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森の賢者 2

「どうしてですか……。『森の賢者様』と呼ばれる貴方はこの世界で最も魔術に長けた存在だと聞いています。長い時を生きているセイナさんは逆らってはいけない、誰よりも魔術を知る存在だと」

「ええ、不本意だけど私はそんな風に思われているわね。それが?」

「俺は思いました。それだけ魔術に長けていて、『迷い人』である存在が地球へと戻ろうとしないだろうかと。セイナさんは地球に帰るための魔術を持っているんじゃないですか」

 『森の賢者様』セイナの話を聞いて、俺はずっと俺と同じ『迷い人』だというセイナさんが地球に帰るための研究をしないだろうかと考えた。今はハイエルフとして生きているとしても元地球人ならばきっと落ちてきた当初は帰ろうとしたのではないかと。

 セイナさんが地球に対して愛着が皆無な人間であったら別かもしれないが、そうでないのならば帰りたいとあがいたはずだ。ならば、帰る魔術の研究はしていただろう。もしその魔術がなかったとしてもその地球に帰るための魔術に繋がることを彼女は知っているのではないか。

「カ、カグラ!!」

 アレイシアさんは俺がセイナさんに反論するように意見を言った事で焦ったような声をあげている。

「ふふ、アレイシア、焦らなくていいわ。このくらいで私は怒らないわよ。そうね、私は昔地球に確かに帰ろうとしていたわ。その研究だってしてた。でもね、その上で私は帰すことはしないというわ」

 セイナさんは美しく微笑むと、そう告げた。

 俺の言葉を肯定して、そしてまた帰すことはできないと言った。

「どうしてか、納得がいく説明をしてもらってもいいですか」

「そうね。まずは世界の法則の話でもしましょうか。ああ、アレイシア、セーラもここで聞いたことは外に漏らすことは禁じるわ。カグラもね。下手に周りに知られたら昔のようなややこしいことが起きる可能性があるもの。漏らしたら、私は貴方達を殺すわ。そして知ったものも殺すわ。いいかしら?」

 セイナさんの殺気立った言葉に俺たちはこくこくと頷く。セイナさんの目は何処までも本気で恐ろしい。


 それからセイナさんは俺の知らない話を始めた。この世界と異世界地球の話はアレイシアさんたちもそんなに詳しくは聞いたことがなかったらしい。




「まず一つの問題として異世界に渡るための魔術というのは多くの魔力を消費するわ。それに術者が幾らコントロールしても世界を渡る術というのは難しくて私の魔力が根こそぎ持っていかれるぐらい魔力を使うわ。これは大変な量よ。実際にアキヒサが無理やり召喚された時なんて酷かったわ」

「召喚された?」

 俺はセイナさんの言葉に驚いてアキヒサさんの方を見る。エルフの『守護者』と呼ばれるアキヒサさんは俺の言葉に答えた。というか、アレイシアさんとセーラさんも驚いた反応ってことは本当にあまり語って来なかった話のようだ。

「昔王国の王妃になった『迷い人』は『賢者』と呼ばれていたセイナさんに地球に帰してほしいと願った。しかしセイナさんがそれを断ったことでセイナさんを『魔女』として広めたんだ。俺はその百年後に『魔女』を討伐する『勇者』として王国に召喚された」

 ……セイナさんは昔から帰してほしいという願いを断っていたらしい。でも願いを聞くかどうかはセイナさんの自由だし、『魔女』として悪評を広めることはするべきことではないと思うんだが。それで『魔女』となったセイナさんを倒すためにアキヒサさんが呼ばれた。

 ……でもさっき異世界に渡るための魔術は『森の賢者様』と呼ばれるセイナさんの魔力を根こそぎ持っていくといった。そんな魔術を人間が行使できるものなのだろうか。

「魔法陣は一人で行使しなければならないものよ。王国は『王国に住まう人間』を『一人の人間』と考えて魔法陣を発動させたわ。その結果、王国には魔力欠病という病が起こっていたわ。私の呪いってことにされてたけど。王国民から魔力をすいとって、魔法陣の糧にして、アキヒサの魔力を上乗せしたりしていたのよ。魔力欠病によって死んでしまう王国民も多かったらしいわ。まぁ、この世界は魔力がなければ死んでしまう世界だから。ちなみに異世界から『勇者』を召喚なんて話になったのは例の王妃になったトリップ少女がそういう話を王国に伝えたせいだったらしいわ」

 セイナさんがさらっとそんなことを言った。異世界から召喚するという話を『迷い人』の少女が伝え、その結果『勇者』召喚のために王国民が犠牲になり、アキヒサさんが召喚された。

「で、続きだけど……、世界にはそれぞれ法則というものがあるのよ。例えばこの世界だと生き物は全て魔力を持ち、その魔力によって髪の色や寿命が変わるっていう法則。他の世界だと別の法則があるわ。この世界の上に地球が重なっているようなもので、日本人は元王国の領土に落ちているわ。他に『迷い人』がいたとしても海に落ちておぼれ死んだりしている可能性も高いわ。それでまぁ、地球よりもこの世界の法則の方が強いの。私は一度地球に行ったわ。でもそこでも私はハイエルフのままだった」

「……一度、地球に?」

「ええ。全然知らない海外に辿り着いた。でも私はハイエルフのままだった。あの世界にいっても私は長命種でしかない。それに加えてあの世界は魔力というものが薄いわ。だから使い切った魔力を回復するのに長い時が必要だった。その間、もちろん魔術なんて必要以上には使えなかった。そんな状況で魔力が回復するまで長い時間過ごしてその間私は一切年を取らなかった。私たちは戻ったとしても長命種で、人より長く生きなければならない」

 セイナさんはそんな事実を、俺に告げた。

 もし戻れたとしても変化してしまった寿命は変わることがないのだと。




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