11.ハーピーのハピVSアラクネのクオン
「それで、ケイ、マナ、ハピ。僕らはこれからどこへ向かえば?」
「鍵水晶の働きで、約束の場所の直ぐ手前に出ているわ。しばらく行けば、第一の場所に着くはずよ」
「第一の場所?」
「うん。絆ちゃん、ほら、ここに、第一の場所、第二の場所、第三の場所ってあるでしょ? この三つの場所を通り、最後に絆ちゃんのお母さんが捕えられている第四の場所に辿り着けるというわけ」
マナが地図の上の四つのバツ印を指差した。
「ごめん、読めないや」
何かの模様かと思ったのは、どうやらモンスターたちの使っている文字らしい。
「そうか。絆にはボクらの文字は読めなかったね」
人間とモンスターのハーフとはいえ、僕はモンスターの世界のことを何も知らない。
反対に、人間の世界のことをよく勉強してやってきたケイ、マナ、ハピは本当にすごいと思う。
僕らは進み始めた。
しばらく行くと、断崖絶壁に出た。
向こう側の崖に向かっては、吊り橋が一本かかっているのみ。
びゅうびゅうと強い風が吹き、その吊り橋を揺らしている。
下を覗き込むとその谷底は、いったいどこが底なのか分からないほど深そうだ。
「ケイ、ここがそうなの?」
「ええ……」
言ったきり、ケイは黙ってしまった。
マナもハピも黙りこくって周囲を気にしている。
「上だ!」
ハピが叫んだ。
上を見る。
何かが上から降ってきた。
「絆君、危ない!」
ケイが僕を抱きかかえて、後ろへ跳んだ。
マナ、ハピも左右に跳んだ。
僕らがいた場所に、その落ちてきた何者かが、ずずうんと大きな音を立てて着地した。
もうもうと土煙があがる。
その土煙が収まると……、そこには一体のモンスターの姿があった。
上半身は人間の女性だった。
しかし下半身は違う。
足もお尻も、黄色と黒のしましま模様。
お尻は、しずくの形に大きくふくらみ、後ろ斜め上にツンととがっている。
足は人間タイプの足が二本なんだけど……、太ももの付け根の辺りから、それぞれ三本ずつ違うタイプの足が生えていた。
つまり計八本。
敢えて何かに例えるならば……、漢字の「非」のような 感じ?
ただし、生えている三本の足の間隔は狭いし、上二本は上向きにL字形にとがり、下一本は下向きのL字形にとがっていた。
あれは……、蜘蛛の足?
「絆君、怪我はない?」
「ケイ、ありがとう。大丈夫だよ。あいつは……?」
「あいつはアラクネよ、絆ちゃん」
「上半身は人間、下半身は蜘蛛……のモンスターさ。ボクらの最初の相手はこいつのようだね」
マナとハピが、かばうように僕を背にして立った。
アラクネは薄ら笑いを浮かべた。
年齢は……、こないだ僕らの前に現れたラミアやスライムと同じくらい……、人間でいえば高校生くらいに見える。
「掛橋絆と、そのボディガードの三匹だな。母親の元に行きたくば、このあたし、アラクネのクオンを倒していくことだ。誰が私の相手になる?」
クオンと名乗ったアラクネは、腕組みをし、こちらを睨みつけた。
ケイ、マナ、ハピは互いに顔を見合わせた。
「よし、ボクが行く」
ハピはその身をボワンと煙に包み、半人半鳥のモンスター、ハーピーに変身した。
「みんなは離れているんだ」
「一対一で戦うのかい?」
「絆。これは誇りあるモンスター同士の戦いだ。一対複数の戦いはありえない」
「わ、分かった……。ハピ、頼んだよ」
僕はケイ、マナと共に、離れた草木の陰に移動した。
ハピとクオンが対峙した。
「ハーピー。あんたがあたしの相手かい?」
「そうさ。いつでもいいよ」
「それはこっちの台詞さ。中坊モンスターなんかに負けないよ」
「じゃあ……、行くよ!」
ハピがクオンに向け、腕の代わりに両肩から生えている翼の片方を振った。
複数の羽根手裏剣が飛び出した。
先日、ラミアのミアのシッポ攻撃を食い止めたあの武器だ。
「フッ」
クオンはくるりと後ろを向くと、その尖った下半身の尾部から糸を放った。
放たれた糸は、花火のようにパッと広がり、ハピが放った羽根手裏剣を全て絡め取った。
ハピの攻撃が通じない!?
僕はハピを見た。
ハピの姿はもう地上になかった。
ハピはクオンの頭上高く飛翔していた。
そして、上空から、その足の鋭い鉤爪によるキックを見舞わんと急降下してきた。
クオンも直ぐにそれに気づき、顔を上げた。
だが、攻撃を受け切れないと判断したのだろう。
八本の足で大地を蹴ると跳び退いた。
ハピが、たった今までクオンのいた場所に急降下キックを見舞った。
両足が地中にめり込んでいる。
跳び退いたクオンは……、なんと宙に静止していた。
その尖った下半身の尾部から、糸を伸ばしている。
まるで凧の足のようだ。
驚きだ。




