その10
お話の続きです。どうぞ宜しくお願い致します。
僕は持って行くつもりだった普通の無地のアイボリーのタオルを止めた。
これだけでは危険すぎる。
想像するんだ!
ここは海水浴場。
周りは人、人、人だらけ。
そんな外で、着替えの最中、巻きつけたタオルがはらりなんて…大事件じゃないか!
自分だけでも大事件なのに、一緒に行くみんなや、全然知らない周りの人達にとっても、大事件になってしまう。
その後、どうやって生きていったらいいんだろう?
海水浴場で、一瞬でも下半身丸出しの自分。
僕は激しく動揺してしまった。
どうする?どうする?
あ!じゃあ、砂浜なんだから、大きくて深い穴を掘って、そこに入って着替えしたらどうかな?
全身がすっぽり入るぐらいの深い穴の上に、大きいタオルかなんかでふんわり蓋して、その中で着替えたら、楽勝じゃない?
どうよ?
そこまで考えたけど、じゃあ、その穴を掘るスコップはどうするのか?
持って行くのか?
そして、穴を掘るのにどれぐらいの時間がかかるのか?などなど、様々な難題が湧いて出た。
ダメだ!これじゃ!
折角ナイスアイデアって思ったんだけどなあ。
バッグから財布を取り出し、中身を確認する。
2500円ぐらいしか入っていない。
そら当然だ。
電車賃が往復680円で、残りはジュースを買ったり、かき氷を買ったり、後はせいぜい海の家で焼きそばか、味噌おでんぐらい買って食べる程度。
それで十分。
だって、僕はまだ中3だもん。
大きいお金は持ち歩く必要がないんだもん。
だから、海の家のシャワー付きの更衣室なんて、最初から借りるつもりなんてない。
みんなもそうだと思う。
シャワー付きの更衣室を借りるぐらいなら、そのお金で何か食べたり、飲んだりしたい。
じゃあ、どうする?着替え問題!
あ〜…今更だけど…プールじゃダメかなあ?
プールっていいよねえ。
だってさ、更衣室とかシャワーとか無料だし、ロッカーは100円かかるけど、所詮その程度だし、海水と違うから濡れても全然平気だし、流れるプールとか、ウォータースライダーとかもあるし、売店で売ってる物も全部お手頃価格でやけに美味しいし、体が冷えたら水着のまま入る「サウナ室」もあるもんなあ。
それに比べて「海」ってどうよ?
まず、砂が熱過ぎて足の裏が火傷しちゃいそうだし、汗かいた体に容赦なく砂の細かい粒がくっついちゃうし、おまけに風が強かったら、買った食べ物とか飲み物に砂が入っちゃって台無しになることもあるし、海の水ってしょっぱいし、変な海藻とか浮いて近づいてくるし、着替えの時も折角、真水のシャワーで洗い流して、ちゃんと拭いたつもりでもやっぱりしつこく砂があっちゃこっちゃについてくるし。
まだまだ、他にも海の文句はいっぱい出てきた。
あ〜、でもなあ、僕が言い出しっぺだしなあ。
なんで、「海に行こう!」なんて言っちゃったんだろう?
「一緒にプール行かない?」の方が、良かった気がしてきた。
あ〜あ。
ぼやきながら、僕は小学生の時通っていた「水泳教室」で使っていた、ヨレヨレのタオルを出して来た。
片側にゴムが入っていて、両端をスナップボタンで止めて「輪っか」状態にできる。
ぱっと見、女子の「ゴムスカート」だけど、これがなかなか便利で優れもの。
僕は帰りの着替えを想定し、ヨレヨレで糸が飛び出ている部分もいっぱいだけど、はたらく車の絵がいっぱいだけど、これを持って行こうと決めたのだった。
こんなタオル、本当は恥ずかしいけど、お尻丸出しになっちゃうことを考えると、これじゃなきゃダメだと強く思った。
再度、着替えの練習をしてみたところ、すごくいいと改めてわかった。
そして、くどく「海」に行くメリットみたいなのを、考えてしまうのだった。
最後まで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました。お話はまだまだ続きますので、引き続き読んで頂けたら、とっても嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致します。




