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昨夜のことが気になっていた二人は、思考がまとまっていませんでした。
「巫女と騎士よ、気になるのであれば会いに行けばよかろう」
「会えるかな?」
「王様、基本的に民のお願いを断らないからな。多分会えると思うぞ」
そうして、あれよあれよという間に事態は進行していき、気が付くと三人と一匹は謁見を許されることになりました。
「作法とか知らないんですけど大丈夫ですかね?」
緊張した面持ちで謁見の間を訪れた三人は、そこにいた華奢なドワーフのご尊顔をやはり美しいと感じ、やはり前日のヴァレリオの言葉が気になっていました。
「あまり顔を見せたくはないが、民の頼みとあらば仕方あるまい。それで何用だ」
「国民じゃないけどね」
「私達はドワーフのみなさんが髭を大事にしていることは聞きました。しかし、髭がないだけでそこまで醜いとされるほどですか?王様の顔は整っていると思うのですが」
王様は自分達とは異なる価値観で褒められても嬉しそうな素振りを見せず、己の立場の不幸を嘆いていました。
「価値観の違いだ。この国に暮らすものはみな己の肉体と髭に誇りを持っている。執務で忙しく、鍛冶や採掘を許される身分でない私は、どうしてもひ弱な肉体になってしまう。だからせめてと伸ばした髭を剃った直後はどうしても気が滅入るのだ」
「それならばどうして王の立場を捨てないのですか?」
「以前、この地位を捨てようとしたものがいたらしい。その者は髭剃りの儀を行わなかった。するとその翌日にかつてない噴火が起き、多くの民が犠牲になった」
自分の先祖の恥ずべき過去を語り合えた王様は、堂々とした態度で前を向きました。
「だから私には逃げ出すことなどできないのだ。私一人の犠牲で済むのならば耐えよう。それにこの立場も悪くない。こんな醜い私をのことを皆慕ってくれるのだ。この国に暮らす民がそう思ってくれる限り、彼らを守るためにできることをするまでだ」
自分を犠牲にしてでも国に暮らす民を守ろうとするその覚悟に、三人とも水を差すことはできませんでした。
しかしフォールだけは、境遇から逃れずに立ち向かえる心の強さに、羨望の眼差しを向けていました。
「すごいですね」
そして、嫉妬と後悔の気持ちを乗せた称賛の言葉とともに、謁見の時間は終わりを迎えました。
帰ってきた三人を迎えたヴァレリオは、やはり王様のことを気にかけていました。
「帰ってきたか、王様はなんて言ってた?」
「こんな自分を慕ってくれてうれしいって」
そんな端折った説明でも、王様の偉大さはヴァレリオには伝わっていました。
「あんな姿になってまで俺達のためを思ってくれるなんて、やっぱすげえお方だな」
いくら説明されても自己犠牲が気がかりなフォールは愚痴をこぼしていました。
「自分の姿が嫌になるくらいなら、髭へのこだわりを捨てればいいのに」
「そんな簡単な話ではあるまい。基本的にヒト属に限らず交尾の目的は種、もしくは子孫の繁栄だ。子孫が子をなすために、己が暮らす文化圏で好まれる異性を選択して交尾するのは当然のことだ。髭に対するこだわりをなくすにはこの国全体の文化が変わる必要があるが、そんなものは到底無理な話だ」
「それならば髭を剃ることを強要されなければあんな思いをしなくて済みますよね。どうして尊厳を踏みにじるようなことを要求されるのでしょう?」
「巫女よ、気になるのならば要求した者に聞きに行けばよかろう」
「「「え?」」」
こうして愚痴をきっかけに、火山に暮らすとされている火の神に会いに行くことが決まりました。




