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救済の聖女のやり残し ~闇と光の調和~  作者: 物書 鶚
第二章 第二部 目指すべきところ
222/225

二章 第二部 ~おまけ~ 「一夜の二人」

5/2を持ちまして、本編開始より投稿開始一周年となりました。


相変わらず勝手気ままに自由に無法に書き殴っている本作ですが

皆様の退屈しのぎになっていれば幸いです


5月2日、2章第二部の「おまけ」を222番目の投稿として

2年目も元気に書き殴りたいと思います。


さーて、2年目も楽しく世界を綴ろうか!


※※この幕にはR18相当の直接的表現を含みます、ご不快に思われる方は飛ばしてください※※


何も手につかない。


何も考えられない。

考えたくない。


窓から見える月をじっと眺めてるだけ。

その月も光ってて目立つから見てただけ。


ぼーっと、見てるだけ。



さっきからぐるぐるぐるぐる、頭の中を同じことばかり思い浮かべている。


『なんであんなこと言ったんだ』


そればっかだ。



一人で舞い上がって、一人で勝手に先走って、妹にも相談せずに『こうすればもしかしたら』なんて考えて。


結果、あのざまだ。

滑稽にもほどがある。



なんで、こんなことになったんだっけ……。


順番に、思い出してみるか……?



えっと。


エミリアに腹を蹴りぬかれて、アバラが折れて。

聖女の治療で悲鳴が出そうになるくらいの痛みに耐えて。


エミリアが泣きながら謝るから、微妙に違和感の残るみぞおちを擦りながら支部に行って……。


特定魔導通信の許可が降りて、支部の施設で報告しようとしたら。

フォティナ大隊長じゃなくて総司令官殿が居て。


背後に陛下とガレン将軍と賢者ステラーノが居て死ぬほど驚いて。


虚像と音声を同時にやり取りできる特定魔導通信で、たっぷり一時間もの時間をかけて報告させられた……


報告したのは――


聖女の行動記録、『従者リリィ』の偽装報告。

シルバーハートの一件とボロスに関する個人所感。聖女側の所感。

シャルさんの『先見の瞳』によって見せられた世界崩壊の可能性。

鳥人族ルドによる『風の便り』とその所感。

そして、そこで知ることとなった最重要情報の『魔王の胎動』について。


……だったよな。


その後「指示を出すまで待て」と言われて。

しばらく国のトップ達が考え込んでたのを、ただ直立不動で眺めてた。


毎分10万近い純魔力を消費する特定魔導通信で、長々と待たされることにも驚いたけども、総指揮官殿が出した命令には本当に驚かされた。


「聖女セレナの監視と援護の任務を一時中断し、王都への即時帰投を命ずる。これから王命で快速飛空艇を手配するから、全装備を持って戻ってこい。」


支部で精神鑑定や装備品安全確認までは予想していた。


俺とエミリアの諜報任務中にはありとあらゆる可能性が考慮されて、報告時に異変を感じたときには心身に対する細密検査が行われる。


だから『従者リリィ』の偽装報告は、本部の受け取りかた次第では精神鑑定まであり得ると予測してた。


だが結果は、本部に戻っての二人とも完全検査と報告検討会議だそうだ。



よっぽどのことだと思ったっけ。



それでウソがバレたのかと動揺して「何か報告に違和感がありましたでしょうか?」なんて聞いたら、総指揮官殿が――


「星読みの賢者が魔王の胎動について予見した。この情報の符合は慎重な検討が必要だ。お前の生の情報が欲しい。その『星流軸』を読み解くという鳥人族の少女も可能であれば連れてきなさい。情報の確度次第では部隊へ『肌』としての特別勧誘まで想定している。それが無理なら高額の協力報酬をちらつかせ、無理やりにでも連れてきなさい。陛下、特例予算を当ててよろしいですね?」


「構わん。許可する。」

「ほっ。豪気なことじゃのぉ。」

「情報の重要性において妥当な判断ではあるな。」


零番隊総司令官による進言、王と賢者と将軍の同意。



賢人会議の全会一致により特例予算が即決された、目の前で。


つまり、予算5000億がぽんと湧いて出た。


え、俺が報酬交渉するの?

上限5000億ディルで?


あまりのことに、一瞬そんな感じで呆けた。


諜報任務教練にもなかった事態想定だ。



というか、国家の諜報中枢に外部の、しかも鳥人族を?

獣人の中でもいっとう扱いづらいと有名な??


何が起きてるんだ……。



そう考えていた。



そう、思い起こせば……ここら辺からだ。

多分、既に俺は混乱してたんだ。




ルドの第六感により『星流軸』の変化が正確に観測できて、『魔王の胎動』についての予測情報が得られれば。もしかしたらシャルさんの『先見の瞳』の情報にも重要な価値があるんじゃないか。

そしたら猫人族の武闘派であるティガさんも、一緒にいるミアさんだって立派に戦える。諜報員としての適性もある。


もしかして……まだ一緒に過ごせる可能性があるのかもしれない。



そんなことを考えてたんだ。


国家諜報員として浅慮にもほどがある。

冷静に考えれば、ルドみたいな特例がポンポン出るわけないだろう。


聖女に言われてハッとするまで、一切そんな事考えてなかった。

そして、何より……シャルさんやミアさん、ティガさんの立場を一切考えてなかったことに気付かされた。

何も考えていなかったことに気付いた。


結局、自分の都合で皆さんを良いようにしようとしていたことに気付いた。


そして、案の定。

シャルさんにやんわり拒否されて……。


そして、ティガさんにも。


……拒絶された。



そしたらもう、何も考えられなくなってしまった。


なんでこんなことになったんだろう……。



エミリアに相談すればよかった。

風呂なんて行かすんじゃなかった。


諜報活動で風呂に入れないことを嘆くとか、舐めてんのか。

アバラを3本も折りやがって……



いや、そうじゃない。

ちがうだろ。


舐めてたのは俺だろ。


国家諜報員として話すべきことではないことを話したのは俺だろ。

浅はかな考えで勝手に判断して部外者を入れようとしたのは俺だろ。

身勝手な好意で、考えなしに誘えると思った無責任な奴は俺だろ。

それで拒否されて勝手に落ち込んでるアホは俺だろ。


バカか。

間抜けめ。


拒絶されて当然だろう。


何を浮かれてたんだ。


後で謝らなきゃ、エミリアにも。

シャルさんにも、ミアさんにも。


ティガさんにも。




……なんか、ベルと再会できた時もそうだけど。

色んなことがうまく行き過ぎてて、いろんな奇跡が起きすぎてて。


完全に舞い上がってたのかな。

完全に我を失ってたのか。


情けない。


こんなんじゃベルに顔向けできないな。



とにかく、明日朝一番に謝りに行こう。

シャルさん達に。


エミリアにも謝らなきゃ。



……あれ?

ていうか、エミリアはどこで何をしてるんだ??


……風呂か?



ダメだな、全然覚えてない。

腑抜けになるにも限度があるだろ。


「はぁ……」


情けなさ過ぎてため息が出る。



いっそのこと、もう寝ちまうか。

寝て起きれば多少気分が晴れてるかも。


大体、こんな気分じゃ風呂もめんどくさい。

……っつうか、俺。ちゃんと風呂に入ったのいつだっけ。




まぁいいや。

寝ちま――



『コンコン』



突然のノック音。

入口の扉からだ。


え?

扉の前に接近されてるのに、人の気配に気づかなかった?


完全におかしくなってるな、俺。



つうか誰だよ。

周辺警護要員が直接部屋に来るわけないし、報告や打ち合わせの予定もないのに誰がこの部屋に来るんだよ。


あ、そっか。

エミリアが気を使ってるだけか。


『コンコン』


やべ、考えてて放置してた。



「エミリアか? ごめんな、入っていいよ。」



……あれ?

入ってこない。


「エミリア?」

「あの、エミリアじゃなくて、あたしだよ……ティガだ……です。」


くぐもった弱気な声が扉の向こうから聞こえた。


「え?」


心臓が爆発したかと思った。


ていうか。

え?


ティガさん?

なんで??


「あの……入って良い?です、か。」


え、何。

なんで敬語。


「あの……ティガ、さん?」


「少し、話を聞いてくれるだけでも良いん……です。入っていい?ですか。」


いつもと違う口調で、消え入りそうな声で。


何が起きてるんだ?


「ダメ……かな?」


泣きそうな声が向こうから聞こえて、ハッとする。


「あっ、いえ! すみません、ちょっとぼうっとしてて! 入ってもらって大丈夫です!」


声が裏返る。


「良かった……入る、ね。」


ホッとしたような声がする。


キィッと一瞬だけ扉が軋んで、その後は音もなく開いた。

すぐに、人影が室内に入ってくる。


暗がりでティガさんの姿が良く見えない。

というか、視界がボヤけている。



やべ。

暗闇で月だけをずっと見てたから、光が目に焼き付いてる。


夜目が眩むとか。

本当に俺は国家諜報員の零番隊所属特務官の『目』か。



「パタン」と扉が閉まる音。

その音に、またハッとする。



じゃなくって。

それどころじゃなくて。


「てぃ、ティガさん? どうしたんですか?」


「少し、話して……おきたくて。大丈夫、ですか?」


「あの、なんで……敬語なんですか。」


「……な、なんとなく。」


真っ暗な部屋で、窓から差し込む月明かりだけの室内。入口の扉の周りは暗がりになってる。そこにいるはずのティガさんを見つけようと、必死になってたら、ようやく目が……慣れて。


「……えっと、それで。話とは――」


なれて……


……。


思考と息が止まって、目が動かせなくなる。



扉の前には確かに彼女が居た。


へたり込んだ耳と弱々しく垂れ下がるだけの尻尾。

恥ずかしそうに伏せた目は潤んでいて、時折不安そうに俺の方へと向けられている。


普段は威風堂々としていて、長身で鍛え上げられた身体を持つはずの彼女なのに……なぜか弱々しく縮こまっていて、恥ずかしそうに身体を捩っている。



そりゃそうだ。


今の彼女は、ネグリジェを一枚しか羽織っていない。


いや、ネグリジェっていうか。

暗がりでもわかるくらいに、完全に透けていて何も隠せていない。


ただひたすらに、彼女の磨き上げられた肉体を細やかなレースとヴェールが綺麗に飾り立てているだけだ。


「……隣、行って良い?です……か?」


突き刺さる視線に耐えるかのように、身体をもじもじとさせながら、それでも引くまいと言葉を紡いでいる。


「あ、は……い。」


となり?

あれ、俺はどこに座ってたっけ。


あ、ベッドか。


この寝室は従者用なのかツインベッドが並んでいる部屋で、割りと手狭な部屋だったわ。

兄妹の俺達にはむしろ都合がいいからこっちを割り当ててもらってて、大人一人寝るくらいならなんの問題もない部屋だったので、ソファ代わりに座っていたのを思い出してる場合じゃなくって、えっと、あの。



また目が動かせなくなる。


ゆっくりと歩いてくる彼女を見つめる。


足音を一切たてずに、風のようにしなやかな足運び。

扉の前に来ても気づかないわけだ。


彼女が一歩進むたびに、薄く纏っている柔らかな布が揺れる。

その流れるような動きの全てが美しくて目が離せない。


臆することなく俺の目の前にたどり着いた彼女の身体を、窓からの月明かりが照らし出す。


彼女の薄い褐色の肌、薄茶と黒の髪の毛が生み出す雄々しい虎の模様。

その髪色と模様を同じように四肢を肘から手首と膝から足首まで覆う美しい毛並み。ゆらゆらと彼女の動きに合わせて揺れるふさふさの尻尾。


毛並みのない所を飾り立てるネグリジェは、銀糸で編まれていて流れるような輝きを生み出すレースの刺繍が、月明かりでキラキラと輝いている。


その薄手のヴェールの向こうには、鍛え上げられつつも柔らかく美しい曲線を描く肢体。


どこを見ても美しいし、どこかを見つめようとすると目移りする。



「……あの、こんな格好して……言うのもアレなん、です…けど。」


震える声がして再び我に返る。


「あ、はい……なんでしょう。」


かろうじて声が出た、長らく忘れていた呼吸もとりあえずできた。


「そんなに見られると、あの……恥ずかしい。」


「あがっ! す、すみません!」


慌てて窓の月へと顔の向きと視線をぶん投げた。


「……隣、座る。……よ?」


「どうぞっ!」


声が裏返る。



不意に隣が音もなく沈み込んでバランスが崩れてしまう、僅かに触れる肩の感触。


俺の体幹はどこへ行った!

隣りに座っているのは誰だ!


ていうか、彼女はもう既に俺に寄りかかってる!?


何がはじまるんですか!



「それで、話たいってこと……なん、ですが。」


そうだった、話をしにきたんだった。


そうだった。


「あのな……さっきの、食事の時の。ルーが言ってたこと、な?」


ヒュッと喉が鳴る。

破裂しそうだった心臓が、急に動きを止めた気がした。


「……あのときは、ああ言ったんだけどさ。」


ずぐりと心臓が締め付けられる感触。

背筋が凍りそうになる。



謝らないと。



「すみませんでした。俺、自分のことだけ考えていて。皆さんの都合とか、大事なこととか何も頭になかったです。」


気がついたときには言い訳がましい謝罪が口から飛び出してた。


「皆さんと一緒にいる時間が楽しすぎて、自分の立場を忘れてました。ティガさんたちのおかげでベルとお別れできて、クルミの……神獣と語ったことで自分の目指すべき道を定めたはずなのに。浮かれてました。」


隣りにいるはずの彼女の方を見れない。

見たときに彼女が失望していたらと思ってしまった。


だから真っ直ぐ前をみて、月でも星でもない夜空の虚空を見つめた。


「あなたの『ナガレ』としての使命すらも、頭の中に無かったんです。ひたすらに自分の欲だけだった。それを聖女に指摘されるまで、本当に頭のなかに欠片もそのことがなかったんです。」


緊張と恐怖で身体がこわばって喉が枯れる。


でも、ちゃんと言わないとダメだ。


「だから、明日朝一番でちゃんと謝らなぁっー!?」


話の途中で横から突き飛ばされ、俺はベッドに身体の側面を叩きつけながら倒れこんでいた。


一瞬何が起きたのか理解できなかった。

首を起こしてかろうじて元いた場所を見ると、涙目で頬を膨らませているティガさんが目に写った。


可愛い。



「ルー、話はちゃんと最後まで聞け。」


いつもの口調で、拗ねた顔の彼女がそういってくれた。


「はい……。」


唖然としたまま、生返事を返した。


「……でね。さっきは一緒にいけないって、ルーの誘いを断っちゃったんだけど、ね?」


またたどたどしくて可愛らしい声に頑張って戻ってるティガさん。


なんだろ?

健気さよりも、その違和感が気になってきた。


「でも……ね。正直、嬉しかったん、です。」


……あれ?


「だからね……その。ルーさえ良ければ……その、ね?」


いま、ティガさんは俺の想いを肯定してくれたんだよな?

なのに……なんで俺はこんなに落ち着いて……。


あ、そっか。



「ティガさん。」


上半身を起こし、ベッドの上の彼女ににじり寄る。


「うぁ!? な、なん!……です、か!」

「その妙な猫かぶりは止めてください。」


「……!」


さっきまで高鳴ってた鼓動が落ち着いている。


「あの、ちがくって…。」


なぜか怯えたようにたじろぐ彼女を見てちょっとだけ心が痛む。

でも、ちゃんと向き合おう。


「俺が好きなティガさんは、もっと豪快で勢い任せなティガさんです。」


「……え。」


更に顔を近づけて詰め寄る。


「強くて快活で、そのくせ人思いだったり脳筋だったりするティガさんが俺は好きです。」


「……ぐ」


目の前にいるティガさんが、先程までとは別の恥ずかしさに頬を赤くする。


凄く可愛い。


「そのやたらと扇情的なネグリジェはシャルさんの私物ですか?俺の知ってるティガさんは、もっとこうシンプルな服が好みだと思ってました。」


「……ぬぅ!」


図星のようだ。

ぐうの音も出なさそうな表情が凄く愛おしい。


そして理解した。


やっぱり俺は普通にいつも通り振る舞う彼女が好きなんだ。

そんな彼女の表情や心を曇らせた自分が許せなかったんだ。


だったら、もっとシンプルにいこう。


「俺もちゃんと言い直します。聞いてくれますか?」


「……。」

羞恥に染まった顔と恨めしそうな目つきのまま、上目遣いでティガさんがコクリと頷く。


どうしよう、凄く可愛い。


「ティガさんのことが好きです。愛してます。だから、色々片付いたら一緒になってくれませんか?」


まっすぐ見つめて、まっすぐ思いを伝えた。


これでいい。



たとえこれで断られても。

彼女の顔が曇らなければそれで――



「嫌。」


すんごい不満げな顔で睨み返しながら拒否された


……あれぇ?

思ってたのとちがう。



「……そーゆーんじゃないんだもん。あたしの覚悟。」


そう言って彼女は唐突に羽織っていた薄布を脱ぎ捨てる。


豪快だ。


「……あたしもルーが好き。人のために泣いてくれる優しいあんたが好き。相手を思って自分を律する強さが好き。どこか飄々としてるくせに、大事なところは必ずフォローする、そうやって気遣うあんたが好き。さんざんあたしがからかうように触れても、本当に嬉しそうに安らぐあんたの心音が好き。あんたの料理が好き。声も好き。匂いも、温かな体温も。だからルーの好きな所もっと知りたい。」


まくしたてるように俺に思いを伝えてくれる。

目が上目遣いと言うより、睨みつけてる感じで。顔が真っ赤で怒ってるみたいだけど。


「だから後でなんて嫌だ。」


それが凄く可愛らしい。


「ありがとうございます……。でも、なんで脱いでから言ったんですか?」

「せっかく可愛く見せようとしてシャル姉から借りたのに、あんたが不満だっていうから、もういらん!」


「破かないあたり、豪快さにかけるものの気遣いと冷静さがあってティガさんらしいですね。」


「ねー! あたしも人のこと言えたもんじゃないけどさー! ムードとかそういうのって、もうちょっとあってもいいんじゃない?!」


「そうはいっても、俺も経験がないもので。」


「えっ、そうなの!?」


なぜか彼女は嬉しそうに無邪気な笑顔になる。


「諜報における肉体的精神的懐柔って、男は必修では無いので。正直さっぱりです。」


「あたしもさっぱりだもん。」


今度は誇らしげ。

さっきから彼女の一挙手一投足がずっと可愛い。


「じゃ、ティガさんのご要望にお答えします。」

「ん。」


彼女は俺の提案に秒で反応し、両手を広げて待ち構える。


「あ、でも俺最近風呂入ってないです。先にお風呂入ってきてい――」


「むー!」

彼女は妙な声をあげつつ、腕を広げたまま抱きついてきた。

見た目より遥かに柔らかな躰と、張りのある双丘の感触をシャツ越しに感じる。


「ねー!ルー、わざとやってるでしょ!風呂嫌いのあたしらがその程度の匂い気になるわけないじゃん!」


「いえ、ほんとに入るつもりでしたけども、ティガさんが良いなら俺も平気です。」


言うやいなや、彼女は俺の胸に顔を埋めて深く息を吸う。

嬉しそうにゆらゆら揺れる尻尾が可愛らしい。


「あと……さん付け止めてほしい。」


少しだけ顔を上げて頭を小さく傾けながら、小さな我儘を言う。

ぴこぴこと動く大きな耳が愛おしい。


「……ティガ。次はどうしてほしいですか?」


自然と頭に手が伸びて、いつも家族にしていたように思いと愛情を精一杯にこめて美しい毛並みを撫ぜる。


「ティーって呼んで、家族はそう呼んでくれた。」


グルグルと喉が鳴る音。

俺の身体にのしかかる彼女の重みが嬉しい。


「……ティー。 俺も頼みがあります。」


「なあに?ルー。」


「そろそろ俺も限界です。服を脱ぎたいです。」


「うん。さっきからずっと気になってた。ルーのここ、すごく苦しそうだなって。……あたしが脱がしていい?」


「ありがとうございます。」


カチャカチャとベルトのバックルをいじる彼女の表情が嬉しそうだ。


「ふふ、自分のベルトなら簡単に外せるのに、相手のを外すのってちょっと難しくて嬉しい。」


可愛い。


ティーがズボンを下げようとするところで、腰を浮かしておく。

息のあった動きでするりと脱がされ、開放感にホッとすると同時に、少し肌寒い外気に触れる。


「ふふ。ルーの、すごい立派。」

そう言いながら添えられた彼女の手のひらの熱さに、思わず腰が跳ねる。


「ティーの身体ほどじゃないですよ。」


「ほんと? 確かめてみた?」


彼女はクスッと笑いながら俺のシャツのボタンをぷちぷち外してく。



「見せてください。」


「うん、良く見て。」


ベッドに寝転んだままの俺の腹の上で彼女は膝立ちになると、鍛え抜かれた美しい肉体を惜しげもなく見せつけてくれた。


「綺麗です。強さと、優しさと、美しさと、可愛さ。いつまでも見てられる。」


「みてるだけ?」

「まさか。」


そういって俺は彼女の美しいくびれを抱き寄せた。


「あぅ」


嬉しそうな悲鳴を聞きながら自らの胸板に彼女の双丘を押し付け、心地よい柔らかさと熱を堪能する。


「ルーの肌がすごく温かい。嬉しい。」

「はい、俺もずっとこうしたかったです。」


「あたしも。……知ってた?屋敷でセレナとルーたちが助けに来てくれた時。あの時、助かった私たちを見て泣いてくれていたルーを見たときから、あたしはずっと気になってたんだよ?」


「……涙もろいのは性分でして。」

「そこも好き。」

そう言って頬にすりすりと頬ずりしてくれる。彼女の柔らかな頬はやがて互いの唇に代わり、おっかなびっくりと探るようにやわらかく触れ合う。


やがて、どちらからともなく熱い吐息がもれだした。


その温もりを求め、喘ぐようにお互いが舌を伸ばす。その赤く柔らかい肉が触れ合った瞬間。背筋を駆け抜ける喜びが脳を溶かしてゆく。


もう止まらない。

止めようもない。


呼吸を忘れ、互いの熱い唇と舌を絡め合い、触れ合う肌の温もりを求め合う。もっと近く、もっと強く、もっと互いに感じ合いたい。そんな思いが全身を巡って相手へと伝わる。きっと相手もそうなのだと思える。


そうやってお互いの身体を寄せ付け、押し付け、競い合うように熱と圧を求め合う。


時折、ティーの吐息が耳をくすぐる。

熱のこもった音が鼓膜を揺さぶることすら快感になる。


抱き寄せた手が腰に触れた声が可愛らしい、首を撫ぜると響く声がいじらしい、お腹を擦ると漏れる声が愛おしい。


じゃあ、ここに触れるとどんな音がするんだろう?

そう思って伸ばした手は、柔らかな双丘を探り当てる。


いっとう柔らかくて抗いがたい魅力を持つ、その丘を柔らかく捏ねてみる。


「んぅ!」


途端に漏れ出す声。明らかに異なる反応。


「痛かったですか?」

「……ちがう、ビックリした。あたしこんなに胸で感じるなんて思わなくて。思わず声が――あぅ?!」

「よかった。もっと可愛い声聞かせてください。」


全体を優しく包むように、時折頂きを摘むように。

あの手この手で、この手の中にある双丘を慈しむ。


「ね、ねぇ!ルー! 声がおさっ、えられない! か、可愛いの趣味じゃないっ、てぇ……いって、あひぅ!」

「違いますよ、妙に猫かぶったティーが嫌だっただけです。」


「んぁ! まって、そんなにぃっ! いじっ、めないで!」

「それはちょっと聞けません。我が家の家族猫も、時折いじめて愛でていたのを今思い出したので。」


「いやぁ……ルぅ、もっと優しくしてぇ……。」


涙目で訴える彼女の視線に背筋がざわつく。

普段の自身の嗜虐性がこんなところで繋がるものかと驚いてしまう。それと同時に手の力もゆるむ。


「はっ、はぁっ……はぁ。もぅ、ルー……ちょっと酷い。」

潤んだ瞳と柔らかな笑顔で不満を述べつつも、彼女の喉はグルグルと音を立て続けている。心から喜んでいる印だ。


彼女の意外な一面を知れて嬉しくなる。


そんなことを考えていたら、ティーから唇を重ねてきて、再び熱い吐息と舌が絡みついてくる。


息を止め、互いを貪り十数秒。



やがて空気を求め、名残惜しそうに離れていく唇から、甘えた声が響いた。


「ねぇ、ルー。あたしもう我慢したくない。早くルーが欲しいよぉ……お願い。」

「でも……ティー。今手元に避妊具が無いのですが……。」


正直ここまでの急展開なんて頭の片隅にもなかったので、当然というか手元にそういった備えは無い。


「いらない。言ったはず。あたしの覚悟はそんなものじゃないって。」

「……俺も覚悟が無いわけじゃないです。でも『ナガレ』としての今後のことを考えたら。」

「そこも含めて。覚悟してる。だからお願い。」


「……時間を作って必ず様子見に来ますからね。」


「ふふ……ありがと、ルー。愛してる。」

「俺もです、ティー。愛してます。」


そう言ってもう一度、俺はティーに口づけをし、彼女をベッドへと押し沈めて身体を重ねた。



重なり合い溶け合う想いが、深く深くつながっていく。


もう言葉を紡ぐ必要もない。

尽き果てるまで想いを込め、求めるだけだ。



今はただひたすらに、目の前の愛に応えたい。


相手もそうであると信じられるから。



やがて時間の感覚が失われ、互いの熱と圧だけが高まり続けていくのを感じていた。


限界が近づいても必死でお互いを繋ぎ止めるかのように口づけを交わした。


抱きしめ合い、身を重ね、肌を合わせ、少しでも近くにいようと必死に思いながら。



それでも愛おしい終わりの時は訪れる。

どうしようもなく、歓喜に満ちた悲しみが押し寄せる。




そこがたとえ別れの始まりだとしても。




『絶対に。必ずまた会いにいく。』




そう心に誓い、その想いをティーの奥深くで解き放った。


互いに身体を震わせ、凍えぬように熱を分け合った。



とろけるような快感と、心地よい倦怠感が身体を支配していく。



俺とティーはそのまま溶け合ったまま離れなかった。






――明日訪れる、別れの時に。

 少しでも寂しさが紛れますように。


 そう願いながら、二人で意識は手放した。



 そんな美しくも切ない二人を、月と星だけが見守っていた。


☆祝投稿開始一周年☆


ここまで読んで頂いて感謝します!!

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― 新着の感想 ―
拝読させて頂きました。 うん。感想は察して下さい笑 獣人ズルいですよ笑 エロくならないもの。可愛さ残るから。 一部を自作に参考にいつか? これ無理じゃない?とも笑 評価でご勘弁を…
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