神の山 ウルル
ポートオーガスタからさらに丸一日がかりで運転し、博士たちは、エアーズロックのある、ウルル・カタジュタ国際公園についた。
ここは人気の観光スポットであり、観光客がちらほらいる。その上、公園に入るには入園料が必要らしい。
「地母神ガイアに会うために金がいるとはな」
博士は、ぶつくさ言いながらも、人数分の入園券を買った。
周りは見渡す限り草原である。
所々に、2メートルほどの木がポツポツと生えていた。
茶褐色の土の上に、緑と黄緑の細長い草が生えている。周辺を見渡しても、どこも同じような風景だ。
前方に広がる岩山も、茶褐色だ。岩山というより、土の山みたいである。
「どうする? 登るのは禁止されているから、とりあえず、できるだけ近くに行こうか?」
博士は大きな岩山、エアーズロックを見上げる。
「うん」
シンシアは頷いた。
博士たちは、エアーズロックの近くに来た。
そこには、ロープが張ってある。これより先には入れないらしい。
「シンシア、ここまでしか入れないらしい。どうだ? この近くにガイアはいそうか?」
「うーん、この山じゃないかなぁ、何も感じないよね。ねぇ、アムル」
シンシアは、アムルの方に目をやる。
アムルは博士の背中におんぶされている。
(俺も、何も感じない。少なくとも、この岩山からは、ガイアの気配は感じないな)
アムルはシンシアと博士の脳に語りかけた。
「うーん、ここじゃないとすると、困ったなぁ」
博士は、首をかしげた。
オーストラリアで神聖な場所は、他に心当たりがない。
一番の有力候補だった場所が、ハズレであった。
夜になった。
博士たちは、ここ数日の間、車の中で寝泊まりをしている。
博士とシンシアは、車の外で、空を眺めていた。
空には満天の星空が広がっている。
360度見渡す限りの星空だ。
「すっごく綺麗だな、やっぱり自然がいっぱいの空の方が綺麗なんだな」
「うん、お月さまもきれいだねぇ」
シンシアも、空を眺めている。
建物の明かりはない。
光っているのは、星と月だけだ。
月は満月に近く、ほぼ丸い形をしている。満天の星々の中で、ひと際明るく輝いている。
ウォー
ウォー
と、鳥の鳴き声が車の周りに聞こえてきた。
「これは、エミューの鳴き声だね、しかも、オスの鳴き声だね」
博士が言う。
さーべるちゃんが、その声に反応する。
バウー
バウー
と、さーべるちゃんの大きな鳴き声が、車の中から聞こえる
「こらこら、さーべるちゃん、ダメだよ、うるさくしちゃ。みんな寝ているから」
シンシアは、車の中で鳴きだしたさーべるちゃんを落ち着かせる。
ぼん ボボン
ぼん ボボン
と、鳥の鳴き声が車の周りに聞こえてくる。
「これも、エミューの鳴き声だね、こっちはメスの鳴き声だね」
博士が言う。
車の周りには、数羽のエミューが寄ってきている。車が珍しいのであろうか。
「えっ? パパ! なんだか、あの鳥にガイアちゃんの気配を感じるんだけど……。」
数匹のエミューがあたりをうろうろしている。
シンシアは、そのうちの一羽の鳥を凝視する。
「なぁ、アムル、どう思う?」
シンシアが、車の中を覗く。
アムルは、パチリと目を開け、車の天井を見ている。
アムルも何かに気が付いているようだ。
(兄者。俺も確かに、ガイアの気配を感じる)
アムルは、博士とシンシアに脳波を送る。
「本当か? じゃあ、あの鳥がガイアなのか?」
博士は驚き、車の周りにいるエミューを見渡す。
「わからない。わたしが以前に会った時には、もっと大きな鳥だったんだ。でも、ずいぶん昔のことだからなぁ。でも、ガイアちゃんの気配を感じるのは本当」
シンシアはしばらく、エミューを眺めていた。
ぼん ボボン
ウォー
ぼん ボボン
ウォー
エミューたちは車の周りをしばらくウロウロしていた。
しばらくすると、エミューたちは、いなくなっていた。車の周りには、再び静寂が訪れた。
「よし、シンシア。明日、エミューを探してみるか?」
「うん」
博士とシンシアは、車に戻った。
「何やら懐かしい気配を感じたのじゃがのう」
エミューの群れの中で、1羽のエミューがポツリと呟いた。




