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第三章 未来都市の設計図 第三十四話 嘘が世界を動かすとき──八種の嘘・国家戦略・文明生成の力学──

 二十一世紀第二四半世紀── 世界は、覇権国の力ではなく、 予測・予想・推測という「嘘の言語」で動いている。 コメット国、チュン国、ロ国の三大核大国は、 互いの嘘を読み合い、 世界の政治・軍事・経済の流れを形づくる。 この章は、その嘘の力学を描く。


三界生成理論で見ると、嘘は、内界の欲望、境界の判断、外界の利害が交差したときに生まれる「調整のエネルギー」である。嘘を使う者は、未来を設計し、嘘を読めない者は、未来に飲み込まれる。この章は、嘘の三界構造を示す。


 第三十四話 嘘が世界を動かすとき──八種の嘘・国家戦略・文明生成の力学──


 嘘は、世界を破壊する力ではなく、世界を動かすエネルギーの「構造」である。予測は建前、推測は、防御、沈黙は交渉。二十一世紀の政治・軍事・経済は、真実ではなく“嘘の扱い方”で決まる。 この章は、嘘が世界を動かす瞬間を描く。


 黒田義鷹大頭領は、2026年一月一日午前九時、テレビ電話でオウ国緑の党の政治家トム・キンブル、大投資家・岡本龍郎、資源エネルギー庁次官・大倉敏夫とで、二十一世紀第二四半世紀に予想される世界投資環境の想定について会議を行った。

 彼らは、世界の政治、軍事、経済の社会エネルギーの向かう方向を予測して、オウ国西部の砂漠開発地をどうすれば、富に転換できるかを考えていた。


 義鷹の内界には、複数の自我が議会のように存在し、それぞれが異なる嘘の視点を担当していた。義鷹は、内界に様々な概念の自我を住まわせているとも言える。彼らは、自分の自由な立場で好き勝手な議論を展開する無責任な自由人だ。


 シーン1:嘘の種類(理論):嘘は三界のエネルギーとして機能

 

 義鷹:「誤解殿、嘘の界を調べてくれたか?」

 誤解殿:「はい、AI情報で調べましたよ。予測、推測、建前、利害、欲望、官僚、投資家、僕らが司る境界の嘘まで調べましたよ」

 

 義鷹:「あぇ、本当に誤りなく調べたか。謝りはないなぁ」

 誤解殿:「あぁ、僕は真面目に調べたが、嘘の世界ですから誤解される嘘もあります」


 義鷹:「いつから、俺にダジャレを言えるようになったか?」


 誤解殿:「予測の嘘を調べたからです。これで何でもいい訳できることが判りました。

予測の嘘とは、主体が、質問することにより、客体が確率的に適当な文章を予測して、つなぎ合わせる言葉の仕組みです。

AIは、この手法を使って応えるので、事実とは異なる情報をもっともらしく出力してしまう現象が起きます。この幻覚を波瑠氏ネーションといいます」

 

 義鷹:「それ、誤解でなく、ハルシネーションのダジャレか」

 誤解殿:「受けませんか・・・」不満を表す“はてなマーク顔”になる。


 彼は、主体と客体は、事実の正しさを確認して解答するのではなく、前もって確率で判断して発言しているので、第一次情報は、事実確認が必要になるとした。確率的に生まれる嘘だと言える。AI界、経済界、統計界、気象界など至るところに存在する、と報告した。

 

 義鷹:「お前、AIのようにだんだん利口になっていないか?お前は、誤って理解すのが任務だよ。じゃ、推測はどうまとめたの?」


 誤解殿:「推測の嘘は、主体が事実や十分な証拠に基づかないで自分の内界情報に基づき、それを事実のように客体に伝える言動行為をいう。

主体は、自分の感情や経験の偏見や思い込みによって、限定情報から物語を作る習性を持つ。

つまり、思い込む現象、物語化の習性、噂話の拡散という行動三界を持つ。

思い込みや勘違いから生まれる嘘だと言える。情報不足の人間界によく現れる現象です」


 彼は、堂々と質問に応える。


 義鷹:「建前の嘘を説明してみろ!」


 誤解殿:「社会との調和、人間関係を保つために本音を隠して口にする言葉が、建前の嘘になる。

ニッチ国の文化は、正に本音と建て前の文化と言える。

相手からの誘いを断るとき、相手を褒めるとき、ビジネスの社交辞令として使われている。

優しい嘘と言える。社会界に頻繁に現れる現象だ」


 義鷹:「利害の嘘は?」


 誤解殿:「主体が損得を考えて、意図的に事実を歪めてつく嘘が利害の嘘だ。

明確な動機と悪意が解る嘘だと言える。

自分が得するために相手を制御しようとする嘘だとも言える。

客観的な証拠を求めることで騙しの被害を防げることもある。これは、日常的に現実界に現れる」


 彼は、欲望の嘘とは、主体の強い願望や理想に脳が支配されて、現実を自分の都合の良いように歪める嘘だと報告した。承認欲求、現実逃避、見えの三界で周囲に嘘を拡散させる人々もいるとした。精神界によく現れる現象と言えると述べた。


 義鷹:「素晴らしい誤解できない完ぺきな調査報告じゃないか。官僚の嘘とは?」


 誤解殿:「僕は、変身した。正解殿になる」


 義鷹:「それは、やめとけ。君らしくない」彼は、義鷹の忠告を無視した。


 正解殿:「官僚の嘘とは、個人界、神話界、権力界、無責任界、精神界、組織界、説明界など広大なエリアから誕生する嘘だ。

組織防衛、政策正当化、政治権力への忖度、公的な情報や事実を意図的に隠蔽・改ざん・歪曲するなど極めて高度な嘘の生成脳力が求められる世界の現象だ。

個人的利益や感情ではなく、組織ぐるみで国家組織の論理や制度の建前を維持するために行われている現実界の嘘と言える」


 義鷹:「正解殿、投資家の嘘とは、なんだ」


 正解殿:「投資家の嘘とは、市場、他の投資家を制御し、自己利益最大化、損失回避するために発信される歪曲情報や主体に都合の良い主張のことをいう」


 彼は、投資界では、デマが巨額の資金を動かす現象が起きるとした。その嘘は、市場の歪みや株価の暴落の引き金になる事態が起こす。

 投資家の嘘は、マネーゲームを支配するための戦略的な嘘とも言えると説明した。その嘘は「誰かの利益は、誰かの損失」になることが多い。

 他者を欺いてでも、自分が有利なポジションに立とうとする強烈な動機が働く。

 プロの機関投資家などのインサイダーと個人投資家の間には圧倒的な情報格差が存在する。

 嘘やその誇張で利益に変換しようとする言動と言えるとした。


 義鷹:「すばらしい、変身ぶりだ。正解殿。境界の嘘は?」


 正解殿:「主体と客体の境界には、常に曖昧さが存在する。それにより生じる嘘。他人の領域に踏み込むために使われる嘘技術の一つ。心理学や人間関係で使われることが多い。

悪意のある騙し合いというよりも、依存関係、過干渉、認知の境界から発生するのが特徴だ」


 四者会談のテーマは、核兵器三大国の談合構造・現代版「トルデシリャス条約」

・二十一世紀型戦術(無人機・費用対効果)

・民間軍事会社構想・核廃棄物の再利用

・南極の氷雪砂漠の価値 → 嘘が動かす世界の政治・軍事・経済についてだった。


 シーン2:世界構造の変化=嘘の応用技術:嘘が国家戦略を動かす


 四者会談は、具体的には、コメット国、チュン国、ロ国の三大国の指導者たちの政治、軍事、経済の「予測」、「予想」、「推測」に基づく計画行動が、世界の投資環境へどのような影響を与えるのか動きの共通認識を想定するための会議だった。


 計画、予測、予想、推測などの言葉は、嘘だとされない。この言葉を使うと、失敗責任を回避できることがある。情報には、嘘や罠が仕掛けられることがある。真実を混ぜることで嘘を隠すことができる場合がある。嘘は、世界を動かす原動力になる。彼らは、嘘の情報の活用を知っていた。


 義鷹:「ウクロ戦争は、もう四年になる。短期で終わると予測されたこの戦争は、世界の政治、軍事、経済の社会の流れに大きな変化をもたらした。皆さんは、この不正確で頼りない情報と闘争エネルギーの流れの変化をどう見ていますか?」


 義鷹は、戦争という虚構の構造を彼らがどのように捉えていることを知りたかったのだ。義鷹は、嘘を内界者、境界者、外界者の三つに分けて。主体と客体の二階層構造みている。立場によって嘘の付きの仕方が変わるからだ。事象や物事の予報、予測、推測は、前提があるので嘘とは断定できないが、外れるとそれは嘘になる。法律も掟も建前も都合の良いように運用されることがある。


 ウクロ戦争の戦果情報は、監視衛星の無かった時代よりは、正確に誇張されていた。国家間の利害・感情・欲望の三つが絡む→ 嘘は、エネルギーが増幅して、嘘という主体は、国家を支配機能するようになる。政治家、官僚、投資家、境界者、国民が、嘘に操られるようになる。


 義鷹は、これまでの世界覇権の流れは、覇権国コメッ国に対してチュン国とロ国が挑戦する動きだったとした。それが、ロ国大統領の核兵器使用の脅し発言で、国際政治は、核兵器保有国三大国の談合による世界分割支配の流れが生まれる可能性も出て来たと説明した。


 シーン3:ニッチ国の軍事関連産業の行方


 義鷹:「軍事装備品は、この戦争で安価な無人機が主役になったことで、費用対効果を求める時代が到来した。戦術革命が起きた。ニッチ国は、この変化により裾野が広い防衛関連産業を経済成長の大きな柱にすることができる」


 龍郎:「私は、この戦争でオウ国の電力と防衛産業にも投資をすることを決めた。キンブルさんは、この安全な砂漠地に企業誘致する政策を推進して下さい」

 

 トム:「了解した」トムは、龍郎のオウ国投資意向が聞き、満足気の笑顔で応えた。


 敏夫:「ニッチ国民の中には、武器輸出には消極的な人もいる。キンブルさんは、ニッチ・オウの合弁会社を作り、オウ国から武器輸出できるようにして下さい」

 

 トム:「工場労働者の確保には、黒田一族の人材派遣会社に担当させるのか?」

 

 義鷹:「あぁ、準備は出来ている。後は、次官の仲間たちに仮想敵国に対する“集団防衛体制”を構築してもらわないといけない」

 

 敏夫:「僕たちは、議決権を征する右翼政権ができたら、まず、防衛装備品を輸出できるようにすることになっている。次に時間を掛けて『集団防衛体制』を構築する計画になっている」


 龍郎:「トムさんは、南半球の地勢を生かした政策を進めて欲しい。AI時代は、大量電力が必要なので、オウ国でも安全な原子力発電所建設も進めて欲しい」

 

 トム:「分った。ところで、次官の集団防衛構想は、どの国と取り組むのか」


 敏夫:「親ニッチ国のフィル国、ベト国、ネシア国などです。僕は、我が国は、人口減時代に備えて、『民間軍事会社制度』の導入が必要になるとみています」

 

 彼の民間軍事会社構想は、ニッチ国自衛隊経験者を経営者として、親ニッチ国の軍務経験者を社員として採用する計画だった。天下り先の確保ともいえる。また、ニッチ国自衛隊員の定員不足をカバーする。さらに、傭兵出身国に対して、防衛装備品を輸出できるようにする目論見だった。これは、ニッチ国の経済圏を仮想敵国の軍事侵略から守る集団防衛作戦でもあった。


 龍郎:「次官は、コメット国大統領をどのように評価して、コメット国は、今後、どのような政治戦略を取ると予測しているの?」


 敏夫:「僕は、彼を自他の富を得るために、あるいは権力を維持するために素直に露骨に覇権権力を正直に使う初めての大統領になると思います」彼は、コメット国は、核兵器大国のロ国とチュン国との対立があっても、相手国の核兵器使用を恐れて、庇護を求める国の軍事支援を二十世紀のように徹底した軍事行動を取れないことをウク国で証明したと述べた。


 敏夫:「コメット国の政治は、核兵器保有国との対立を避ける戦略が基本になったのです」


 龍郎:「コメット国は、次期大統領になっても本当に民主主義国陣営の守り神を務めない積りなのですか」彼は、コメット国が世界の警察官と言われた最強時代を知っている。


 敏夫:「えぇ、もう、コメット国の二十一世紀の政治体制は、民主主義陣営を全面的に支援した『対共産主義時代』の世代とは違うのです。コメット国大統領が、ウク国の軍事支援を二代に渡って限定的にしたことからも自国安全は、自己責任の時代になったのです」


 彼は、表側の事物は、「幻影」で、裏側の事物は“実体”なのだとした。二十一世紀の世界政治の “国家権力の利権構造”と“金融経済の裏側の実体”の仕組みと動きを知らないと、巨富を築けないと予測した。


 シーン4:現代版・トルデシリャス条約の動き

 

 敏夫:「三大核大国が、二十世紀型の戦争を行うと、魏呉蜀的な国力消耗戦争になると思います。これを避ける二十一世紀戦術は、スペインとポルトガルの『トルデシリャス条約』を結ぶことです。活動域を分割して相互に直接的な戦争の当事者にならないことです」


 この条約は、大航海時代の国家間の力関係に大きな影響を与えた。ただし、簡単に破棄できる条約なので長続きしなかった。ウク国などには、ソ連邦から独立するとき核兵器を配備されていた。1994年、核保有国のコメット国、エイ国、ロ国は、ウク国の安全保障の覚書を締結して核兵器を撤去することに成功した。核兵器の分散リスクは、回避された。敏夫は、核兵器を廃棄したことがロ国のウク国侵略の一因だとは言わなかった。


 義鷹:「核兵器を持つ国と核兵器を持たない国の違いは、ウクロ戦争で明白になったかどうかは、実証できないが、軍事的視点では、核兵器を持たない国は、侵略されるという事実が判明したと言える」


 龍郎:「もし、ウクライナが、核兵器を放棄しなかったら、ウクロ戦争が起きなかったといえるか?」


 義鷹:「それは、結論を出しても意味がない議論になる。要は、我々は、この砂漠地で生き延びる選択をしたということだ。核戦争の脅威があるから、ビジネス化できる」


 大倉:「核三大国は、核兵器の更新に莫大な予算が必要なことは、明白な事実だ。兵器の充実は、ウクロ戦争により二十一世紀仕様になることが明白になった」


 トム:「我が国は、兵器産業をこの砂漠地に誘致する準備が整っているとは言えないが、地政学的な優位な地と言える」


 シーン5:南極条約と南極の領有権の解釈


 トム:「我が国は、凍結された南極の領有権を主張する七カ国の一つだ。我が国の研究活動は、南極に近いので南極の資源が必要になったときは、最大の優位国になれる」


 彼は、南極条約があることを知っている。条約の意味を政治的に都合がよく解釈するタイプだ。彼は、次の書面を読み、自分たちに利権があると政治家の嘘を付いた。


 トム:「南極条約という条約の規定があっても、研究活動中に鉱山を開発した者には、先取権を与えられるべきだ」


 南極条約は、1959年に締結された1961年に発効された条約だ。平和目的の利用:軍事基地の建設、軍事演習、兵器の実験は禁止されている。科学調査の自由: 各国が自由に観測でき、データや計画を相互に交換・協力する建前になっている。

 領有権主張の凍結: 条約の有効期間中、どの国も新たな領土権を主張できないことになっている。条約の仕組み:対象地域: 南緯60度以南の地域(すべての大陸と棚氷を含む)。

 具体的には、協議国会議:積極的に南極観測を行っている国が集まり、定期的にルールを審議している。相互査察制度: 他国の基地に自由に入ってチェックできる監視員制度があり、軍事利用がないかを相互に監視だと説明した。


 条約の文言は真実でも、その解釈は政治家の嘘によって自在に変形する。


 敏夫:「我が国は、その考えに表立って賛成はできない。だけど、核大国の三国を巻き込めれば、いかようにでも、ビジネスは構築できる。現状では、鉱山開発に莫大なコストが掛かるので誰も挑戦しない」


 龍郎:「そうだね。今は、実現不可能でも、未来はわからない。明らかにオウ国の砂漠地に取って、南極の水源は、地球温暖化に伴い、良質な水源は、莫大な資産になることは確かだ」


 トム:「三大核大国の政治指導者の誤った判断一つで核戦争が起きる危ういシステムが存在する。北半球全面戦争になると、北半球の係争地の河川の水や土壌は、汚染される」


 シーン6:四人の役割(人物構造)


・トム=外界の欲望

・敏夫=外界の権力

・龍郎=外界の資金

・義鷹=境界の調整 → 四者の嘘が未来文明を動かす


 龍郎:「それは、核兵器三大国による世界分割が行われるという意味か?」

 敏夫:「まだ、その兆候は、明確では、ないです。時間の問題です。チュン国の核兵器千発に対抗するには、エイ国もフツ国も核兵器増産保有するのは、必然です」


 義鷹:「私は、ロ国大頭領の核兵器使用の発言は、単なる脅しの兵器でなく、明らかに敗戦を避けるために使用兵器になると推測しています」


 義鷹:「核兵器使用を脅しに使っているうちは、問題がない。だけど、戦争で非核保有国に使用されると、核兵器拡散現象と核拡散阻止戦争が起きる。核戦争による決着は、当然の成り行きになります。我々は、核兵器の無力化兵器を開発する事業で巨富を築くのです」


 人間の愚かさを知っている自信ある表情で断言した。


 義鷹:「次官は、ニッチ国の保守政権が衆議院の過半数を征したら、今度こそ、政府組織を二十一世紀仕様の核戦争時代の政治体制にしてくれないか」


 敏夫:「基本は、コメット国の要望を受け入れる体制で良いのですね」


 義鷹:「そうだ。彼らの国が軍事大国を維持するには、ニッチ国の投資と技術に頼らないといけないからだ。この弱みを活用する」

 敏夫:「やっと、対等な関係になったのですね」

 義鷹:「いいや。まだ、対等ではない。主従関係は、そのままだ」

 敏夫:「まだ、彼らに自分たちが主人だと思わせるのですか?」

 義鷹:「核兵器を無力化する兵器を開発するまでは、臣従する」

 敏夫:「そうですか。無駄なエネルギーを使わないのですね」


 義鷹は、徳川家康の豊臣政権臣従政策の方が、矢面に立たず三大核大国には賢明な外交政策だとした。覇権国家の暴力の衰退を待つ作戦だ。

 

 敏夫:「僕は、政府内でどんな動きをすればよいのですか?」

 

 義鷹:「従来通り、彼らの軍事力にすがる作戦だ。そうすると、彼らは突き放すはずだ。突き放されたら、革新的な軍事力で増強する。それでも、コメット国の力を頼る律義な同盟作戦を続行する」

 

 敏夫:「冷たくされても、夫婦関係を維持する献身作戦をするのですね」 にやと、反応する。彼は、義鷹の愚痴を聞き、ベスの尻に敷かれていることを知っていたからだ。義鷹は、本音で語る嘘を付き弱みを見せることがある。


 義鷹:「民主主義の覇権国のコメットプライドに訴えるのだ」

 敏夫:「第四勢力が、対等力を付けるまで辛抱する作戦ですね」


 第四勢力とは、ニッチ国とエイ国とオウ国などの同盟や連邦国をいう。


 トム:「龍郎さん。オウ国を資源国体質から製造技術大国に変える戦略はどうするの?」

 龍郎:「あなた方は、オウ国民に『世界覇権国になる夢』を見させる政治を行って下さい。国民には、移民を活用して自分たちの国富を増やすと宣伝するのです」


 龍郎は、保守的な既得権者を懐柔する作戦を提案した。


 トム:「君は、まだ、西部の僕の土地をまだ見たことがないだろう。どうして企業が、あんな砂漠地に進出して来ると判断できるのだ」

 

 龍郎:「あぁ、君の娘のベスの『ぬかりのなさ』だ。成功できないもの投資しない。彼女には大投資家として先見の明がある」

 

 トム:「ところが、オウ国人は、過酷な環境の砂漠を緑地化できると誰も信じていない。本当にニッチ国の技術者は、あと数年で、一万平方キロの砂漠を緑地化できるのか?」

 

 義鷹:「いまさら後悔しても遅いよ。仲間になった以上、君も投資責任を負う必要がある。君は、娘の才能を信じないのか?」

 

 トム:「まぁね。半分、信じて、半分、疑う。第一に娘は、俺のいうことを聞かない。すぐ、反抗する」彼は、自分の傲慢さを隠さない。

 

 義鷹:「トム、君は、ベスと仲直りしたのではないのか?」

 トム:「あぁ。した。だけど、俺は、娘の能力をまだ信じられない」 彼は、「はてなマーク」が書かれた顔になっている。

 

 龍郎:「君が疑い深いのは、策謀を巡らす政界に長くいた性だ。成功確率が低いが、投資がモノの価値を創造する世界を見たことがないからだ」

 

 トム:「オウ国には、人間の住める土地が必要なことはだれでも分る。だけど、ニッチ国人が、本当に砂漠を緑地化できることを信じさせることは容易でない」


 龍郎:「僕ならこの砂漠を十年以内に最先端技術を持つ企業の黄金都市に変えてみせる」

自信家の大見えを切る。

 

 トム:「そうか。大した自信だな。そこまで言うなら、緑の党の協力は、砂漠の緑地化を目指すので問題ない。問題は、保守党や労働党の連中だ」


 トムは、老練な政治家だ。富に対するする他人の鋭い嗅覚を持つ。しかし、何度も、実現性について確認をする癖を持つ。相手の力を信じないのだ。

 

 義鷹:「トム。緑地化の目途が立ったらキンブル一族が取得した借地権を私有地に変えて国民に払い下げる運動をしていただきたい。目的は、家を持たない保守党や労働党の支持者を懐柔するのだ」


 トム:「どうしても富を他党の国民にも分けないといけないのか?」

 

 義鷹:「あぁ。君は、政治家だ。指導者は、自分でリスクを取り、自分が得た富を国民に分け与えることで名声を得られる。お互い、もう富に拘る年でもないだろう。人生最後の仕事なるはずだ」


 トム:「あぁ、分っている。利益を独占するとヒトが集まらない。現在のオウ国人口では、いつまでも国力が上がらない。だけど、自分の土地を分けるのは、少し惜しい気持ちがある」

 

 トムの顔は、建前と本音が交錯中だ。

 

 義鷹:「誰でも独占欲を持っている。だけど、土地の価値は、多くの人に分け合うことで土地価格が上がる。値上がり期待で資産が形成される。君は、独占欲が強すぎる」彼は、欲張りは、無駄な労力を生むことを知っている。仲間で得た富を分配するときの快感を求める性格だ。


 シーン7:ハーモナイ文明の胎動(未来構造)


 課題1:砂漠緑地化・経済特区・南極開発・核無力化兵器 → 嘘が新文明の構造を生む


 トム:「経済特区の税制を優遇することが土地の値上がりになるのか」

 義鷹:「えぇ。土地値上がりには、ヒトを集める呼び水政策が必要だ」


 シンガ国の低率税制を基本に法人税や所得税の最高税率二十%を基本にすることを主張した。未来都市開発の総合インフラが整えば、龍郎の百兆円の投資資金で、北半球核戦争リスクを嫌う最先端技術開発企業を受け入れ、キンブル家一族を大金持ちにするとした。もちろん、保証はない。すると、敏夫が義鷹の説明を補足した。


 敏夫:「トムさん。世界の人々を行動させるには、『希望という大きな嘘』が必要なのです。この十万平方キロの小さな『砂漠価値の渦』が、三百倍の広さを持つ世界砂漠価値を上げる渦のモデルケースになるのです」彼も大ボラを吹いた。


 敏夫の今の説明は、机上の空論に近い。実現できるかどうか不確実だ。彼は、この砂漠の研究所で二十一世紀に発明される技術が、オウ国とニッチ国の第四軸世界覇権に結び付くとした。


 敏夫:「我が国の技術で、貴国の不毛の砂漠を緑地化して未来都市を建設して機能できれば、 世界の株式市場、資源市場、軍事バランスが変動し始めるのです」彼は、他人の利益に対する思惑の流れを作る方法を述べた。


 トム:「あぁ、君の希望という嘘は、他人の思惑の渦を生むかも!ところで、世界一の砂漠は、どこにあるの?」彼は、知らないふりをする。相手の返答で能力を測る。

 

 敏夫:「それは、南極の氷雪砂漠にあります。オウ国は、南極の千四百平方キロの氷雪砂漠に近い。この意味、分かりますか」


 トム:「あぁ、水の問題がない。南極大陸にはあらゆる資源が眠っている。南極は、低温と未来都市の問題を解決できれば、富を生むようになる」


 敏夫は、南極開発のオウ国西部地域の地勢の有利さを強調した。


 敏夫:「領有権のない大陸問題は、ありますが、南極でも快適に住める未来都市の建設が、可能であれば、南極開拓競争が起きるはずです。オウ国は、地勢学的には、多国籍の者が南極を活用できる優位な場所にあります」


 トム:「あぁ、そうだが、ハードルは高い」現実問題を理解している。


 敏夫:「君たちが運営する研究所が、これから砂漠に廃棄保存される数万トンのプルトニウムを使うエネルギー再使用技術を開発しさえすれば、水エネルギーのある南極大陸で未来都市を建設して研究事業を堂々と展開できるとした」彼は、この未来都市建設で国際問題が起きることを無視した。

 

 トム:「この核廃棄物の再利用技術の開発が、世界のエネルギー地図を塗り替えるのだな」


 彼は、物事を神経質に考えない冒険者を装う。決断したらリスクテイクする。だが、その後に悩む。気が変わりやすい。


 敏夫:「えぇ、そうです」この技術の開発が可能かどうかは、不確かだ。彼は、不都合な真実は、自らは説明しない。可能だとする。可能性を信じる派だ。


 龍郎:「いずれ、生存環境が厳しい水不足問題のない氷雪砂漠が“世界の安全保障の心臓部”になるのです」龍郎も南極の富を狙っていた。これも様々な前提条件を満たさないと確かとは言えない。だが、投資の世界は、失敗することを覚悟したうえに成功した場合の富を計算して実行する冒険者の世界だ。


 敏夫:「安全保障、土地の価値、特区構想、砂漠研究所の統合が結びつくと、世界の砂漠が新たな世界経済の資金と技術の新たな集積地になるのです」


 砂漠の緑地化技術は、成功すれば、京円台の事業になる。世界陸地の二十%の砂漠地が。新たな富の開発の始まりになる。


 義鷹:「トムの欲望、僕の境界感覚、龍郎の外界操作、敏夫の外界権力これらが絡み合うことで、新しい富が生まれる」


 龍郎:「あぁ、そうだ。我々四人が組めば、オウ国西部に理想郷を建設できる」


 義鷹:「僕ら四人の持つ力の統合は、オウ国の政府組織、企業、個人の三界の未来を決める原動力になる。一人が持つ力では、無力に近く指数関数的な大きな力は、何も生まれない」


 トム:「そうだな。同意する」彼は、この会談で自分が表社会で活躍する時代が過ぎたことを感じたようだ。政治家を引退することを明かした。後任は、ベスを緑の党の政治家にすることを約束した。


 彼らは、世の中の嘘を見抜き、騙された振りをして、様々な人物を活用できる。それが、未来の富を得る手段になっている。局地戦の失敗を恐れない。確率を計算して投資する。世界の資金流動がどのように動いているかの裏世界については、多くを語らない。それは、自分たちが与えられた環境だからだ。


 彼らは、利害で人間行動を読み“何も言わないことで、すべてを動かしている”ともいえる。不確かな嘘を利用することに長じている。外界の欲望ある資金を使って最先端産業を立ち上げるという巨富を得る構想を進めている。


 四人は、この研究所の所員の思惑が成功して、成果が国家組織まで結びつくと、この砂漠が世界の資金と技術の集積地になると考えていた。自分たちの思惑の失敗を初めから深刻に考えない。行動しないと結論が出ないからだ。


 敏夫は、核廃棄物の移動が国際政治の火種になることを語らない。「ニッチ国の核廃棄物問題」を隠している。全ての問題を行う前から解決できないからだ。行動することで問題が具現化する。どのように解決するかは、利害調整取引で行う。

 

 トムは、商人の強い欲望、投資家心理の変動を正直に語る。欲望を隠しているふりをして、実は隠していない。無知を装い、豪快さを演じ、興味がないふりをして最後に「乗る」と決めた。彼の嘘は、「俺は単純な金の亡者だ」という「演技」だが、の演技が 世界の投資家心理を動かすエネルギーになる。

義鷹の境界の嘘は、世界変動予測の分析軸が多軸であることだ。どのような展開になるか極めて不透明だ。彼は「嘘を管理している」 「嘘の流れ」を読む能力が、世界変動予測の核心になる。


 龍郎は、指導者の思惑への組織反応がすぐに起こらない時間的なズレを活用できる。各国の支配層指導者たちの二十世紀型頭脳が、世代交代によって二十一世紀型頭脳に到達するには、あと三十年以上の時間が掛かると見ていた。


 政治指導者の旧世紀型頭脳は、二十一世紀前半の政治、軍事、経済、社会、教育などの分野の歪みを生み出す。四人は、この認識を再確認した。

 嘘は八種類に分類でき それらは内界・境界・外界の三界を動かす「嘘のOS」として機能する。

嘘は、欺くための道具ではない、利害を調整し、未来を設計し、世界の構造を動かすための“境界の技術”である。嘘を読める者は、未来を読める。この章は、その技術の実例である。


(第三十五話 言葉の魔術──言語・幻影・三界生成の文明論──へ続く)


トムの嘘は欲望の嘘、敏夫の嘘は官僚の嘘、龍郎の嘘は投資家の嘘、義鷹の嘘は境界の嘘。 彼らの嘘は、欺くためではなく、世界の構造を動かすための“戦術”である。嘘を管理できる者だけが、未来を創造できる。


核兵器、砂漠、南極、未来都市── これらはすべて、嘘と本音が交差する「外界の戦場」である。四人の思惑が一致したとき、世界の砂漠は新たな資金と技術の集積地となり、ハーモナイ文明の基盤が形成される。この章は、嘘が文明を動かす瞬間を描いた。




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