【壱】告白お断りデート<急>
冴の言うとおり、順番にそれぞれ別の公園で残り四人の男子に交際の断りを入れ、全部終わった時には五時を回っていた。
飲まず食わずぶっ通しで公園から公園へ移動し、交際への断りを続けていたので、疲れたし、おなかもぺこぺこだった。
「終わったーー。これで全部終了なんだよね」
「ああ」
「じゃ、じゃあ、僕はこれで……」
「まだだ、一緒に来い」
えーー!
まだ解放されないの?
僕はあるマンションの前に連れて来られた。
「ここって……」
「私の家だ」
そういえば、以前、血祭冴はマンションで一人暮らしって聞いたっけ。
自動ドアが開くと、冴は中にどんどん入っていった。
途中で立ち止まり、僕を振り向く。
「何をしている? 入れ」
「は、はい」
僕はあわてて血祭冴を追いかけた。
エレベーターに二人で乗る。
「あ、あのさ、冴」
「心配するな。部屋に連れ込んで血を吸ったりしない」
「あ、やっぱ、考えてること分かった?」
エレベーターを降り、廊下をちょっと歩くと直ぐに「血祭」と表示の出たドアの前だった。
「入れ」
「お、お邪魔しま~~す」
血祭冴の部屋は、いたって普通だった。
なんか、おどろおどろしい呪術の道具とか、動物の頭とか、ろうそくとか、魔法陣とか、もしかしたらあるのかな~~と思ったが、そういった類の物は一切なかった。
これじゃ、血祭冴がヴァンパイヤだと言われても誰も信じないだろう。
「座れ」
「あ、う……、うん」
僕はダイニングのテーブルの周りに置かれている椅子の一つにかけた。
冴はお湯を沸かし始め、冷蔵庫から何やら出すと、レンジで温め始めた。
数分後。
テーブルの上には紅茶とアップルパイが並べられていた。
「食事もとらずに付き合わせたからな。食べてくれ」
「あ、もしかしてこれを出してくれるために部屋に呼んでくれたの?」
「だから血を吸うためではないと言っているだろう」
「そ、そうでした、そうでした。いただきまーーす」
僕はフォークでパイを口に運んだ。
「あ、美味しいねーー。いや、嬉しいなあーー、腹ぺこだったから」
僕はアップルパイを一口食べた。
「美味しいねーー、これ冴が作ったの?」」
「たくさんあるから、よかったら食べてくれ」
「あ、うん、ありがとう。美味しいからいくらでも入りそうだよ」
「そ、そうか」
また冴の顔が赤い。
「あ、暑いな。クーラーをもっと強くしよう」
冴はリモコンをピッと操作した。
そんなに暑いかな。
十分クーラー効いている感じだけど……。
「掛橋絆」
「なに?」
「……」
「……」
「私たちの側に来い」
「え……」
「そうすればもう戦わなくて済む。このままでは私たちは、おまえやケンタウロス、マーメイド、ハーピーたちともずっと戦い続けなければならない」
「それは……、できないよ」
「……」
「……」
「なぜだ……、などと、野暮なことは聞くまい。――分かった。悪かったな、変なことを言った」
「いや……」
ちょっと気まずい沈黙が続いた。
「あ、あのさ、冴」
「?」
「今日の……、なんていうの、告白お断りツアーっていうか……、そんなのの手伝いだったらできるからさ、なんならまた声かけてよ」
「それなら心配するな」
「え?」
「来週の日曜も、返事をする約束の男が八人いるのだ。来週も付き合ってもらうぞ、掛橋絆」
「えーー? だって、借りは今日の分で返したんじゃ……?」
「プールでのことを忘れたのか? あのまま放っておいたら、おまえもケンタウ……陸守ケイも、プールから出るに出られず立ち往生だったのだぞ。今日一日ぐらいでその借りを返したと思うな」
「えーーーー!?」
そんなわけで……。
僕はそれからしばらくの間、日曜日ごとに、冴の告白お断りツアーの付き合いをさせられることになってしまったのだった。




