北の海で
研究船パーズは、北極海をまっすぐに北極点に向かっていた。
北極点を目指し、そこから南下して、日本へと向かうのだ。
研究船パーズは北を目指している。辺りには、何もない。
1機の大型飛行機がパーズの上空を飛んでいた。
研究船パーズの操舵室では、沖田一二三船長が船長用の椅子に座り、外を眺めていた。
「飛行機か、珍しいな」
沖田船長は、声を出す。戦闘機に似た大型飛行機がパーズの方に向かって近づいてくるのが見えたのだ。
「あの航路はおかしいな、こちらに直進しているようだ、佐伯! レーダーは?」
「飛行機が1機ですね。国籍は不明です。嫌な予感がしますね……。」
佐伯航海士が言う。
「胸騒ぎがするなぁ……。よし、大事をとる。総員、第1種戦闘配置!」
沖田船長は、低い声で言う。
「沖田船長! こんな時に冗談を言っている場合ですか、なんですかその配置は?」
航海士の佐伯が言い返す。
「大丈夫だ、佐伯。本船には女神が乗っているのだ。早く、乗客に周知だ。ひどい胸騒ぎがする」
沖田船長は、冷静な声で、佐伯航海士に言う。
「はい!」
佐伯航海士が、非常サイレン用の赤いボタンを押した。
ウウゥゥゥゥー!!!
サイレンの音が、パーズ船内に響きわたる。
「非常事態です。国籍不明の飛行機が1機、本船に接近しています。各自部屋に戻り、部屋に待機してください。念のため、衝撃に備えてください」
「飛行機が1機だと? シンシア、嫌な予感しかしないよ。あれが『シーピーズ』の飛行機だとしたら、もしかしたらもしかするよ。急ごう」
博士たちは、展望台へと急いだ。
シンシアとアムルは、それぞれ神具を持っていた。
神具トライデント神具ケラウノスだ。
シンシアと博士とレイア、アムルの4人が展望台にいる。そして、さーべるちゃんも一緒だ。
博士は、オペラグラスを構えた。
パーズのはるか上空に、大きな戦闘機が飛んでいるのが見える。
「どう見ても普通の旅客機ではないよなぁ……。あっ!」
博士の視線の先で、その飛行機は、何か大きな爆弾のようなものを落とした。
「おい! バカじゃねぇのか?」
博士は叫んだ。
その飛行機が、落としたのは、爆弾だ。
そう、水素爆弾である。
「アムル、うちおとせるか?」
水素爆弾は核融合が始まる前に打ち落とせば、爆発はしない。
爆弾の中の放射性物質こそ飛び散るが、爆発の被害を最小限に済ませられる。
(えぇ、無理だよ。そんな急には)
アムルは首を振った。
大きな雷を打つには雷雲を準備する必要がある。爆弾を撃ち落とすほどの雷は準備なしでは打てなかった……。
「くぅ……、落ちてくる。やばい、シンシア!」
博士は叫ぶ。
もう、爆弾は落とされた。あとは、それがいつ爆発するかの問題だ。
残された猶予は、数秒だ……。
「えい!」
シンシアは、神具トライデントを握りしめ、全力で海水の柱を作る。
バシュー
バシュー
バシュー
強大な海水の柱が海水面から現れた。
「爆発するぞ! 防げるか? シンシア?」
「やってみる!」
バシューーーーー
海水の柱を一本にまとめ、その爆弾に向けて海水の柱を伸ばす、パーズを海水の柱の影にするように……。
ピカッ
ドゴーーーーーーーン
水素爆弾はパーズの上空で爆発した。
爆風と熱風が瞬時にパーズに降り注ぐ。
シンシアは、水で柱を作り、パーズを守る。柱のてっぺんの海水はみるみるうちに蒸発していく。海面から必死に、水を汲み上げつつ、熱風に耐える。
「やばいぃぃ……。」
「シンシア! 頑張れ。頑張ってくれ!」
博士たちは、水の壁に囲まれている。海水の柱は、壁になり、空に向かって伸びていた。
水流が下から上へと登っていくが、海水と爆風が触れ合うところでは、ジュワーと音を立てて、海水が蒸発してゆく。
どれくらいの水を海面から吸い上げただろうか、シンシアには、わからなかった。
ただ全力で、海水を目の前に集めていた。




