16.ケンタウロスのケイVSラミアのミア
森が開け、広い広い空き地に出た。
僕らが通う中学校の校庭よりも更に広い感じだ。
「絆君、マナとハピをお願い」
ケイはその身を煙に包み、姿をケンタウロスへと変えた。
僕とマナ、ハピは草むらの陰からケイの戦いを見守る――マナは見えないけれど――ことにした。
地響きが起きた。
空き地の中央に亀裂が走り、蜘蛛の巣状に割れた。
そして、その中央からせり上がるように姿を現したのは――先日、僕らと戦った、半人半蛇のモンスター、ラミアのミアだった。
「まさか、アラクネのクオンとスキュラのユラを倒してここまで来るとはね。中坊のくせに、あたしたち相手にここまでやるとは」
「別に歳なんか関係ないでしょ」
ケイもマナもハピも、人間でいえば中学二年生の歳だけれど強い。
ケイが僕のところに来た時、自分で自分のことを「精鋭だ」と言っていたけれど、その言葉は掛け値なしだ。
「ケンタウロス……、このあいだはおまえとは戦わなかったが……。このあたしの力は、おまえたちをいっぺんに複数相手にできるほどなのだ。たった一匹でこのあたしに勝てるかな?」
「このあいだは、私と戦わなくて運が良かったわね。もし、私と戦っていたら、今頃そんなことは言えないわ」
「ほざくな小娘があ!」
ミアが、槍のように鋭い尾の先端を、ケイに向けて放ってきた。
血祭冴が以前戦った時は、その鋭い爪で尾を受けたのだった。
ハピは羽根手裏剣を放ったのだった。
ケイはどう戦うのか?
ケイはくるりと後ろを向くと、後ろ足でミアの尾を蹴りつけた。
かつて、血祭冴と戦った時、空の彼方まで蹴り飛ばしたほどの、強い強い蹴りだ。
骨の折れる鈍い音が、僕やマナ、ハピのいる場所まで聞こえてきた。
「ぎゅあああっっ」
骨を砕かれ、ミアが悲鳴を上げる。
ケイは、両手に弓と矢を出現させると、ミアの上体に向かって次々と放った。
ミアはくねくねと体を動かしながら、それらをかわし、上体を長く伸ばすと、ケイに噛みつかんと牙をむいて襲ってきた。
ケイが、その大きく開けた口に向かって矢を放つ。
ミアは、それを口で受け、矢を噛み折ると、ケイに噛みつかんと迫った。
横っ飛びでかわすケイ。
そのケイの馬体を、ミアの伸ばした蛇の下半身がとらえた。
「ひひひ……、とらえたよ。シッポの先端の骨を折られたくらい、どうということはない。かわりにお前の全身の骨を砕いてやるよ」
ミアがその長い長い下半身を何重にも巻き付け、ケイの馬体をぎりぎりと締め付けた。
「ああ、ケイ!」
その時、ケイの体がボワンと煙に包まれた。
なんと、ケイは戦闘中だというのに人間の姿になったのだ。
馬の前足は人間の両足に変化した。
そして、その後ろに続いていた馬の下半身は――消失していた。
ミアの尾は、「の」の字になって虚しく空をつかんだ。
ケイは人間の姿になることで、ミアの拘束から逃れたのだ。
ケイはそこから跳躍し、人間の足を使ってミアの顎に強力な膝蹴りを見舞った。
人間の姿をしていても、ケイは高い身体能力をもつ。
かつて、血祭冴と戦った時も、人間の姿のままの蹴りで、その腕を折っているのだ。
ケイはそのままミアの頭上高く跳び、体を一回ひねって煙をまとうと、ケンタウロスの姿に戻ってミアの背後に着地した。
「ひ~~、ひはをはんららろ~~は(舌を噛んだだろう~~が)……」
ミアは長い舌をだらりと口から垂らして、ケイをにらみつけた。
負けずにケイもにらみ返す。
あんなこわい表情のケイは見たことがない。




