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月と海のリザレクション〜海神ポセイドンの幼女転生〜  作者: 幸田遥
第2章 大西洋航海編

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残されたものと失ったもの


「耐えた……?」


 シンシアは、両腕をだらんと下ろしながら呟いた。


 空は蒸発した海水と、爆風の残りで、異様な熱気に包まれている。



「アムル、これをなんとか……」


 シンシアは、アムルに視線を送る。


(わかった。これくらいなら、簡単だ……。)


 アムルは、雷雲を集め、あたりに雨を降らせ始めた。そして、ついでに、稲妻で飛行機を撃ち抜いておいた。


 これは、せめてもの反撃だ。



 炎をあげる研究船パーズを、アムルが呼んだ雷雲の雨で、鎮火していく。




「助かったのか……? あいつら、頭おかしんじゃねぇのか、水素爆弾なんてもの、使ったらどうなるか、わからないのか……?」


 豪雨の中、博士は呟く。


 4人と1匹は、豪雨の中、ただそこに立ちつくしていた。



 博士たちはなんとか爆発の直撃は避けていた。

 シンシアが、海水の柱を盾にして、守ったのだ。


 しかし、シンシアが海水の柱を作り出して、爆風を防げたのは、この周りの十数メートルだけだった。


 海神ポセイドンの力を持ってしても、それが限界だった。



 展望台は、無事だ。しかし、研究船パーズは大破していた。



「なんてこった……。」


 蒸発した海水の白い濃厚な霧が晴れていくと、黒焦げの残骸となった部分があらわになった。


 博士たちの目の前には、直視したくない現実が広がっていた。



「くそう、なんで、あいつらはこんなひどいことを……。」

 博士は、右手をグッと握りしめた。

 大粒の水滴が、右腕から流れてゆく。





 展望台の下だけは比較的無事だった。

 そして、パーズの船体の中腹にいた人たちの中には、無事な人もいる。




 操舵室は半壊していた。

 しかし、操舵室の後ろ側は、無事だ。


 沖田船長は、左手の感覚を失いつつも、なんとか一命をとりとめていた。


 左手は焼けていた。だか、体の他の部分は無事だ。

 左手には痛みがあるはずだった。だが、その痛みは、感じなかった。



 目の前の光景に意識を奪われていたからだ……。



「佐伯! 山本! おい、返事をしろぉぉ!」


 船長の目の前には、数分前まで山本操舵手と佐伯航海士だったものだけが残っていた。



 ボゴッツ


 ボゴッツ


 ボゴッツ



「どうして、こんなことにっ……。」


 沖田船長は、右手を握りしめ、床を全力で殴った。


 何度も、何度も……。

 目に、涙を浮かべながら。






 『イブカ』の水槽部屋は、運よく、無事だった。

 その部屋が、研究船パーズの真ん中にあり、展望台の下にあったからだ。



 この部屋にいた、ウェイも無事だった。


 博士がその部屋を見に来たとき、ウェイは、部屋の真ん中で震えていた。


「Oh my god, professor Hiro. I am glad you are fine. There were horrible fire,but ‘eveka’ and I have been safe. (あぁ、博士。ここです、無事でよかったです。すごい火事でした。死ぬかと思いました。でも、私とイブカは無事です)



「OK. Wei, I am happy too that you are fine. So, anyway, do you know how Shinichi and Ashley are going. (ウェイくん、無事でよかった。久保くんとアーシーは?)」



「I have no idea. (わかりません……。)」


 ウェイは下を向き、首を振る。





 大城戸研究室の実験室は、無残だった。



「久保くん? アーシー?」


 博士は、大声を出す。


 博士の声はかろうじで部屋の形を保っている空間の中に、虚しく響き渡った……。



 返事はない。



「久保くん! アーシー!」


 博士が何度叫んでも、やはり、返事はなかった。



 実験室にあった機器と器具は、焼けて炭になっていた。

 インキュベーターも、その中まで焼けていた。焼けて、割れたガラスビーカーだけが、インキュベータの中に並んでいた。



「ふっ……。」

 博士は、小さくため息をつく、もちろんこれも大事だが、生物はまた作り直せばいい……。


 時間はかかるが、また同じことを繰り返せばいいだけだ。


 それよりも……。



 そして、信一の実験机の横を通ったとき、博士は見つけた。


 かつて久保信一とアーシーだったものを……。

 2人はそこに、手を繋いで並んでいた。



「久保くん……。アーシー……。」


 博士は、大きなため息をついたが、涙をぐっとこらえる。

 まだ、泣く時ではない、と。



 博士は、実験室を後にし、居室に向かった。


 そこも無残だった。



 博士たちが住んでいた居住部屋にも、足を踏み入れる。


 もちろん、そこも、無残な姿になっていた。

 全てが、焼けていた。



 ソファーの横の小さなテーブルの上には、家族4人で撮った記念写真が飾られていた。

 もちろん、それも、焼けていた。


「ふぅ……。失ったものは多いな……。」

 博士が、その写真立てを持ち上げると、その写真は、さらり、と砕け散る。



 博士は、もう一度、大きくため息をつく。


 そして、悔しそうに、右手で頭を抱えた……。




 ポト



 床に落ちたのは、一粒の大きな涙だった。







第2章 大西洋航海編 (完)


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i488219
秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

i493381
砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 第二章完結おめでとうございます。 [一言] 水爆の威力は凄いですね (;'∀')
[一言] うぉぉぉぉお!!!(号泣) 久保くん! アーシー……! 山本さんに佐伯さーーーん!!!! やつらめぇぇぇっ! なんと酷いことをっ!!!!
[良い点] そんな……久保くん……。アーシー……。
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