サンレモニアの村
前日に早寝をしたからだろう。
翌朝は、早々に目が覚めた。
昨晩、炙っておいたイノシシ肉で朝食を済ませる。
あとはひたすらサンレモニアの村を、目指すことになった。
出発前にトラップを確認するが、起動した形跡はない。
それに安堵し、道なき道を進む。
途中、かなり離れた場所でクマを見つけ、これは本当にドキッとした。
特に馬を連れているので、馬自体を落ち着かせることに、腐心することになる。
でも危険を感じたのは、それぐらいだった。
追っ手もなく、獣との遭遇もなく、そしてついにお昼過ぎに――。
サンレモニアの村に辿り着いた。
初めて見るサンレモニアの村。
それはなんだかおとぎの国の村のようだった。
木々の間から、こんな場所に見えるはずのないものが見えた。それはカラフルな色の屋根。赤・青・黄色。外壁は白く、子供たちの笑い声が聞こえる。近づくと、まるでここが玄関です、というようなスペースがあり、そこは草が刈られ「Welcome」の文字が浮かびあがっていた。
「あらあ、珍しい! 女性が一人でここまで来たの? あ、でも剣を持っている。まさかお嬢さん、剣を扱えるの?」
金髪の碧眼で、髪を後ろで一本の三つ編みにした女性が、私を見た。
この辺りで金髪と言えば、マリアーレ王国の出身者が多い。
井戸のそばに女性が数名いて、昼食後の片付けだろう。鍋やフライパンを洗っている。皆、ウエストインしたチュニックに、ロングスカート、そしてエプロンという姿だ。
気さくに声をかけられたことに、ドキドキしながら「あ、はい」と私は応じる。
もうここで生きて行くと決めたのだ。男装ではなく、女性としての姿で、村に辿り着いていた。
つまり金髪はポニーテールにして、白に近い水色のワンピースに、白のエプロンという街娘のような装いにしていた。ちなみにこの淡い色にしたのは、スズメバチ避けのためだ。
「どうやら頼もしい仲間が増えたみたいね。ピーター、案内してあげて」
三つ編みの女性が声をあげると、村の中で散っていた人々が、一斉にこちらを見た。そしてわらわらと人が集まって来る。まさに老若男女。目に見える範囲で、五十名くらいか。
人の数を瞬時に把握できるようになったのは、戦場に出るようになってから。敵兵の数を把握する必要があり、会得したスキル(?)みたいなものだ。ついでに体格を見て戦力まで判断しようとしてしまうが……これはもういらないスキルだろう。
何はともあれ、ピーターという金髪碧眼の木のように背が高いひょろっとした青年が、村長にあたる人物のところへ案内してくれた。ピーターは、この村でパン屋をしている。私に最初に声をかけてくれた金髪の三つ編みの女性……名前はアズの夫だった。ちなみにアズはそのパン屋で働いていた。
ピーターは歩きながら、村の様子を説明してくれた。聞いている限り、森の外にある村と変わらない。むしろ村というより町と呼べるぐらい、発展していた。パン屋、肉屋、魚屋など、生活に必要そうなお店は、ほとんど揃っているという。
お店というが、商品を手に入れるのに、お金は不要だった。皆が役割を持ち、それを果たしているため、ここでは通貨が存在しない。勿論、森の外へ出て買い物にするには、お金が必要になる。だがそれはこの村で作った工芸品を販売し、現金を得ているという。
それで一つの村として成立しているなんて。本当にここは、ユートピアね。
「ここが村長の家だよ」
ピーターが一軒の家の前で歩みを止めた。






















































