if story② 烈END『世界のどこへでも』
もし、あの日。 玲が烈との未来を選んでいたら――。
卒業式の日に交わした約束が海を越え、想いが結ばれる。
本編とは異なる"もしも"の物語。
卒業式から二週間。
生徒会室は、今日もいつも通り賑やかだった。
「玲会長、この書類お願いします!」
「はい!」
「会長、体育館の鍵借りるぞ!」
「いってらっしゃい!」
笑い声は変わらない。
それなのに。
(……静かだな。)
ふと、そう思ってしまう。
以前なら――
『会長ー!』
と勢いよく扉を開ける声があった。
『腹減った〜。なんか食いに行こーぜ!』
『また変なこと考えてんだろ?』
そんな声が、当たり前のように毎日聞こえていたのに……今はもう聞こえない。
鬼塚烈は、アメリカへ旅立った。
「……。」
玲は窓の外を見つめた。
(なんでだろ。)
推しはみんな好きで大切――それなのに。
烈がいないだけで、こんなにも毎日が物足りなく感じる。
「会長?」
サクラが不思議そうに顔を覗き込む。
「え?」
「ぼーっとしてました。」
「あ、うん。」
玲は苦笑した。
その日の帰り道。
商店街を歩いていると、ハンバーガーショップの前を通った。
そういえば、烈が言っていた。
『アメリカ行ったら本場のハンバーガー食ってくる!』
自然と笑みがこぼれる。
でも次の瞬間、胸が少しだけ苦しくなった。
(……会いたい。)
その想いは、自分でも驚くほど真っ直ぐだった。
その夜――
玲は勢いよく立ち上がった。
「決めた!」
スマホを開いて、アメリカ行きの航空券を予約する。
「会いに行こう!」
こうして春休み、玲はアメリカ行きの飛行機に乗り込むのだった。
連絡を受けた烈は、空港で玲を待っていた。
「烈〜!!」
満面の笑みで手を振る玲。
「あいつ、マジで来やがった……」
カラカラとスーツケースを引きながら、玲が駆けてくる。
「来ちゃった!」
「お前……本当に来たのか。」
烈は少し呆れた顔をしながらも、玲を思い切り抱きしめた。
「ちょ、烈!?」
「お前……順番ってのがあるだろーが!」
そう言いながら、烈はたまらなく嬉しそうだった。
「これが本場のハンバーガー!」
「うわぁ、顔ぐらい大きい!!」
二人で笑いながら頬張る。
NBAを観て、セントラルパークでアイスも食べた。
ストリートバスケに参加して、本場のミュージカルを堪能する。
全部が新鮮だった。
(あぁ、この時間がずっと続けばいいのに……)
あっという間に夜になった。
烈は街を見渡せる展望台に案内した。
無数の光が宝石みたいに広がっている。
「綺麗……。」
玲は目を輝かせる。
そんな玲を見て、烈は後ろからそっと包むように抱きしめた。
「烈……!?」
「……帰ってほしくねぇ。」
烈は玲の首元に顔を埋めて呟いた。
「もっといい男になって、絶対惚れさせるって言ったのに……。その時まで会わねぇつもりだった。」
ぽつりと呟く。
「まだ全然足りねぇ。もっと成長した俺を見せたかったのに……お前来るからさ」
少し拗ねたような口調の烈。
玲はそっと振り向いた。
「烈……」
「ん?」
「大丈夫だよ……」
玲は優しく笑う。
そして、烈の目をまっすぐ見つめながら伝えた。
「私は、もう……とっくに惚れてるから」
時間が止まった。
「……え?」
烈は目を見開く。
「卒業してから気付いた。烈がいない毎日は……寂しかった。」
玲の瞳が潤んでいく。
「だから……会いに来たんだよ。」
烈は弾かれたように顔を上げた。
「……反則だろ、それ!」
たまらず、烈は玲を強く抱きしめる。
烈の顔が玲の肩口に当てられる。
そこが熱く濡れていくのが分かった。
「ありがとう、会いに来てくれて……」
烈の力がだんだん強くなっていく。
「ありがとう、俺を選んでくれて……」
玲もそっと背中へ手を回した。
「こちらこそ……。私を好きになってくれて、ありがとう……」
夜景の中。
二人の影が重なった。
こうして卒業の日に交わした約束は、海を越えて結ばれた。
二人の未来は、これからどこまでも続いていく。
「玲! 次は俺が迎えに行く。世界中どこにいたって……必ず」
「約束だからね!」
「ああ……」
二人なら、世界のどこにいたって構わない。
お互いが、帰る場所なのだからーー
烈End『世界のどこへでも』




