↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
至高の魔女  作者: みやび
PR
57/77

第56話

その時、風のようなスピードでふわりと俺を飛び越えた白くて大きな化け物が現れた。


『待たせたな!』


「キース!きたー!」


上空からカラスが叫んだ。


ギルと二匹の子分達は、その子牛ほどもある大きなキースの牙が自分達に向けられた事にびっくりして尻餅を付いた。


『ひ・・ひぃ~~・・・』


『あ・・わわわわ』


『ぎゃ~~!』


それぞれが叫び声をあげながら散り散りに逃げ回った。

足がもつれて何度も転びながら必死で走って行くのだった。


俺はあまりの呆気なさにぼーぜんと見ていた。

俺だって初めてキースを見た時はびびりまくったのだから無理もない事だ。


この無口な白い狼はその存在だけで十分恐怖を与えるのだ。

相当強いのだろうけど戦うところ等見た事はない。


いや見ない方がいいのかもしれない。

キースの性格を分かっていてもきっと俺は恐怖で近づけなくなってしまうだろう。

でもどうしてキースがここに?


「俺がアルバートに連絡したんだぞー!」


上空からカラスが叫んだ。


『い・・いつの間に?』


「ミーアが見付かったと聞いたとたんさー!

どーだー!見直したかー!」


カラスは自慢そうに胸を張った。

カラスはなかなか気のきく奴だった。


はっと我に返った俺はもうひとつのじゃま者の方を振り返った。

棒を持った店主はまだ店頭に張り付いている。


その時、上空からスィーっとサリーがミーアに近づいた。

店主は商売物の動物を鷹が狙ったと勘違いした様だ。


今度はサリーに向かって棒を振り回す。

サリーは店主が振り回す棒をスイスイとうまく避ける。


らちが明かないとみた店主は道端に転がっている拳ほどもある石を拾った。


『おい。助けに行かなくていいのか?』


のんびりと見ているだけのキースに向かって俺は言った。


『サリーなら心配いらないさ。』


キースは知らん顔を決め込んでそんな事を言う。

俺はハラハラしながらサリーを見ていた。


店主はサリーに向けて手にした石を投げた。

サリーはクルッと旋回すると、投げられたその石のスピードが落ちた頃を見計らって上手に足で受け止めた。


そのまま上空高く飛び上がったかと思ったら今度は店主に向かって急降下して行く。

そして店主の頭上まで来たとき、その足で掴んでいた石を離したのである。


ゴツッ!

鈍い音がして店主は頭を抱えてしゃがみ込んだ。


頭からは血が噴出している。ひどい出血だ。

押さえた手からもポタポタと血が滴り落ちる。


そこへ、ルドルフとアルクが走ってきた。

位置が分かり難かったのか、、どうやら瞬間移動した位置がかなり離れた場所だったのだろう。


その為、サリーとキースよりずいぶん遅れを取ったのであった。

後ろにはたくさんの兵士たちが付いて来ていた。


サリーはスィーと俺達の方へ飛んできて近くの塀の上に止まった。


「か弱い私に石を投げつけるだなんて!許さないわ。」


サリーはプンプンと怒っていた。


『・・・・・』


俺は絶句した。

一番恐ろしいのはこいつかもしれない。


まだトラ猫のギル達なら、俺だって死にもの狂いで頑張ればなんとか撃退出来たかもしれない。

しかし、棒を持った人間となれば話は別だ。


俺なんかが到底、敵うもんじゃない。

なのにこいつは簡単に撃退しちまったんだ。


ぼーぜんとしている俺をチラッと見てキースが言った。


『俺がサリーに頭が上がらない理由はこれさ。

あいつが相手なら俺だって勝てる気がしない。』


・・・・・どうやら力より、頭脳と心で負けている様だった。


店主は兵士たちの手によって逮捕され、後ろ手に縛られて連れて行かれた。

簡単な治癒魔法は施してもらえた様だがまだその傷は痛々しい。


アルクが言う罪状は多い。

身元のわからない相手との取引違反。


既に契約済みの使い魔を使い魔用の動物として販売していた詐欺行為。

そして動物虐待だ。


あの店主なら叩けばまだまだ埃は出るだろう。


ルドルフは鍵のないミーアの檻を魔法を使って開けた。

こうしてミーアは晴れて自由を取り戻したのだった。


『待って。お願い・・・隣の檻のハチも逃がしてあげて。約束なのよ。』


ミーアの願いは聞き届けられハチの檻も開けられた。

ハチは喜んで檻を飛び出してチャチャの元に走って行った。


『本当にありがとうよ。ミーア元気でな。』


『ありがとう。これでここらの猫たちも安心して暮らせるようになるわ』


チャチャはペコリと頭を下げた。

そうしてハチとチャチャは仲良くひょいと塀を乗り越えて消えて行った。


茶トラとハチワレ?

お前達はもしかして・・・・


まっ・・・いいか。無事だったんならそれでいいや。

俺は二匹が消えた塀をいつまでも見ていた。


残された動物達はアルクが手厚く保護したそうである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。