第2話 デカ襲来
巨大生命体───俗に言う怪獣で、我々は『デカ』と呼んでいる。
しかし巨大生命体と一口に言ってもどの世界から来るかによって危険度は様々だ。口から火を吹くもの、硬いうろこを持つものと様々だが、こんなのは序の口だ。中には、口から熱線を出してくるものや、唐突に発表をしてくるドラゴンのようなものもいる。
「まずいな」
今日は異世界から少年が来るし、デカも来るしあまりついてない。そう思いながら北は指示を出す。
「際はライフルで注意を引け、俺はここで本部に連絡し少年を保護する。」
東洲は頷き即座に動く。
デカが漂流エリアの防衛ラインを越えてしまうと、近くには住宅街があるため、なんとしてもここに留めたい。
北は本部に連絡するとともに緊急防災無線の発信機をつける。連絡が終わり次第即座に防災無線で避難指示を出す。その行動に無駄は一切ない。
鈴木はひどく怯えていた。塾に行く途中のはずなのに、何故かここで目が覚めて、最後には巨大生命体。とんだ災難だ、とでも言いたげである。
〔先輩、応援、まだっすか?〕
東洲からだ。声からでもとても危ない状態だと伝わってくる。応援までは後15分もある。本来なら北も行くが、今隣にはスズキが居る。一人にさせるのは危ない。しかし応援の大火力で無ければ恐らくデカは倒せない。
外の様子を北は覗いた。
デカはドラゴンのお手本のような形だった。際がライフルで注意を引き着弾点の中央部付近で逃げ回っている。しかし動きには確実に疲れが見えて来ている。持って後3分だろう。
(考えろ、最適解を)
──────────あった。
少年を連れて即座に逃げ、後で応援に来る。これなら大丈夫だろう。しかしそんなことはしなくても良いことにも気がついた。
「ここで暫く大人しくしていてくれ」
鈴木にそう言って北は走り出した。
♤
東洲は、限界に近かった。しかしそんなことはお構いなしにデカは踏みつけようとしてくる。
〔あともう少しだ、際!〕
北さんからだ。何か解決策でも見つけたのかな。なら今するべき事は
「・・・生き延びる!」
デカの足から腹に滑り込み、2発。
そのまま横っ腹に銃剣を突き刺す。
突き刺した反動で飛んできた尻尾を交わし、距離をとる。
急にデカは攻撃をやめた。そして背中から炎が出てきて、いかにも「口から何か出します」というポーズをとった。
(あ、俺ここでお終いかな)
東洲の頭には様々な人の顔が走馬灯のように浮かんだ。お世話になった恩師、両親・・・。
「みんなごめ────」
ズドォォン
耳をつんざく轟音だった。そしてデカは例のポーズを崩され、一度口を閉じた。
「際、大丈夫か」
そういう北さんの手には煙をふくロケットランチャーがあった。
「そいうえばありましたね」
使わないのですっかり忘れていた。観測施設にはこのような事態を想定して、バズーカなどが配備されている。
「まあいい、際、こっからは勝ちに行くぞ」
しかし、相手はあの堅いうろこを持っている。どうやって勝つのだろう。そんな疑問を察したのか、北さんは満面の笑みで答える。
「こいつ急所がガラ空きだぜ」
まさか、先輩あそこを狙うのか。納得すると同時に北を鬼だと思った。
「際、引きつけといてくれ」
「うっす!」
東洲はデカの顔面に銃弾をありったけ打ち込む。注意を逸らしている間に北は回り込み、弱点に照準を定める。
「息子に挨拶は済んだか?!」
笑顔で引き金に指をかける。師匠の教えだ。撃つ前にすまし顔で一言。
「察するぜ、その痛み。」
発射。ロケット弾は一直線に飛んでいく。
ズドォォン
デカは声もなく泡を吹いて気絶した。それを見て北は呟く。
「どの世界の生物も弱点は変わらないんだな。」
東洲はデカを哀れみ、来世の子孫繁栄を祈った。
♢
「おーい」
応援が到着したのは間もなくだった。北は出迎える。
「菱川さん、お久しぶりです。」
「おうおう、おめぇら派手にやったな!」
応援を引き連れていた隊長らしき人物は笑顔で答える。彼は北尾 重正。北の上司であり、師匠だ。「いいかぁいつき、ロケラン撃つときはなぁ、笑顔で掛け声とともに撃つんだぜぇ」とよく言っている。
応援隊にデカの後処理を任せ、少年の所に行く。少年は部屋で息を殺していた。
「終わったぞ」
「・・・」
返事は帰ってこない。そっとしておこうと思い、メロンパンをおいて面談室を出ようとした。その時、少年が口を開いた。
「何だったんだよあの化け物」
北は、何も言わない。
「実はあんたらが戦っているとこ、ちょっと見たんだ。ここにはあんなのが頻繁にくるのか?」
北は少年にこの世界が異世界だと話すことにした。突如無数の隕石が現れたこと、それにより、異世界の物が着弾点に表れること、北や東洲が異世界物を管理する鑑定士だということ…。
少年は何も答えず、頷くばかりであったが、それは決して諦めた様子では無く、自分が置かれている状況を飲み込もうとしていた。
(よくできた少年だな)
北は内心感心した。
一通り言い終えた時、少年が質問をした。
「俺のこと、これからどーするの?」
「異界生物研究所に送る」
少年は恐る恐る聞く。
「人体実験とかされないよな?」
「知らん」
北も知らなかった。しかし、あまり良い噂は聞かない。一部界隈では、デカを飼い慣らそうと考えている等騒がれている。
「そっか…」
少年はあからさまに悲しそうな顔をした。
「仕方ないな、うち来るか?」
少年は喜んで頷く。
(何言ってんだ、俺)
北は自分の言動に戸惑った。やっぱり無理、とでも言おうか。
(いや、泊めるか)
今日はもう眠くて面倒くさいからいいや。北はそう思ったことにした。




