死霊と腐敗エリア3
受肉か……検討もつかないほど難しい事だな。ホークの様に機能の一部分が退化したというなら、参考の物があれば回復させるのは難しくない。体の一部分が消失したのならば、難しいが解析魔法の第二改変を使って、治す事も可能だ。
しかし今回の場合、最初から骨でできている。なので、解析魔法を使っても意味がなく、仮にできる魔法があったとしても、膨大な血管を作り、臓器を作り肌を作り等々、考えうる限りでも膨大な魔力が必要で、今のドクタには……というかこの世界にいる全ての者でも無理な話であった。
「あああ……案内したい所がある。ブーソウル引き続きついてきてくれ」
ガラもそれは分かっているのか、どこかに案内しようとしていた。
暗闇でもガラは見えるのだが、ブーソウルを連れていくのはドクタへの配慮だ。
人間は、本当の真っ暗闇になるとまず平行間隔を失い、長時間になると精神に異常をきたす。
「ありがとうございます。助かります」
その事を察したドクタは素直に感謝の意を述べた。
青白い幻想的な光源の中、異変を感じたのはそれから十分経った頃だった。
ぽつぽつとばらばらになった人骨のような者が出始る。
これは人間の……いやスケルトンの骨だな。
ガラが殺気を出した事から、ドクタはそう推測した。
「くくく…くそっ! ヴァンの奴等め」
全身から殺気が迸り、あまりの怒りに、肩を震わせ、ガラに顔があれば、きっと般若の様になっているに違いない。
それほどまでに、今のガラは近寄りがたかたい。
しかし、ガラがなんで怒っているか理解できるが、原因や状況が見えないドクタにとって、聞くしかなく。
「いったい何が起こったのですか」
長い沈黙の後、徐々に殺気が収まり、ガラは答えた。
「わわわ……私の根城に攻めてきたのだよ、憎きヴァン族が」
前代も前々代もその前も、ここのエリアボスは誇り高く気高いヴァン族なのだ。
だが、今代は、スケルトン界の麒麟児にして、突然変異であるガラに、先代が破れて、ここのエリアボスは劣等種であるスケルトンになったのだ。
私が生まれる二百年も昔の話なのだ。
それからスケルトンとヴァン族との長きにわたる抗争が始まったのだ。
勝利条件は互いの首領を倒す事。
互いに消耗したらどこかのエリアに攻め込まれるので、三つのルールを決めたのだ。
一つ、『マーチャントエクセルブ』で挑戦された場合協力する事。これは、このエリアがあってこそなので、当然の事なのだ。
二つ、コアを破壊する事を禁ずる。これは先ほどのやつと似たようなもので、戦力が減ってしまえば、付け込まれる隙になりかねないので、これも当然の事なのだ。
三つ目は、一回戦闘不能となったものは、この戦いに参加できない。これはあとからきめられた事なのだが、不死属性の両者はコアを壊されない限り復活するので、埒があかないから、このルールを作ったのだ。
そして現在残っているのはスケルトン五百、ヴァン二十。始まった当初の数はスケルトン約二千、ヴァンは五十.リタイアや新たな個体の誕生等で、増減を繰り返し今のような数字となったのだ。
本来スケルトンとヴァンとでは、戦力に大きな開きがあり、ヴァン一人でも一騎当千、五十人もいればあっという間に殲滅できるのだ……ガラが居なければなのだが。
リタイアした三十人はいずれもガラと対戦した者なのだ。
何人かかろうがガラに勝った者はいないのだ、ガラは埒外な化け物なのだ。
なので、ガラが前線に来た時は撤退の合図なのだ。
それでも殿を務めた者はガラの餌食となりじりじりとヴァン族は数を減らしていったのだ。
ガラが居れば負ける、そんな状況下でも断続的にヴァン族は攻撃を仕掛けたのだ。誇り高き、自分たちの訓示にかけて。私達はカッコいいのだ、ガラ達は悪役なのだ。
焦っていた私達にもたらされた情報。それは、敗北するのを待つしかないヴァン族にとって一縷の望み。甘い誘惑だったが、それにすがるしかないのもまた事実なのだ。全く持って歯痒いのだ。
「行くぞ娘よ」
「父様。分かったのだ」
リークされた情報はガラの不在。対価は……。今日、ガラ不在のスケルトンの根城に総攻撃を仕掛けるのだ。
私の名はネルエル。ヴァン族を統率するヴァンキングを父にもつヴァンプリンセスなのだ。




