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僕の美少女モンスター  作者: 秋保嵐馬
Ⅲ.僕を狙ってくるのは美少女モンスター娘
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【壱】告白お断りデート<序>

「借りを返せ?」

「そうだ」

 中学校での給食時。

 僕は両隣の陸守ケイ、血祭冴とグループを作っていた。

 給食のときは四人ずつのグループを作ることになっている。

 ただ、僕のグループは一人いないので、僕、ケイ、冴の三人なのだ。

 冴が僕に言ってきたことに対し、ケイが問い返した。

「借りって何のこと?」

「忘れたとは言わせんぞケンタウロス。こないだのプールでの一件を」

「う……」

 ケイは黙ってしまった。

 先日、僕とケイでプールに行ったとき、ケイはコーラを飲んで酔っ払ってしまった。

 ケンタウロスってコーラで酔っ払うものらしい。

 そのとき、ケイの面倒を見てくれたのがたまたま居合わせた冴だったのだ。

「それで血祭さん、借りの返し方って、何をすればいいのかな?」

「今度の日曜日、私に一日付き合ってもらう」

「絆君、ダメだよ、冴に何されるか分からない」

「ふん、ケンタウロス。何かするつもりなら、わざわざお前の目の前で掛橋絆に声をかけたりはしない」

「う……」

 またケイは黙ってしまった。

 でも黙っているのは悔しいのか、ケイは言い返した。

「ちょっと冴。私のこと、ケンタウロス、ケンタウロスって呼ばないでよね。人間たちに正体がバレちゃうでしょ」

 確かに、今のケイはショートカットの可愛い人間の女の子の姿だけれど、その正体は半人半馬のモンスター、ケンタウロスなのだ。

 一方、血祭冴の正体はヴァンパイヤ、吸血鬼だ。

 吸血鬼といえば日光に弱いというのが定番なんだけれど、別に日光は平気ということで、血祭冴は昼間でも普通に中学に通ってきている。

「じゃあ、どう呼べばいいのだ」

「私はおまえのこと、ちゃんと冴って名前で呼んであげてるんだから、おまえもそうしてよ」

「じゃあ、ケイ」

「う……」

 またまたケイは黙ってしまった。

 あっさり名前で呼ばれてかえって戸惑ってしまったらしい。

「どうした? 名前で呼んだぞ。呼ばれたらちゃんと返事をしろ」

「な、な、なによ、えらそうに」

「ま、まあまあまあ……、二人ともケンカはやめてよ」

「私はケンカなどしていない。ケンタ……、ケイが仕掛けてくるのだ」

「ふーんだ」

「まあケイもさ……。血祭さんに世話になったのは事実なんだし……」

「それは……、そうだけど……」

 朝、言いにくそうなケイを説得して、血祭冴にプールでのお礼を言わせたばかりだ。

「では、掛橋絆。決まりということでいいな?」

 僕はケイの顔を見た。

 ケイは不服そうだけど、仕方がないといった顔をしていた。


 日曜日。

 僕は血祭冴とショッピングモールのコーヒーショップで十時に待ち合わせをした。

 血祭冴に、ケイもマナもハピも来るなと散々釘を刺され、僕は三人を説得するのがたいへんだったけど、何かあったら直ぐ携帯電話で連絡するからということで、やっと出させてもらったのだった。

 僕は十分ぐらい前にコーヒーショップに着いた、

 冴はまだ来ていなかった。

 僕はコーヒーを注文した。

 なんならこのまますっぽかされて冴が来ないとほっとするんだけどな……などと思っていたのだが、十時きっかり

に血祭冴は現れた。

「あ、お、おはよう、血祭さん」

「早いな。待ったか?」

「いや、さっき来たばっかり……」

 な、なんだかデートで待ち合わせしたカップルみたいな会話だ。

 血祭冴は今日はいつもの黒いゴスロリ服ではなかった。

 白のブラウスに水色のスカート。

 頭のツインテールの付け根には大きなリボンを付けている。

 な、なんだか、可愛らしい普通の女の子っぽい格好だ。

 冴が座ると店員が注文を取りにやってきた。

 冴はトマトジュースを注文した。

「血祭さん、トマト好きなんだ?」

「まあな」

「それはやっぱり、あれかな――」

 トマトジュースって血に似てるから?――って聞こうとして僕は黙った。

 気を悪くするかもしれないから。

「別に血に似ているからではないぞ。私はトマトが好きなのだ」

 僕が聞こうとしたことは察せられていた。

「そうなんだ。ケイはね、にんじんが好きなんだよ」

「今日はあいつらの話はするな」

「あ、うん……、分かった」

 しばしの沈黙。

「あの……、それで血祭さん、今日は僕なにをすれば……?」

「まず」

 冴はストローから唇を離し、グラスをテーブルに置いた。

「私のことを『血祭さん』と呼ぶな。冴と呼べ」

「あ……、うん、分かった」

「……」

「……」

「呼べ」

「はい?」

「私のことを呼んでみろ。練習だ」

「れ、練習? あ……、うん、分かった。じゃあ……、その……、冴」

 言われた通り、僕は血祭冴の顔をじっと見つめて名前を呼んだ。

「……」

「……」

 冴は僕の顔を見返したまま動かない。

「あ、あの、血祭さん?」

「……。は! な、なんだ?」

「なんだって……、呼べというから呼んだんだけど……」

「あ、ああ、そうだったな。じゃ、じゃあ、これからはそうしろ」

「これから? 今日だけじゃなく?」

「ま、まあ、そうだ」

「そうなんだ」

 しばしの沈黙。

「あの……、それで血祭さん、今日は僕なにをすれば……?」

 僕はさっきと同じ問いを繰り返した。

「一緒に来い。来れば分かる」

「あ、あのさ……」

 僕は冴に顔を近づけ、小声になった。

「どこか人気のないところで僕の血吸ったりしないよね?」

 冴はちょっと怒ったような口調で答えた。

「しないと言っただろう! 私を信用しないのか?」

「ご、ごめん。するよ、するよ、信用する。信用しているから今日だってこうして出てきたわけだし」

「……。分かればいい」

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