【弐】ファミレスはしごデート<破>
土曜の午前十時。
僕は普見蘭に指定された、イタリア料理のファミレスに行った。
店に入ると、蘭はもう来ていた。
「おはよう、普見さん。待った?」
「……。今来たとこ」
なんか、似たようなやり取りをこないだ血祭冴としたような。
普見蘭はクリーム色のシャツにジーンズという出で立ち。
着物が似合いそうなルックスの普見蘭だけど、今日はカジュアルな感じだった。
「何でも好きな物を頼んで。今日はお礼だから」
「そ、そう? じゃあ――」
僕はドリアにラザニアにピザにサラダに……、あとはドリンクバーを頼んだ。
普見蘭も同じ物を頼んだ。
料理が運ばれてきた。
結構な量だ。
女の子と二人で食べ切れるかな――という心配は杞憂だった。
普見蘭は、さらっと平らげてしまったのだ。
そういえば、以前、ご飯をいっぱい食べていたという理由で遅刻してきたことがあったっけ。
たくさんの食事が、フランケンとしてのパワーの源になっているのだろう。
「ふー。食べたねーー」
あれだけあった料理は完全になくなっていた。
「掛橋君、たくさん食べた?」
「うん、おかげさまで」
「そう。じゃ、次、行きましょう」
「え、次?」
次に、普見蘭は僕を和食のファミレスに連れて行った。
「何でも好きな物頼んで。お礼だから」
いや、お礼だからって言われても……。
既にイタリアンのファミレスで結構食べたので、もうそんなに余裕はない。
でも蘭は、僕にごちそうしてくれることで、こないだのお礼にするつもりなのだろう。
一応敵側のモンスターとはいえ、とりあえずは休戦状態で、今日はお礼ということなのだから、ここはきちんと受けるというのが、相手への配慮というかマナーだろう。
僕は軽いものを頼むことにした。
お茶漬けと漬け物くらい。
ところが普見蘭がそれに追加でカツ丼と天丼と鉄火丼とうな重と鍋焼きうどんと焼きおにぎりを頼んだ。
またまたテーブルにずらっと料理が並んだ。
「遠慮しないで食べて……、掛橋君」
「あ……、うん……、ありが……と」
普見蘭がじーっと僕を見てる。
こ、これは食べないわけにはいかない。
食べてこそ、お礼をしたいという蘭の気持ちに応えることになるのだ。
し、しかし、さすがにおなかが苦しくて半分も食べられない。
「ふ、普見さんも食べてよ」
「私は……、いい」
「で、でもさ、ほら、食事は一緒に食べた方が楽しいっていうか、美味しいから……、ぜひ一緒に食べてほしいんだ、ね?」
「そういうことなら」
普見蘭は、箸をとると、あっという間に残りの料理を平らげてしまった。
この小さな体の、いったいいどこにあの料理は消えてしまったのだろう?
「掛橋君、いっぱい食べた?」
「うん、いやあ、もう、ほんとにおなかいっぱ……」
「じゃあ、次行きましょ」
「はい……って、え、次?」
満腹でほぼ限界の僕が次に連れていかれたのは中華のファミレスだった。
この状態で中華か。
お、重い……。
「何でも好きな物頼んで。お礼だから」
テーブルに着くなり普見蘭は言った。
「い、いやあ、普見さん、もう僕おなかいっぱいで……」
――言いかけたが、普見蘭は何だか悲しそうな顔で僕を見ている。
「食べるだけなんて……、こんなお礼の仕方いやだった? 私、人間へのお礼って、どうすればいいのか分からなくて……」
「そ、そんなことないって! いや、僕、中華好きなんだよね。いくらでも食べられちゃうから平気だよ」
「……。良かった……」
普見蘭は安心した表情になると、ボタンを押して店員を呼んだ。
そして、天津飯と中華丼と酢豚とエビチリと麻婆豆腐と回鍋肉と餃子と饅頭と杏仁豆腐を二人分ずつ頼んだ。
またもや料理がずらっとテーブルに並ぶ。
み……、見ただけでおなか一杯だ。
「掛橋君、遠慮しないで食べて」
「う、うん……」
こうなったら、覚悟を決めるしかない。
せっかく女の子がご馳走してくれるというのだ。
たとえ胃袋が破れても、ここは応えなければ男じゃない。
僕は覚悟を決めて食べ始めた。
そして――。
見事に玉砕した。
三分の一も食べない内に、もうおなかいっぱい過ぎて、まったく身動きできなくなってしまったのだ。




