技術補佐員アーシーの休日
研究船パーズがニューヨークに滞在中は、博士たちは研究のペースを少し落としていた。
そして、技術補佐員のアーシーは休みをもらっていた。
せっかくのニューヨークだから、街を楽しんでおいでと、博士に言われたのだ。
研究船パーズは、ニューヨークに1週間ほど停船する。
アーシーにとっては、1週間の中期休暇だ。
久しぶりの陸地を満喫するために、アーシーはマンハッタンの中心部に来ていた。
そして、ここはニューヨークの中心でもあり、世界の中心でもある。
「Wow! It is THE famous times square. (わぁ、ここがあの有名なタイムズスクエアね)」
地下鉄の駅から地上に上がると、テレビや雑誌で見たことのある有名な街の風景が広がっていた。
アーシーは少し興奮気味にあたりを見回す。
キョロキョロとしながらも、人の流れに乗って道を歩く。
金髪青目のアーシーもこの街では普通である。
と言っても、このあたりでは色々な人種の人々が歩いており、日本でいうところの普通という感覚は薄い。
「Anyway, I wanna eat something good. (さぁてと、とりあえず、何か美味しいものでも食べようかなぁ〜」
アーシーはちょうど目に入ったハンバーガーショップに入ってゆく。
そして、そこでオニオンリングバーガーを注文した。
普段ダイエットをしているので、こういう時にこそ存分に食べるのである。メリハリが大事だ。
アーシーの目の前に運ばれてきたのは、オニオンリングバーガーだ。
いわゆる普通のハンバーガーの上にオニオンリングが3つ、山積みにされている。そしてバンズの間にも1つ、パテの上に挟まれている。
存在感のあるハンバーガーだ。
これこそが、ザ・アメリカンだ。
「いただきま〜す」
日本語で会話をするシンシアちゃんとよく一緒にお菓子を食べていたので、アーシーもご飯の前には、いただきますと言うのだ。もちろん、日本語で。
アーシーは、ハンバーガーにかぶりついた。
もちろん、オニオンリングを横によけてからだ。
「Wow! It’s so good! (うん、美味しい)」
イギリスのバンズと違って、アメリカのバンズには味がある。パテも美味しい。ジューシーな味がする。アメリカのバーガーはイギリス人のアーシーにとっては、すごく魅力的なのだ。
アーシーは、ハンバーガーに舌鼓を打った。
窓の外では、ひっきりなしに人が歩いている。
研究船パーズでは、いつも同じ人にしか会わない。
船の中で一ヶ月に会った人の百倍くらいの人と、今日、すれ違った。
それだけでも、刺激的だ。
「OK! I am full, so let’s go to shopping. (さて、腹ごしらえも済んだし、まずは、お買い物でも行きますか)」
アーシーは、このタイムズスクエアの他にも、明日から、自然史博物館や美術館などの名所を観光する予定だ。
1人で色々なところに遊びに行くのだ。
1週間の休日など、あっという間だ。
一方で、人が少なくなった研究船パーズ内の大城戸研究室の実験室では、久保信一はいつものように普通に実験に精を出していた。
実験室を独り占めしていた。




