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宿敵の純潔を奪いました  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
第一部

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逃亡

 ヴァルドが宿泊している宿なのだから、警備体制はガチガチと思ったが、そこまでではなかった。表と裏口に兵士はいたが、ランドリールームで見つけたワンピースを着て、宿の従業員のふりをして歩いていくと、あっさり通過できた。


 冷静に考えると、帝国軍の騎士も兵士も、私のことは「リヴィ騎士団長」としての姿しか知らないのだ。ミア第一王女の姿でウロウロしたところで、リヴィであると気づくのは……あのソードマスターのマッドぐらいだろう。


 マッド。


 見た目は老いた騎士にしか見えなかったのに。

 瞬時に私の正体を見抜いていた。

 天敵だ。

 彼を警戒しながら、自分のとっていた宿へ戻ることになる。


 なんとか無事、部屋に戻ることができた。急いで荷物をまとめ、白シャツにグレーのズボンで男装し、灰緑色のフード付きのローブを羽織った。


 馬に乗り、サンレモニアの森を目指す。


 いつ追っ手がかかるか分からない。

 とにかく先を急いだ。

 それでも馬を休憩させる必要があるので、どうしても無理はできない。


 二度目の休憩をとっている時に気が付く。


 ヴァルドは平和条約締結記念舞踏会に向かう必要がある。つまりマリアーレ王国の中心部にある王都を目指す。対して私が向かっているのは、マリアーレ王国では北の方面に当たる。つまり方角的に私を追うと、王都から遠ざかるのだ。


 それを踏まえると、まずヴァルド自身が私を追うことはない。


 そこは安堵していいことだった。


 だが。


 マッドが私を追ってきたら……?


 その可能性も考えたが、マッドはソードマスター。そしてヴァルドはつい最近まで百年戦争で戦っていた、マリアーレ王国に乗り込むのだ。いくら平和条約が締結したとはいえ、日が浅い。マッドはヴァルドの護衛のため、特別に雇われたと思う。


 そうなるとマッドがヴァルドから離れるわけがなかった。


 何より、ヴァルドはマリアーレ王国のマリアーレクラウン騎士団の団長リヴィに、純潔を奪われているのだ。しかも男と思っていたリヴィは、女だった。


 マリアーレ王国に対する警戒心は高まっているはずだ。


 だからといって。


 平和条約が締結したばかりなのに、いきなり戦争再開は、いくら帝国でも避けたいだろう。ゆえに平和条約締結記念舞踏会に、ヴァルドは必ず向かうはずだった。そしてその護衛にマッドは就く。


 そうなるともし私の後を追うとしても、それは剣聖と言われる私なら、なんとかできるレベルの追っ手だと思う。後は数の多さが心配だが……。


 大人数で追ってくることは、ないと思った。


 というのも。


 サンレモニアの森で、マリアーレクラウン騎士団は、避難民の救出活動をしている。平和条約締結記念舞踏会があるが、騎士団の出席は必須ではない。社交と外交は王侯貴族にお任せだった。騎士団のみんなは、今日も王都の煌びやかな世界とは無関係に、森の中を献身的に歩き回っている。そして当然だが、帝国との国境に近い場所には、意識を向けているだろう。


 そこは私が意識を向けておくようにと、副団長であるノルディクスに、指示を出していたのだ。そしてヴァルドはあの宿場町に、数日前から滞在している様子だった。当然、国境付近をマリアーレクラウン騎士団が警戒していると、気づいているはずだ。はず、ではない。気づいている、ヴァルドなら。


 ならば私の追っ手は少人数にするだろう。そうしないと目立ち、マリアーレクラウン騎士団が反応するだろうから。


 そしてヴァルドやマッドではない、少人数の追っ手なら、私で対処できる。


 それを悟ると焦りが消えた。

 強行軍は止め、適正な休憩をとり、サンレモニアの森を目指すことができた。


 こうして。


 まずはサンレモニアの森に着き、そこで馬を降り、森の中を進むことになる。

 計画通りの距離を進み、途中、イノシシを一頭仕留め、野営の準備を行った。


 単独の野営は危険が伴うので、いくつかトラップを仕掛ける。


 ヴァルドの追っ手も気になるが、野生の獣も意識する必要があった。

 こうしてトラップを仕掛け、まずは川で水浴び。

 その後は焚火でイノシシ肉を焼いて、お腹を満たす。

 満腹になると、さすがに疲れた。

 昨晩のあれやこれやで、実は筋肉痛になっていたということもある。


 早々に眠りに就いた。

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