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リーザロッテ

 メインストリートの中央で発狂した男は、現地に到着した魔術師の手により、催眠魔法で意識を奪われてどこかへと運ばれていく。その一部始終を眺めながら、スレイは疑問の表情でエリナに問いかける


「んで、エリナの種族としての勘が警告するということは余程の術者が後ろに控えているんだろ?それも呪詛を街にバラ撒き散らすような狂ってるやつ」


「そうね、あなたの予想は大体あってるように感じるけど、相手が人間や亜人だけとは限らない。より高位の存在って可能性も否定できないわね」


 一体、何の目的でこんな事を?

 口元に手を当てながら、疑問を解く為に状況を分析していくが、判断材料が少ない。エリナといえど、頭を振って降参してしまう。


「ダメね、根本的に情報が少なすぎるし、あの手の術は私の専門外。ミリシャがいれば術の特定くらいならなんとかできそうだけど…リオン、ほかに情報はないの?」


「正直なところ、全身をつなぎ合わせた人の形をした《《何か》》が徘徊していている場所で目覚めて起きるまで抜け出せない以外、詳しい内容を教えてもらっていないんですよね」


 スレイは、内心その何かって何だよと心の中で呟きながら、目の前に見えてきた魔術学園に視線を向ける。

 校舎まで続く歩道を彩るように雲一つない晴天の中を淡く白い花を咲かせ彩る木々。レンガ作りの刻印魔法の施された敷地を覆う外壁と校舎へと招き入れる門からは、どこか威厳のようなものすら感じさせる。


「ここが噂の魔術学園ってやつか」





 魔術学園は、魔術の才を持った人材を育成するために異界からの英雄の仲間であった魔術師が設立した国家に所属しない教育機関と研究機関の側面を持つ組織。現在も初代の長の名の下に都市全体が1つの独立したコミュニティとして機能しながら、過去にこの世界から失われた魔術体系の復興や研究を続けている。


 城壁の如き壁に覆われた限られた土地の都市であるが、元々遺跡として作られていた場所をそのまま再利用しているため、見た目よりも機能的な都市開発が行われている。


「ようこそスレイさん、エリナさん。ここが、私たちの通うローエン・クラスティア・ベルーゼ魔術学園です」


 入り口の前で両手を広げながら、スレイとエリナを迎え入れるサリア。彼女のオーバー過ぎる歓迎に軽い足取りで敷地内に入り、リオンの先導で彼らの担当がいる研究塔へ歩を進めていく。


 お昼時の時間もあって、制服姿の学生達とすれ違うが、サリアとリオンのようなローブ姿の学生と冒険者の服装に武器を携帯した人間とエルフが歩いている状況。良くも悪くも悪目立ちしてしまう。


「しかし、目立って仕方ないなぁ…」


「私たちは、ここの学園生徒ってわけじゃないから仕方ないわ。見世物じゃないんだから好奇な視線は勘弁してほしいわね」


 周囲の生徒から向けられる好奇な視線に根を上げたエリナは、嘆息する。生徒から向けられる視線の殆どは、彼女に向かっている。男子生徒の視線が多い辺り、悩ましい青少年には彼女の存在は目の毒にしかならないだろう。


「エルフが森から出てきているってのも珍しいし、カジュアル系の服着てたらそりゃー目立つよな」


「それはいうなら、あなたのハルバートも似たようなものじゃない」


 スレイは、肩に担いだハルバートにちらっと見て、困ったような顔で頭をかきながら、瞼を閉じる。


「ハルバートってそんなに目立つのか?フルプレートじゃあるまいし…」


 エリナは何度か瞼を繰り返して、苦笑する。


「十分、目立つわよ。主に騎士の儀礼用として使われるようなものじゃない」


「いやいや、実に機能的で尚且つ美しさを両立した素晴らしい武器なんだぞ。わからないかなぁ…使い手さえよければ、その要求に幾らでも答えてくれる最高の武器だぞ?」


 スレイは、エリナから向けられた苦笑にムッと眉をひそめながら怪訝そうに答える。彼にとって、ハルバートはこの世界でもっとも信用のできる武器。儀礼用だけで終わるような武器ではない。


「私が話したのは一般的なこと。私はあなたの隣で戦ったんだから、どれだけの実力者か理解してるけど、周囲はそれを知らないから好奇な目で見るわよって話よ」


 良くも悪くも愛着や信頼を置いている物には単純、もしくは短絡的になってしまう男は、


「なんてこった、それは嫌な世界だ」


 スレイが頭を抱えているとスレイたちの前方から二十代になったばかりのような女性が駆け寄ってくる。

 黒スーツの魔術礼装の上に白衣を身にまとい、手には分厚い魔導書を束にして持っている彼女は、わずかに息を切らしながらサリアとリオンに声をかける。


「おかえりなさい。二人とも実地は、無事に終わったのね」


「サリアとリオン、ただいま帰還しました!先生は元気にしてました?」


 サリアは、駆け寄った教師に抱きつきながら、彼女に報告を始める。

 笑顔を振りまきながら、しがみつく姿はまるで、犬のようだと思ったスレイは、思わず苦笑してしまう。


「サリアさんは相変わらずね…。リオン、ヴァイス君は元気にしていたかしら?」


「えぇ、ヴァイス先輩は先生の言うとおり、凄い人なのに残念な人でしたね。でも、実地でしか学べないことを多く学ばせてもらったので価値のある遠征でした」


「得たものがあるならなによりね。ところで、そちらの二人は…?」


 戸惑いの視線を向ける教師にスレイは、ハルバートを地面に突きたてそつのない挨拶を返す。スレイも武器を担いだまま挨拶をするほど、礼儀を知らないというわけではない。


「はじめまして、アスタルテ所属の専属冒険者のスレイです。エルフの彼女は、補佐のエリナ。今回は、二人の旅の安全を守る為の護衛として、こちらのフォーマルハウトの街へ同行しました」


 スレイは、懐から白金のギルドカードを取り出して、自身の身分を明かしながら自己紹介を済ませる。


「これはご丁寧に、私はサリアとリオンたちのクラスを担当しているリーザロッテといいます」


 くすみのない見事な銀髪を揺らし、軽く一礼するリーザロッテと名乗る彼女。

 魔術礼装の上に白衣を身に纏っていても、はっきりと分かる豊かな身体。歳の割りにかなり豊かなサリアやエリナのそれを上回るスタイルを誇っている。


「ところで、堅苦しい敬語は止めても構わないか?」


「わざわざ聞いて来るなんて律儀なんですね…構いませんよ」


 リーザロッテは、苦笑しながら了承する。苦笑する姿も絵になるような彼女の姿にスレイも思わず目を奪われかけるが、隣から来る獅子の眼差しに耐えかねて、そっと目を逸らしながら話題を逸らす。


「眼鏡…随分珍しい品を使っているんだな」


 彼女の掛けていた赤いフレームの眼鏡。この世界での眼鏡の普及率は低く、基本的に一般には出回らない上に殆ど認知もされていないマイナーな品。

 スレイの反応にリーザロッテは、少々驚いた表情を見せる。


「これをご存知なんですね。実はここで発見された失われた時代の品で、なにかと重宝する効果があるので研究もかねて装備しているんですよ」


 人差し指で赤い眼鏡の端をくいっと上げる姿からは、見た目よりもずっと幼く見えてしまう。端正な顔立ちとスタイルのよさ、あざとさを感じさせない幼い仕草の二重のギャップが生み出す破壊力。

 これにはスレイも溜まらず、次の話題を切り出した。


「なるほど…と、とりあえず依頼書にサインもらっても構わないか?護衛を達成したって証明が一応必要なんでな」


 リーザロッテは、スレイから手渡されたギルドから発行される依頼書に手早く自分のサインを書き終わるとスレイに返却する。


「これがないと依頼を終わらせたことにならないから助かる」


「護衛のお仕事ご苦労様です。あ、そうだ…!よろしければお昼をご一緒しませんか?折角二人も怪我なく無事に帰ってきたことですし」


 リーザロッテの提案に顔を見合わせたスレイとエリナ。


「私は構わないわよ?スレイはどうするの」


 ヴァイスからの"お使い"の都合上、魔術学園の教師から直接話を聞く必要があるスレイたちにとって、直接話を聞く時間を作ってくれるというなら、それに越したことはない。スレイは二つ返事で了承する。


「俺も構わない。なにより、"多少"聞きたいこともあるから願ったり叶ったりってやつだな」


「聞きたいこと…ですか。もしかして、ヴァイス君が関係してたりしますか?」


 含みのある言葉にすぐに察したリーザロッテ。スレイは、流石ヴァイスの後輩というだけはあるなと内心、彼女に対する評価を上げながら、


「詳しい話は後で話そう…なんというか、長話になりそうだが時間は大丈夫か?」


「えぇっと…大丈夫です」


 リーザロッテは、スケジュール帳をわたわたと確認し終えるとスレイに静かに頷いた。その姿にやはり、見た目とのギャップを感じてしまうスレイだった。

えんてーのホワイトデーだけ書き下ろされてるの見て、ときめた私です。

というか鎖につながれてる青い人を開放してあげて!( ゜Д゜)


あ、また新キャラが出てきました。

ヴァイスの後輩、サリアとリオンの先生です。

次の話でプロフィールとかだしたいです。


次回、久々の食事回。

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