最強で最恐エリア3
僕の名はヴァロード。このエリア唯一になってしまった若き雄龍だ。
若い龍とは、幼龍から進化を遂げてから五十年~二百年前後の龍をさし、全長は平均七~八メートル。
ちなみに幼龍とは産まれてから五年以上経った龍の事で全長は平均一メートル程、ある日突然進化する。幼龍から進化するまでの期間は大体二十年~三〇年程。
本音を言えば、ヴァオードは、他の雄龍達と一緒にここから出たかった。他はどうか分からないが、ここは女性が強い。
とにかく強い。親の代以上の女性はそんな事は無いが、適齢期以下の女達は僕達若い男をとにかく見下し、顎で使い、遅ければ罵り、反抗すれば数の暴力でめためたにされる。
そのせいで、他の男たちは耐え切れず出て行ってしまった。ヴァロードの場合は、とある理由から何とか耐えていたが、もうそろそろ我慢の限界だ。
今日も今日とて女達の暴走は止まらない。
「はぁ、まったくドーグ様ったら、早く子供作れ早く子供作れって、私達は子作り製造龍かっての」
「そうよそうよ、男なんでダメな奴ばっかり。若い龍は特にそう、貧弱、気弱、弱魅。魅力ある龍といったらドーグ様位よ」
「それに比べてヴァロードは駄目駄目ね、こんなのと子供産みたくないわ」
「いくらドーグ様のお願いだからってこっちにも権利ってものがあるわよ」
子作りのために用意された大広間の中央で言いたい放題の女龍達は尻目に、ヴァロードは、隅で縮こまっていた。
反抗すれば、もっとひどい事になるのは骨の髄まで染み渡っており、ヴァロードはただただ、嵐が過ぎるのを目立たない様に待っていた。
そんな時だ、ドーグとトクタが入ってきたのは。
これが、ヴァロード自身、転機となるとはこの時知る由もなかった。
「王たる我の命令を聞かずここまで虚仮にするとはとは、お主達どういう了見だ」
濃密な殺気に雌龍達はガタガタと震え、首が締め付けられているかの様に呼吸するのも苦しそうだった。
やらないのにできるはずはない。ドーグは雰囲気からそれを察した。
本来、この大広間は若い男女の営みの場で、そのほかの龍達が入る事は禁忌とされており、ドーグ自身一線から退いてから一度も入ってはいないし、経過の方は若い雌龍やヴァロードからも聞いていたので信用していた。
ドーグが悩んでいた事が全くの勘違いで、ここのエリアを統率してからここまで馬鹿にされたのは初めてだった。
思わず、ここにいる龍達を皆殺しにしようとする衝動に駆られたが、それを抑えたのは、ドクタの鎮静魔法だ。
鎮静魔法は、ドクタが作った無系統の魔法で、心を鎮める効果がある。今の様に劇場に駆られた者には大変有効的だ。
幾分か冷静になったドーグは、危うく可能性の芽も摘み取ってしまうような行動をおこそうとした自分を恥じた。
「礼を言う、小さき救世主よ。もう少しで若き龍達を根絶やしにする所だった。しかし何も罰を与えなければ示しつかん」
どこの時代どこの世界でも同じだが、ルールを守らない者には何かしらの罰が与えられる。そこの頂点にいる者に背いたのだから尚更だ。
ドーグの視線から意見を求められていると察したドクタは思案する。
(「今分かっている事は、ドーグが命令した事をせず、行為はおろか見るからに関係は最悪に近い」)
雄龍との関係が良好なら幾つか策はあったのだが、依頼された内容を考えるともはや不可能といってもいいぐらいだ。それでも光明を見つけるため。
「そうですね、まず両方の言い分を聞きましょう。代表者を一人立てていただいて、後は別室で待機してもらう形でどうでしょうか」
まず問題点を見つけるという意味合いも含めて、ドクタはそう提案し、代表者を一人に絞ったのも、選ばれるのは若い雌龍を統率しているものだとあたりをつけたからだ。
追い詰められた集団という者は、精神的柱に頼ろうとする場合が多い。
今回のケースでは、長に嘘がばれて、絶体絶命。そこにドクタが出した提案で目線が一つに集中するのは無理からぬ事だ。
視線の先には、周りの雌龍より一回りほど大きく一際眼つきが鋭い紅い鱗の雌龍。
ドーグはドクタの意図を察し。
「うむ、聞いた通りだ。ヴァロードとナターシャはここに残り、連絡があるまで親元に帰るが良い……王たる我の気が変わらぬうちにな」
この空気から逃げ出せるのだ。これ幸いと、我先にと出口へ向かい三分とかからず、この場は四人となった。




