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月と海のリザレクション〜海神ポセイドンの幼女転生〜  作者: 幸田遥
第1章 太平洋航海編

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バトルシップ


 シンシアは、太平洋に浮かんでいた。




 研究船パーズは海水の水質検査のために、時折、海上で停船する。



 シンシアは、その時間に、いつものように海水浴を楽しんでいた。


 赤道に近づくに連れて、気温は上昇してきている。

 絶好の海水浴日和だ。シンシアは、体全体で波を感じ、体全体で太陽の光を感じていた。どこまでも水平な海に水平になり、一体化している。今日はちゃんと白ビキニに着替えて海に入っていた。




 さーべるちゃんは、犬かきだ。


 空を見上げてゆったりと浮かんでいるシンシアの周りでは、さーべるちゃんが泳いでいる。バシャバシャと波を立てながら、海の上を縦横無尽に泳ぎまわっている。泳ぎが得意なゴールデンレトリバーは、数時間でも泳ぎ続ける。




「さて、これから、どうするかなぁ」


 シンシアは、頭の中で考えを巡らせていた。


 トライデントを手に入れ、自分の力でなんとか魚は生み出せた。しかし、数匹の小魚が限界である。大型の海獣や哺乳類を生み出すにはさらなる力が必要だ。将来的には、ガイアに会いに行くことも考えたい。昔、一緒に生物を作ったように、ガイアの力を借りれば、さらに色々と作り出せるかもしれない。



 シンシアは、海の表面で、大きく背伸びをした。

 水を操って自分を浮かせているので、どんなポーズをしても沈まない。海神ポセイドンの特権である。




 ふと、シンシアは視界の端に、大きな軍艦を見つけた。青い綺麗な海にそぐわない灰色の大きな軍艦である。



「また?」


 不審な軍艦である。

 まっすぐにパーズの方に向かってくる。たまたま近くを通っただけの軍艦ではなさそうだ。




「後ろから追ってきた?」

 シンシアの頭に、疑問が生じる。


 これまで、研究機関パーズは、2回、海賊に襲われた。


 1回目はシンガポールに着く前で、2回目はオーストラリアに着く前であった。

 その2回とも、船は普通の船であった。要するに、それらは軍艦の類ではなかった。

 しかし、今回は軍艦である。パーズが本当に狙われているとしたら? 海賊に襲われたのが偶然でなかったとしたら?




 シンシアが、軍艦を眺めながら思考をしている間にも、軍艦は近づいてくる。

 停船中のパーズに向かって直進してくるのだ。



 研究船パーズの中から、非常サイレンが聞こえてきた。パーズの船長も、あの軍艦を、不審な船と判断したようだ。



 シンシアは、海の上で、起き上がる。


「さーべるちゃん、ちょっと、危ないから下がっていて」


 犬かきで泳ぐさーべるちゃんの下の海面から、海水の柱ができる。その柱は、さーべるちゃんをパーズの甲板へと運ぶ。

「くぅーん」

 海水の柱の上で、さーべるちゃんは大人しく海水に身を任せていた。




「よし」


 シンシアは、距離を詰めてくる軍艦を睨みつける。




 ドーーン


 その時、軍艦から大砲が発射された。シンシアは思わず、目を丸くする。

 打ち出された大砲の弾は、まっすぐにパーズに向かう。



「発砲した?」


 シンシアは、すかさずパーズの前に大きな壁を作り出す。


 バシャーン



 大砲の弾は、海水の壁に捕らえられ、失速した。弾はそのまま、海に沈んでいく。



「あいつらは、どうしてもこの船を沈めたいらしいな」


 パーズは大型船である。


 数発の砲撃くらいなら大丈夫かもしれない。しかし、何発耐えられるかは不明だ。

 しかも、攻撃手段を持たないパーズには反撃は不可能だ。いざとなれば、逃げるしか選択肢はない。いざとなれば、だが。




「ならばこっちも、手加減なしだ」



 シンシアは海面に立ち上がる。足の裏に水を集め、海水面に体を持ち上げた。これはただ、雰囲気を出すためである。




 ドーーン


 軍艦は再び発砲してきた。





「ふん」


 バッ、シャーー




 もう一度、海水で壁を作り、砲弾を受け止める。

 その流れで、壁から、海水の塊を飛ばす。



 バシャー



 軍艦は海水にまみれながらも、進路を変えない。

 軍艦の甲板には誰もいない、船首に備え付けられた大砲をパーズに向けながら、前進してくる。

 戦争用に作られた軍艦の装甲は、海水程度ではビクともしないのだ。




「ほぉ、なるほどね。さすがは軍艦ね。ちょっとやそっとの水くらいでは効かないってね。じゃあ、それ」



 シンシアは、軍艦の下に海水で、柱を作る。船の右側だけに。



「て、い、やー」


 そして、その海水の柱を大きく天に伸ばす。



 ジャバーン




 大きな波と共に、軍艦は大きく傾き、そして、ひっくり返った。

水しぶきが、軍艦の周りを包み込む。


 軍艦も、ひっくり返されては、ただの灰色の鉄塊である。何もできない。

 船底を空に向けて、海上にプカプカと浮かんでいる。



「これで、終わりね。わたしと張り合いたかったら、最低でも空母くらいは持ってくるのね。ははは」

 シンシアは、鉄塊を一瞥し、声を上げた。



 海神ポセイドンの前では、一隻の軍艦など、取るに足らない相手だった。





 パーズは緊急発進した。

 シンシアは、海水の柱を使い、パーズの甲板に戻る。



 甲板には、博士とレイアがいた。

 さーべるちゃんが、2人を迎えに行ってくれたようだ。



「シンシア、無事か?」

 博士は大きく手を広げ、海水の柱の上のシンシアを抱きかかえた。


「Are you fine, Cynthia? (大丈夫? シンシア?)」

 レイアは、シンシアの頭を優しく撫でる。

 シンシアの髪はすでに、乾いていた。このあたりは、太陽の光が強いのだ。シンシアが軍艦を転覆させる一瞬で、乾いてしまった。




「また、か? シンシア、どう思う?」

 博士は、海面に浮かぶ灰色の鉄の塊を眺めている。

 波も収まり、何事もなかったかのように、それは浮かんでいた。



「狙われているね。わたし? かなぁ?」

 シンシアは、博士に顔を向ける。

 博士の黒い瞳に、空と海の青が反射している。



「いや、どうだろう。そうかもしれないし、この船が狙われているだけかもしれない。どちらにせよ、今後も気をつけた方がいいな」

 博士は、ずっと遠くを見つめていた。

 ふーっ、と小さく、博士は息を吐いた。




 研究船パーズは、北アメリカに向けて進行中である。

 赤道に差し掛かる、南半球の海での出来事だった。


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i488219
秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

i493381
砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 凄いですね (*´▽`*) 戦艦撃沈☆彡
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