれるのでないぞ、道をそれれば死ぬぞ」
忠告するつもりで殺気の籠った口調でドーグは言うが、凍らせ竦みあがらせ、射殺す様な眼と相まって、生きた心地はしない。本人は善意のつもりでやっているが、やられた方はたまったものではない。
かくいうドクタはそう言う類の事は慣れているので、顔色一つ変えず感謝の言葉を口にし少し重たくなった体で、はぐれずドーグの後を追う。
記憶力がいいドクタですら、あやふやになるほどの分岐点を抜けた後、ようやく目的の場所に着き、飛びこんで風景に、ドーグは顔を顰め呆れ、ドクタは『これは厳しそうだな』と気持ちを引き締めた。




