表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の美少女モンスター  作者: 秋保嵐馬
Ⅳ.僕が戦う美少女モンスター娘四天王
59/131

8.傷身の冴

 普見蘭と大神浪子は気を失っていただけで、直ぐに意識を取り戻したが、血祭冴は重傷だった。

 ラミアのミアの尾で締め付けられて、文字通り、全身の骨を砕かれていたのだ。

 僕らは冴を僕の家に運び、二階の部屋の僕のベッドに寝かせた。

 ただ、ヴァンパイヤの回復力はとても高いので寝ていれば数日で回復するだろうというのが、ケイたちの意見だった。

 冴は静かに寝息を立てていた。

 部屋には、ベッドに寝ている冴と、あとは僕一人。

 全身の骨を砕かれたら人間だったら即死もしくは重体だろう。

 寝ているだけで治るなんて、やっぱりそのあたりはモンスターなんだな。

 冴のまぶたがかすかに動いた気がした。

「冴?」

 僕は呼んでみた。

 冴はゆっくりと目を開けた。

 僕と目が合った。

「掛橋絆……、無事だったのか」

「うん、ありがとう。冴のおかげだよ」

「ラミアはどうした?」

「みんなが駆け付けて……、追っ払ってくれた。倒すことはできなかったけど……」

「そうか……」

「体、痛む?」

「問題ない。横になっていればそのうち治る」

「そう……、早くよくなってよね」

「無様な姿を見せてしまったな……」

「そんな無様だなんて……、かっこ良かったよ、僕のために戦ってくれたんだもの。うれしかったよ」

「おまえのにおいがするな……。これはおまえのベッドか?」

「え、ごめん、くさかった?」

「そういう意味じゃない。ばか」

 ドアがノックされた。

 返事をすると、ドアをそうっと開けてケイが顔を覗かせた。

「絆君、いい?」

「うん。冴も起きてるよ」

「そうなんだ」

 ケイが入ってきた。

「冴、おまえ大丈夫なの?」

「ふん、要らぬお世話だ」

「その口ぶりならいつもの調子だから大丈夫みたいね。――絆君」

 ケイは僕を見た。

「向こうでみんなと話してるんだけど……。絆君も来てくれる?」

「あ……、うん、分かった。じゃあ、冴。ちょっと一人にするけど、待っててね」

「別にいい」

 冴はそう言うと、壁の方を向いてしまった。


 リビングには、マナとハピがいた。

「あれ、蘭と浪子は?」

 冴を我が家に一緒に運び込んだ普見蘭と大神浪子の姿がなかった。

「帰ったわ。一緒にここにいる理由がないからって」

「そんなこと言わないでいればって言ったんだけどな」

 マナとハピがお茶の片づけをしながら言った。

 五人分ある。

 蘭も浪子もお茶は飲んでいってくれたようだ。

「二人と何か話したの?」

 僕はソファにかけながらたずねた。

 ケイ、マナ、ハピが話してくれた内容はこうだった。

 モンスターの世界の勢力は大きく二つに分かれている。

 一つは、人間にその存在を知られることなく、密かに共存していこうという穏健派。

 ケイ、マナ、ハピは、その穏健派から僕の元に派遣されてきたのだ。

 もう一つは、人間に代わって世界の表舞台に躍り出ようとする強硬派。

 血祭冴、普見蘭、大神浪子はこの強硬派に属する。

 ただし、一口に強硬派といっても、さらにその内部は様々な考え方の者たちに分かれており、一枚岩というわけではないらしい。

 ケイ、マナ、ハピは互いに仲間だけれど、冴、蘭、浪子は互いに仲間というわけではない。

 今日、みんなが戦ったラミアやスライムは強硬派のモンスターだけれど、やはり冴、蘭、浪子らと仲間というわけではなく、それぞれの考え方で独自に行動しているようなのだ。

「蘭や浪子の話では、強硬派からの正規の指示では絆君への対応は保留になっているそうよ」

「保留?」

「ええ。絆ちゃんが死なない体の持ち主だってことが判明したので、命を狙う意味がなくなったんだって。冴や蘭、浪子は、次の指示があるまで絆ちゃんの周囲で待機ということらしいわ」

「まあ、でも、強硬派にもいろんな考え方の連中がいて、それぞれ勝手に絆を襲ってくる奴らがいるらしい。今日のラミアやスライムも、どうやらその口だ」

「冴や蘭、浪子には、別に僕を守れという指示がでているわけじゃないんだよね」

「そうね。絆君への対応は保留ということだから。まあ、保留というのは現状維持ってことだから、その現状を変えようとする――絆君に害を及ぼそうという者に対して、冴たちが戦いを挑んだのは分からないでもないわ」

「敵は正規の指示のもと動いているわけではないので、きっと絆ちゃんのことをよく知らなかったのね。うちの中学の生徒で名前に『橋』が付くということが唯一の手掛かりだったんだわ」

「まあでも、これでともかく、相手が絆のことをはっきり把握したので、今後はストレートに襲ってくるだろうな」

「絆君、心配しないでね。私たちが守るから」

「う、うん、ありがと……」

「あ、お茶でも飲む?」

 マナが立ち上がった。

「そういえば、冴も何も飲んでないよね。確かトマトジュースが好きなんだよな。冷蔵庫にあったから、僕持ってくよ」

 僕は冷蔵庫にあったトマトジュースをコップにつぎ、お盆にのせて二階の自分の部屋に持っていった。

「冴?」

 ドアをそうーっと開けたのだけれど……。

 ベッドはもぬけの殻だった。

 窓が開いたままで、カーテンがはためいていた。

「帰ったのか……」

 窓が開きっぱなしということは、ここから飛んで帰ったのかもしれない。

 あんな体で大丈夫だったんだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ