森の賢者 4
現在、セイナさんの家にいる。
セイナさんから聞いた話がずっと頭の中をぐるぐるとしている。他に聞きたいことがないならアレイシアさんの家に帰すと言われたけれど……俺は何を聞くべきなのだろうか。
セイナさんの話を纏めると、異世界転移には膨大な魔力を使うことになっていて、俺はエルフとしてしか生きられない。この世界の法則の方が強くて、俺は地球に戻ってもエルフから人間に戻ることなんてできないのだと。
エルフとして地球に帰るにしても自分で全部やれとそんな風に言われていた。
俺はどうしたいんだろうか。帰りたいけれど、そのためにセイナさんに何を聞けばいいんだろうか。セイナさんは聞いたら答えてくれるだろう。でも本当に俺は何を聞くべきなんだろうか……。
などと悩んでいたら、肩を軽く叩かれた。
後ろを振り向けば、金色の美しい髪を持つ優し気に微笑む男性――フランツさんがいた。
「フランツさん……」
「カグラ君、大丈夫かい? セイナさんは数日って言ったけど、もっと質問を考えたいとかならセイナさんにも相談しているから、焦らなくていいよ」
「ありがとうございます……」
俺はそう言って、優しく笑っているフランツさんをマジマジと見る。
フランツさんの事は図書室の本にもあまりのっていなかった。セイナさんへの質問を上手く考えることが出来ないので、フランツさんに質問をしてみることにする。
「フランツさんは……どうしてセイナさんと結婚を?」
「どうしてっていうか、俺は昔あった帝国に落ちたんだ。それで無理やり戦争に使われていたことがある。その時にセイナさんと出会って助けられて、此処で暮らすようになった。……それでこう、セイナさんのこと好きになったから」
……何だかハイエルフの人たちは色んな大変な過去を抱えているらしい。フランツさんは戦争に使われていたといった。無理やりハイエルフを従えるような何かがあったということだろうか。恐ろしい話だ。
セイナさんが助けて、此処で暮らすようになって、セイナさんに恋をした。そしてセイナさんと結婚した。地球に生きていたのに、此処でちゃんと生きている人。
セイナさんも、アキヒサさんも、フランツさんも地球からここに落ちて、そしてここでちゃんと根付いて、生きている。
――俺はどうしたいんだろうか。
そう考えると、俺は帰りたい。帰りたくて仕方がないけれど、そういう気持ちはフランツさんにはないのだろうか。
「……フランツさんは帰りたいと思わなかったんですか?」
「帰りたい気持ちはあったけれど……、俺は散々人を殺してしまったから。会いたい気持ちがあったとしても合わせる顔がないと思ったのもあった。あとはセイナさんから帰る事が難しいのは聞いていたし、何より助けてもらってセイナさんの言う通りにしようって事はあったから。昔はエルフなんかもいなくて、人間と俺達しかいなかった。だから生きにくかった。そんな中で利用されずに生きていけたのは全部セイナさんがいたからだから。セイナさんは自分勝手な人だけど、セイナさんがそういう人だからこそ俺たちは助けられたから」
「……そうなんですね」
昔のことを俺は話で聞いても中々想像が出来ない。生きにくかった世界で、セイナさんが居たからこそ彼らは生きていけるようになった。
……俺はその時代にこの世界に落ちていたらどうなっただろうか。保護されることもなく、利用されるだけ利用されて絶望してしまっていたかもしれない。
エルフとしてこの世界は以前よりも生きやすいのだろう。それは話を聞いていても分かる。ちゃんと生きていけて、保護してくれる場所がある。それなのに無理だといわれても帰りたいという俺は我儘なのだろうか。
帰れたとしても俺一人だけ長い時間を生きていかなければならない。インターネットが世界中に広まっていて、戸籍もしっかりしている場所で生きていくなんて難しいだろう。海外にいけばそういうのがなくても上手く暮らせる可能性もあるが、それも難しいだろう。
俺が地球に戻れたとしてそれでこの世界にとって悪い影響を与えてしまう可能性もセイナさんが言うようにある。
……でも、それでも帰りたいんだよなと思う。
「……転移の魔術ってセイナさんに聞いたら教えてもらえたりするでしょうか?」
「……いや、セイナさんは教える気はないと思う。帰すことに反対しているから。自分で一から転移の魔術完成させて帰る事に関しては黙認してくれるだろうけど。勝手にしろってことで。ただ、そうだね、セイナさんに帰してほしいとか、どうして帰してくれないんですかは言わないように。そんなことを言ったらおそらく同じ日本出身だろうと、容赦せず殺すだろうから」
「……はい」
真剣な表情で殺すだろうからなどと言われて青い顔をして頷いてしまう。
……セイナさんへの質問、本当にどうしようか。下手な質問をすると俺の命が本当に危なさそうだ。




