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♂1:♀1:不問0
田口 弘夢 ♂ セリフ数:16
〈自分の事を出来損ない、と卑下する青年。幼い頃についた、くだらない嘘を誰かに明かしたかった〉
音狩 舞鈴 ♀ セリフ数:16
〈聡明な女性。男勝りな一面もある。物書きとして“それなりに”有名だと自負している〉
[あらすじ]《4分半程度》
「話を聞いてくれませんか」
いつも隣でウジウジと考え込んでいる後輩が唐突にそんな事を言う。珍しい。そう思った私は好奇心を隠さずに「何だ」と答えた―――。
【田口 弘夢】
アボカドでした。
【音狩 舞鈴】
(相手の言葉に首を傾げて)
アボカド?
【田口 弘夢】
えぇ、キッカケは。ですけど。
【音狩 舞鈴】
それがお前の言う、“くだらない嘘”の発端か?
【田口 弘夢】
(長い沈黙の後、意を決したように)
…………、………何も、無い…子供だったんです。
【音狩 舞鈴】
……。
【田口 弘夢】
勉強も運動も出来なくて、絵も上手じゃなくて、人よりいつも数歩遅れてました。
なのに、何でもよく食べていたんですよ。
【音狩 舞鈴】
いや、ちょっと待て。
それは、“なのに”なのか? 何でもよく食べる、なんて。良い事じゃないか。
【田口 弘夢】
…そうですね、文脈が変でしたね。…でも、何も無いと自覚していた子供の僕が、くだらない嘘を吐く、理由だったので…。
【音狩 舞鈴】
…どうして子供のお前はそれを『いけない事』のように感じていたんだ。
【田口 弘夢】
……働かざるもの食うべからず。
祖父がよく言ってました。
でもそれは、僕を縛る為の言葉ではなくて、僕の伯父…父の兄へ向けた言葉でした。
【音狩 舞鈴】
……。
【田口 弘夢】
でも、その言葉が妙に怖くて。
…だから、何でもよく食べる自分は、じゃあもっと、働かなきゃいけないのにって。
【音狩 舞鈴】
働く? 子供のお前が?
【田口 弘夢】
(苦笑いして)
…オカシイでしょう? でも子供の頃の僕はそこまで不思議に思わなくて。
でも幼い身形で働く事を、世の中が許してくれない事も知っていました。
だから僕、じゃあ食べるものを少なくしてみようって……思っちゃったんです。
【音狩 舞鈴】
(合点がいって)
…それで、アボカドか。
【田口 弘夢】
……はい。
初めて“ソレ”が食卓に現れた時、“美味しくなさそう”と思いました。だけれど母に促されて、恐る恐る口に運びました。
……美味し、かったんです、けど。
その日は偶然食卓に居なかった祖父の言葉が、頭にポンと浮かびました。
【音狩 舞鈴】
……………。
【田口 弘夢】
………アボカドが苦手だと言った僕を、母は珍しいね、と笑いました。父は俺も苦手なんだ、と笑いました。
…今でも、母と父は僕がアボカドが食べられないんだと思っています。
【音狩 舞鈴】
……それで? その“くだらない嘘”は増え続けたのか?
【田口 弘夢】
いいえ、それだけですよ。
でも会社の人との雑談や、知り合いとの話題の中で…嫌いな食べ物はいつもアボカドでした。
【音狩 舞鈴】
ワタシにもそう言っていた気がするな。
まあ、ワタシも好き好んで食べた事は無いし、世間的に見れば“珍しくない”と思ったがな。
【田口 弘夢】
…。
「アボカドが苦手なんです」って。
言う度に、「美味しい」と言わなかった日を思い出すんです。
普通に食べられるものを、苦手だと嘘をついた日が迫ってくるような気がして。
【音狩 舞鈴】
(相手に呆れて)
…お前は、…はぁ。本当に面倒な考え方をする奴だな。
【田口 弘夢】
音狩さんなら、そう言って呆れるんだろうなって思いました。
……。
あの、なので。今からまた嘘をついてもいいですか。
【音狩 舞鈴】
また文脈が繋がってない。何が“なので”だ。
はあ、まあいい。話してみろ。
【田口 弘夢】
「僕、アボカドが食べられるようになりました」
【音狩 舞鈴】
(フ、と微笑んで)
…。そうか。
【田口 弘夢】
(思いっきり伸びをして)
……〜〜〜〜っはぁ〜〜!!
ほんのちょっと、…本当に少しだけ。詰まった息が喉を通った気がします。
【音狩 舞鈴】
…じゃあ、今度メシでも食べに行くか。近くにヘルシーな野菜を出す、美味い店があってな。
【田口 弘夢】
良いですね。…あ、でも今回の原稿を上げてからですからね!
【音狩 舞鈴】
はいはい、わーってるって。
STORY END.




