その38
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
去年の夏の終わり頃、僕が駅前のバス乗り場でバスを待っていた時、乗り込んだバスの後部座席から笑顔でこちらに手を振ってくれたのが、坂口メグちゃん。
あの時、違うクラスだったけれど、「あ、坂口さん、なんで僕に手を振ってくれてんだろう?」って思ったんだ。
けれども、メグちゃん側からすると、なんで違うクラスの僕が、自分に向かって手を振っているのか、意味がわからなかったそうで。
メグちゃんはその時、自宅に遊びに来てくれていたおばさんを駅まで送った後で、僕に手を振った訳ではなく、僕の後ろにいる自分のおばさんに手を振っていたって。
あの後、すぐに僕が「なんかおかしい」と気づいて、後ろを振り向いたら、メグちゃんのおばさんがニタニタ笑って手を振ってたっけ。
メグちゃんもあの時、「なんで住田君、あたしに手を振ってくるんだろう?」と思ったらしい。
すぐに、「あ、この人、あたしが自分に向かって手を振ってるって、勘違いしてるんだ。」とわかると、「あ〜、おっちょこちょいって、こういう人だ。」とも。
そして、去年の秋の文化祭、クラスごとにステージで合唱と楽器の演奏があったのだけれど、その時、アルトリコーダーを吹いていた際の僕の顔の動きが気になったそうで。
「なんで、あの時、ニッキ、あんなに鼻をくしゃってしたりしてたの?そういうのやりたいタイミングだったの?」
真顔で真剣に聞いてくるメグちゃん。
「え?あれ?あ…あはは…いや…どうだったか…。」
そこまで言って、しばし腕組みをして沈黙。
「…ん〜〜〜〜…あ!そうそう!あの時!あの時ね!ああ、ああ、そうそう!あん時さ…。」
そうだった、そうだった。
確かにリコーダーを必死に吹いていたあの時、何かのタイミングで鼻がものすごく痒くなって。
それで、演奏をやめて、手で鼻を思い切り掻きむしりたかったけれど、そうしちゃうと、ステージ上で1人だけ目立ってしまうし、他の人達にも迷惑がかかってしまうし。
どういう訳か、僕のソロ演奏のパートもあった為、リコーダーから手を離して、痒い鼻をガーッと掻くこともできず。
それでもしつこく痒いから、仕方なく鼻をくしゃっとしたり、鼻の穴を膨らませてみたり、鼻の下を伸ばして動かすことで、少しでも痒みが治ればと。
あれは「苦肉の策」だったのを教えると、メグちゃんはきゃっきゃと笑って、「そうだったんだあ…。」なんて。
「あはは…そっかあ…ニッキ、鼻が痒かったから、あんな変な顔してたんだあ…あははははは…。」
それを見たメグちゃんは、やっぱり僕のことを「おっちょこちょい過ぎ」と思ったそうだ。
更に…僕は、テルにしかバレていないと思っていた、あの「ズボンのチャック壊れた事件」も、知っていたそうだ。
「だってえ…ニッキったら、チャックを隠すのに必死だったみたいで、すんごく変だったんだもん…。」
メグちゃんからの情報によると、あの「事件」、クラスの全員が知ってたとのこと。
けれども、一生懸命隠しているニッキを傷つけちゃいけないとのことで、みんな黙って知らんぷりしてくれていたそうだ。
「えーーーーーっ!マジで?マジ?そうだったの?みんな、知ってたの?」
コクンと頷くメグちゃん。
「そりゃあ、わかるよお…。」
そうだったんだ、そうだったんだ。
だけど、メグちゃんは、そんな僕の「おっちょこちょい」が、だんだん「好き」って思える様になったって。
そうなの?
そういうもんなの?
僕はどんな顔をしたらいいのか、わからなくなっていた。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とっても嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




