13.マミーの包帯
「僕のためにこんなに傷だらけになって……、ごめんよハピ」
「なに言ってんの。ボクは絆のボディガードなんだから。これくらい、どうってことないよ。痛てて……」
ハピは人間の姿に戻った。
翼が人間の腕に変わる。
多くの羽根を失った翼は、傷だらけの人間の腕へと変わった。
せめて包帯だけでも巻いてあげたい。
こんなことなら、家にあった救急箱を持ってくるんだった。
せめてハンカチか何かないか?
僕はポケットを探った。
手に布切れが触れた。
「?」
何だろうと思い、取り出して見る。
敵のモンスター娘たちから送られてきた手紙に同封されていた、母さんの包帯の切れ端だった。
「包帯か……、でもこれだけじゃあ。これが長く伸びてくれたらなあ……」
そう僕が思ったところ、なんということだろう。
十センチもなかった包帯が、魔法のように長く長く伸び、ハピの腕に巻き付き始めたのだ。
「絆君、これは?」
「何かしたの、絆ちゃん?」
ケイとマナも驚く。
僕の手のひらの上の包帯は、どんどん伸びてハピの右腕の傷を覆うように巻き付くとカットされ、今度は左腕に巻き付き始めた。
そして、ハピの左腕にもきれいに巻き付くとまた適当な所でカットされ、しゅるしゅると縮んで僕の手のひら上で元の十センチぐらいの長さに収まった。
「すごい……! もしかして、これが絆君の能力?」
「『“きずな”ちゃん』だけに、『“きずな”おす(傷治す)』――なんてね」
マナが駄洒落を言う。
「僕にも分からない……。ただ、ハピの腕に包帯を巻いてあげたいと思ったら、この母さんの包帯が勝手に伸びて、ハピの両腕に巻き付いたんだ……。ハピ、ど、どうかな?」
「うん、ありがとう絆。だいぶ楽になったよ」
ハピは、手のひらを握ったり開いたり、肘の曲げ伸ばしをして見せたりした。
「歩くのは大丈夫かい?」
「問題ないよ。でも、飛ぶのは当分無理かな」
「本当にありがとう、ハピ」
「そんな、あらたまって言わないでよ絆。照れくさいじゃん」
吊り橋を渡り、僕らは森の中を再び歩み始めた。
ハピは大丈夫と言ったけれど、歩くペースが若干遅い気がした。
やはり戦いのダメージが大きいのだろう。
でも、途中でハピ一人置いていくわけにもいかないので、一緒に進むしかないのだ。
しばらく行くと、森が開け、大きな湖が表れた。
水面がきらきらと光っている。
そういえば、空を見るけれど太陽がない。
「この世界には太陽ないの?」
「太陽か。絆君、ここにはそれはないわ。空全体が光っているのよ」
「そうなんだ。いや、水面に光が反射しているけれど、そういえば太陽がないなあと思ったもんだからさ」
「ちなみに絆ちゃん、第二の場所はここよ」
「ここ? この湖が?」
水面に突然大きな渦が出現した。
渦の中心から、ゆっくり若い女性が姿を現した。
上半身は人間、そして下半身は――いぼいぼの吸盤が付いた、うねうねと動く八本の足。




