第57話
「よかったわ。無事に帰ってきてくれて・・・みんな本当にありがとう。」
ケイトの瞳はうるうると潤んでいた。
そうしてぎゅっとミーアを抱きしめ頬擦りした。
「タオ本当によくやったわ。見直したわよ。」
「ええ。あなた達には今日は特別のごちそうを用意しましたからね。」
「君達は最高の使い魔だね」
ミーアを連れ帰った俺たち使い魔軍団はそれぞれの主から大歓待を受けた。
最初はどうなるやらと思ったへんてこトリオだったが、皆、できる限りの事を精一杯やった。
俺達は役に立てたことに満足していた。
戻ってきたミーアはその夜はケイトにべったりと甘えていた。
口では強い事を言ってはいたが内心は不安だったのだ。
自分を心配し、探してくれた事はなにより嬉しかった。
ここは感謝の言葉を告げなければ・・・・
『まあぐずなあんた達にすれば、今回は早かったと褒めてあげるわ。もう二~三日はゆうにかかると思っていたもの。』
せっかく意を決したというのにタオとカラスの顔をみたとたん・・・・
そんな事しか言えないミーアであった。
なぜならカラスは昼間の活躍で疲れていたのか止まり木から落ちたまま寝ていたし、タオはご褒美のごちそうを食べ過ぎてその大きな腹を天井に向けて大の字になって転がっていたからだ。
パルスはでっかいチーズに乗ってご機嫌だった。
「皆ほんとうに今日は大活躍だったね。ゆっくりお休み。ご苦労様。」
アルバートはそう労うと部屋に戻って行った。
昨夜は全員がほとんど眠っていないのだ。
今夜は早めの就寝になったのだった。
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翌日アルクはルークの執務室で事件の報告をしていた。
「昨日逮捕したペットショップの店主の供述から、神殿に出入りしている業者を割り出すことが出来ました。
面通しの結果オズとバースという二人組みがミーアを持ち込んだのは間違いない様です。
二人もその件については認めているものの、誘拐については強く否認しています。
神官に頼まれたとの供述を翻そうとはしません。
人のいない山か森に捨てるよう指示があった事からしても、使い魔と主との関係を熟知している者でないと・・・・
普通の人間の彼等にはその様な事がわかるはずもありません。
私から見ても嘘をついているようには見えませんでした。」
書類をペラペラとめくりながらアルクは説明する。
「そうだな。奴らが欲深いおかけで、ミーアは山や森に捨てられなかったんだ。
だからこそ見つける事がで出来たとは皮肉な事だな。」
ルドルフは机に肘をつき、頬杖をしてその報告を聞いた。
「それと、あれから神官の方を個別に洗い直した結果、一人気になる神官を見つけました。
フィリップと言う男なんですが・・・・」
アルクは持っていた書類を机の上に置き、厳しい表情になった。
「フィリップ?それはどのような神官なんだ?」
「はい。普段はほとんど地方に赴任している神官なんですが、現在はこちらの神殿に帰って来ている模様です。
この神官が得意とする魔力は気象関係でして、赴任される地方は主に異常気象が続いている所となります。」
神殿では干ばつや水不足に悩む地方、あるいは大雨や洪水等に悩まされている地方にはその能力に特出した神官を派遣してその異常気象を魔力によって正常に戻すという役割も担っているのだった。
それにより人々の暮らしは安全に又、作物の不作等も起こらぬ様に守られるのである。
神殿の役割はそのひとつを取ってみても人々の暮らしに密着している。
だからこそ人々の神殿への信頼は厚く権威の高いものなのである。
「その彼がここ1~2年は頻繁に赴任先を転々と変わっているのです。」
「なんだって。異常気象が正常に戻るには少なくても三年は様子を見なければ完全とはいかないだろう。」
ルドルフは身を乗り出して報告に聞き入る。それだけ事の重大性を示すものであったのだろう。
「そうなんです。移動には早すぎます。それともう少し調べを進めましたら、どうも異常気象の依頼を受けてない所にも赴任しているふしもありまして・・・・」
「怪しいな・・・・
それに気象の魔力に精通している者ならば、雷を操る事もたやすいな。」
ルドルフは腕を組み考えを巡らせる。
「そのとおりです。あと彼の赴任先と雷の事故が起こった場所と時期が妙に一致しています。
恐らくは彼の仕業かと・・・・
ですがそういった赴任先の移動ともなりますと、いち神官の意思だけでは自由になるものではありません。
その背後にはもっと大きな力を持つ黒幕がいるものと思われます。」
アルクは淡々とまとめられた報告を説明する。
「ふむ・・・・神官ともなれば、あいまいな状況証拠だけでは取調べも出来ないしな。
しばらく泳がせてみるしかないな。監視は怠るな。」
「はい。その目的と確たる証拠を掴むまでは、おっしゃる通りに致します。」
アルクの調べは順調に進んでいる様であった。




