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ゲヒュール3  作者: スペクトラム


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9/20

能力

施設長は、かつてフェレライと交戦したときのことを思い返していた。


あの戦闘には、今でも理解できない点がいくつもある。


(まず、一つ目)


戦闘が長引き、フェレライがマーキングしていた領域から離れたときのことだ。


明らかに、二十メートル以上離れた場所からの攻撃に対する反応が鈍くなった。


通常のゲヒュールと同じく、感情を認識できる範囲には限界があるのだろう。


つまり、マーキングによる感情認識は、無制限に機能するものではない。


(次に、二つ目)


フェレライの攻撃についてだ。


あれは、おそらくイメージを現実に植え付ける能力だ。


一見すれば、何でもありの無法な能力に思える。


しかし、実際にはそうではない。


(三つ目)


斬る動作や撃つ動作など、攻撃に対応した動作を必要としていた。


おそらく、現実に植え付けるイメージを強固にするためだ。


イメージが曖昧なままでは、能力が成立しないのだろう。


(四つ目)


動作による制約そのものは、取り除くこともできるはずだ。


だが、その場合は膨大な魔力を消費することになる。


燃費が悪すぎる。実戦で扱うには割に合わない。


だからこそ、フェレライも動作を省略しなかったのだろう。


(五つ目)


フェレライは、槍を投げる動作をしていた。


大量の魔力を消費しながら、あえてその動作を省略しなかった。


それによって、通常の物理現象としては成立しない攻撃を、現実に植え付けていたのではないか。


(六つ目)


フェレライの攻撃には、重さがなかった。


貫通する現象や、斬られる現象は発生する。


しかし、武器で受け止めても、衝撃で吹き飛ばされることはなかった。


そもそも、実体のない武器に重さなど存在しない。


持っていないものの重さを現実にする。それ自体が、イメージとして破綻しているのだろう。


(七つ目)


再現できる現象にも限界があるはずだ。


おそらく、ある程度の知識を持ち、具体的にイメージできる現象しか再現できない。


例えば、毒ガスのような複雑な現象は起こせないのではないか。


……いや、そもそも、本人がその現象を正しく理解していなければ、イメージを成立させることすら難しいはずだ。


施設長は、そこまで考えて目を開いた。


そして、静かに呟く。


「勝てないよなぁ……」

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