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12話 リバイブ

 クレイブは800歳を過ぎたあたりから(いちじる)しい老化の進行を感じていた。

 そこで宇宙旅行が苦になる前に研究をスタッフに任せ、地球に帰って来た。

 ミコとルーファンも同行した。

 

 代表代行はクレイブのひ孫、ミコとルーファンの孫が務める。

 ミコとルーファンが100歳になったときにもうけた子供が150歳になったときにもうけた子であり、優秀な科学者に育っていた。

 

 アンチエイジング技術で、100歳を過ぎても何の問題もなく子供をもうけることができた。

 自分の都合のいいタイミングで子育てができたのだ。

 ただし、人口増加を防ぐため女性が生涯に産める子供の数は二人までと決められていた。

 

 地球に戻ってきてからは余生を楽しみつつ、とあるプロジェクトを進めていた。

 

 ガードナーやマキナとの旧交も温めていた。

 ガードナーはIRMOの総長を長年務め、勇退して相談役に収まっていた。

 

 

 

 ガードナーと会って食事をしたとき、ガードナーがこんなことを言った。

 「お前たちの研究は行き着くところまで行くんだろうな」

 「行き着くところって?」

 「いずれは人間みたいなのも創り出すんだろう?」

 「そんな、コミックみたいなことを…」

 「否定はできないだろう?」

 「………………」

 

 「お前は昔から一度決めたことは絶対やり()げるからなあ。ヘビみたいにいやらしいくらいに執念深いよ」と言って笑った。

 ()められてるのかけなされてるのかわからない。

 

 「どれくらい年月かかるか知らんが気を付けろよ。そいつらに反抗されたら危険なのはお前だよ。まあ、俺はとっくの昔に棺桶に入ってるがな」

 「僕だって同じだよ」

 「マキから聞いてるよ。リバイブプロジェクト」

 

 

 リバイブプロジェクト、死者再生計画。

 

 死亡後に、分子レベルで構築できる特別な3Dプリンターで肉体を再構成する。

 そこに生前の人格と記憶を移送する。

 若く新しい肉体で蘇ることができるのだ。

 プロジェクト自体はタイタンにいるときから進めていたが、その道のりは容易ではなかった。

 

 まずは機能要件を満たす3Dプリンターを開発するのが大変だった。

 細胞のひとつひとつ、その中の遺伝子やミトコンドリアまで正確に再現しなければならない。

 そして肉体構築中に生前の人格と記憶を組み込まなくてはならない。

 

 生前の人格と記憶をコンピューターに記録する技術も困難を極めた。

 すっかりお婆ちゃんになったマキナ博士もこのプロジェクトに参加し、腕を振るった。

 

 

 動物実験では何とか成功に()ぎ着けた。

 生前の飼い主を認識し、生前と同じ芸をした。

 

 最初の実験では再生してから3日で死んだ。

 

 調査の結果、体内に存在する腸内細菌などの常在菌がいないことが原因だった。

 まだ常在菌までは同時に構築できないため、機能不全を起こしたのだ。


 とりあえず再生した直後に生前採取しておいた常在菌を自家移植することで当面の問題を回避した。いずれは常在菌も含めて肉体を構築できるようになるだろう。

 

 再生される人物は、人類にとって再生されるに相応(ふさわ)しい人でなければならない。

 人類に貢献し、再生後も人類に貢献してくれる人こそ相応しい。

 

 その点ではクレイブは正にうってつけだ。

 アンチエイジング技術の発展、遺伝子疾患を含めたあらゆる病気の撲滅、人類への貢献度は多大だった。

 

 クレイブは960歳を過ぎたあたりから完全に寝たきりになり、脳内の情報をコンピューターに移送する装置に繋がった。

 

 964歳。死亡。

 

 リバイブプロジェクトは最終実験に入った。

 リバイブ(revive)=生き返ること。また、生き返らせること。

 

 

 毎週土曜日更新予定

 次回も読みたいなと思えたら五ツ星評価と

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