帰国、そして……
大型船の研究船パーズには、乗組員も含めて、総勢1500名が乗船していた。
しかし、生き残ったのは、200人程度である。
一方で、水素爆弾で攻撃されて、これほどの人数が生き残ったこともまた奇跡ではあった……。
のちに、この船は奇跡の船と称されることになるが、当人たちにとっては、それはどうでもよいことだった……。
失ったものは大きかった。
中央の展望台の周辺を残し、船は全焼した。
パーズの中央部分に部屋があったものだけが、生き永らえた。
沖田船長は、なんとか船から救助信号を出した。
そして、研究船パーズは、ロシアの軍隊に救助された。
大破した研究船パーズは、ロシアの大型船数隻に牽引され、日本にたどり着いた。
生き残ったもの、また、亡くなったものの亡骸と一緒に……。
博士たちは、千葉の房総半島の先端にある臨海実験センターにいる。
半年ほど前に博士たちがいた臨海実験センターに戻って来たのだ。
今度は、人数が少ない。
大城戸一家とさーべるちゃん、そして、ウェイである。
ウェイにとっては、初めての日本であった。
「Anyway, we should be happy that the eveka was safe, and pray to good wish of its baby. (とりあえず、イブカが無事だったし、この赤ん坊が無事に生まれることを祈ろう)」
イブカは、大型水槽に入れられた。
「Yeah. (はい、わかりました)」
臨海実験センターに設置された大型の水槽は、研究船パーズ内のイブカの飼育室にあった水槽よりも大きい。
これから生まれてくるイブカの赤ん坊と、博士たちが作る予定のクジラの赤ん坊の飼育にも十分なほどの大きさである。
以前よりも大きくなった水槽の中で、イブカは元気に泳いでいた。
レイアは、センターの宿泊施設の部屋にいた。
まだ心の準備ができていないので、休暇中だ。部屋でぼーっとして過ごしている。
「Phew (ふぅ……。)」
レイアは、ため息をつきながらも、気分転換のために、テレビのスイッチを入れる。
しかし、チャンネルを変えても、どの局でもニュースばかりやっていた。
北極海での核爆発は、世界中で議論になっている。
核保有国は限られている、そのどの国もが、自分の国では無いことを主張していた。
アムルの稲妻で墜落した戦闘機は、ロシア政府によって回収されたが、その戦闘機の国籍は不明であった。
どの局でも、大破した研究船パーズの映像を繰り返し流していた。『奇跡の船』という呼称を使って……。
そして、専門家と呼ばれるコメンテーターたちが、しきりに『核戦争』という単語を飛び交わせていた。
どの局も、どの局も、そればかりだった。
「Phew (ふぅ……。)」
レイアは、ため息をつきテレビを消す。
シンシアは、レイアの横に座って大人しく本を読んでいた。その足元ではさーべるちゃんも横になっている。
さーべるちゃんは、尻尾を時折動かしてはいるが、元気がない。
はしゃいではいけない空気を感じとっていたのだ。
「ママ……。」
シンシアは、ため息をつくレイアの横顔を眺める。
シンシアも、落ち込んではいた。
神の力を持ってしても、周りの人間を救えなかったのだ。
かつて海神ポセイドンを消失させた悪魔の兵器に、もう一度苦しめられることになるとは、考えてもいなかった。
1度目は知らずにやられたが、2度目は、耐えた。
ただ、無傷で耐えた訳でもない。爆弾は、もう一度海神ポセイドンから多くを奪っていった。
(あぁ、俺が、爆弾をすぐに撃ち落とせて入れば……。)
アムルもまた、力の無さを悔やんでいた。
2回とも、何もできなくて、傍観していただけだったのだ……。
いつも応援ありがとうございます。
おかげさまで無事に2章が終わり、今回からは、『2.5章 臨海実験センター編2』です。そして、『3章 南極大陸編』に続きます。
いつも感想を書いていただきありがとうございます。励みになっております。
2章の終わり、どうでしたかね?
また感想をいただけると幸いでございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
幸田遥




