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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ(前編)

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第ニ十話 冷徹生徒会長・如月玲!?

鬼塚烈は、自分の高ぶる気持ちが落ち着くまで、屋上から静かに校舎を見おろしていた。

賑やかだった文化祭も終わり、生徒達はそれぞれ片付け作業を始めている。

脳裏に浮かぶのは、先程までここにいたアメジストの瞳を持つ人物――生徒会長・如月玲。

いつからだろう。あいつから目が離せなくなったのは……。

はじめから綺麗な奴だとは思っていた。でもそれだけだった。

人形みたいに整った顔。機械仕掛けの美貌にさほど興味をそそられなかった。

それがいつの間にか、くるくると表情を変える姿に目を奪われるようになった。

笑って、怒って、慌てて。

その全部が愛おしいと思ってしまった。

(おいおい……男同士だぜ?)

何度、自分にツッコミを入れただろう。

でも、そんなものはどうでもいい。

男だからとか、女だからとか、そんなことじゃない。

きっと俺は――あいつの魂に惹かれたのだ。

きっと、他の奴らも同じだろう。みんなが自覚するのも時間の問題だ。

「はぁ~、潮時かなぁ。」

この屋上で想いを伝えるつもりだった。

自分だけの、とっておきの場所で。

……だが結局、勇気が出なかった。


「さて、俺も生徒会室に戻るとすっか……」

そう呟き、階段を下りようとしたその時だった。

数段下、そこに先程別れたはずの玲がぐったりと倒れていた。

「おいっ!会長!?大丈夫か!?」

慌てて駆け寄り、その身体を抱き起こす。

「おいっ、玲……しっかりしろ!」

するとその声に反応するように、長い睫毛が微かに震えゆっくりと瞳が開かれた。

「よかった……無事で」

安堵した烈は、そっと頬に手を添える。次の瞬間――

パシッ!と、その手が乱暴に弾かれた。

「馴れ馴れしく触るな、鬼塚。」

ぞくり、と背筋が震える。

目の前にいるのは、間違いなく玲なのに――

「お前は……誰だ?」

玲は答えない。烈を一瞥すると、玲は無言のまま立ち上がり、軽く制服を払いながら去っていった。


文化祭の片付けを終え、黒崎冴と千早絢は一足先に生徒会室へ戻っていた。

「すみません、黒崎先輩。結局あの後も僕に付き合っていただいて……」

「構わない。発注ミスであれだけ品物が届いていたんだ。対処できて良かった」

「はい、助かりました。でも、玲とのデートを邪魔してしまいましたね?」

「……何を言っている?」

「いえ、別に」

少し睨みを利かす冴に、どこ吹く風と絢はにこりと微笑む。

「お前の方こそ、『文化祭の後のご褒美』とやらはもらったのか?」

「よく覚えてらっしゃいますね……」

絢は苦笑した。

「まだ玲とはゆっくり話せてないので、これから玲には『ご褒美の時間』をいただこうかと……」

「お前……玲に何をする気だ?」

「さあ?黒崎先輩こそ、テーマパークデート、みすみす逃して良かったんですか?」

一瞬、冴の目が細められる。そして――

「ああ。あれは玲が選ばなくては意味がないからな。」

縁日で手に入れた特賞――テーマパークのペア入場券。

あの時、一瞬だけ迷った。

『玲、一緒に行くぞ』

そう命令してしまえばよかった。だが……

冴が欲しかったのは、命令に従う玲ではない。

自分の意志で笑い、自分の意志で隣にいてくれる玲だった。

「変わったな……俺も、お前も」

「そうですね」


そこへ――コンコン。

扉が開き、玲が入ってきた。

絢はにっこりと微笑むと、玲の方へ駆け寄った。

「玲、見回りお疲れさまでした。あの後、一人にしてしまってすみません……大丈夫でしたか?」

玲は絢を一瞥すると、淡々と言った。

「ああ、問題ない。千早もご苦労だった。」

絢の笑顔が凍りつく。いつもの玲なら――

『ありがとう! 大丈夫だよ!』

そう笑ってくれるはずなのに……。

「玲、どうした?」

冴が問いかける。すると玲は姿勢を正した。

「特に報告事項はありません。黒崎先輩には文化祭期間、お世話をおかけしました」

深々と頭を下げる。

(これは……一体……?)

冴と絢は視線を交わした。


その後、律、豪、サクラも戻ってきた。

「玲!」

律が嬉しそうに駆け寄る。

「特賞は無理だったけど、A賞のぬいぐるみ当てたんだ! よかったら玲にあげる!」

手のひらの上には、小さなクマのぬいぐるみ。

きっと玲なら――。

『わぁ!律すごい!もらっていいの!?』

そうキラキラした瞳で喜んでくれる。

律は疑っていなかった。だが――

玲はぬいぐるみを一瞥し、冷たく言い放つ。

「俺には必要ない。それより律、本日の会計報告書を早めに提出してくれ」

律の瞳が大きく見開かれた。目はじわりと潤み、ぬいぐるみを持った手が微かに揺れる。


その様子を見た豪が少し声を荒げた。

「おい、如月。そんな言い方はないだろ?律、お前のために頑張って獲ってたんだぞ!」

それを聞いた玲は、豪の方に向き直った。

「俺がそれを頼んだか?神城、各部活動の成果報告書がまだ提出されていない。早めに頼む」

「あ、悪りぃ……ってそういう話じゃないだろ!」

豪は語気を荒げたが、玲は何事もないような涼しい顔をしている。

そんな様子をオロオロと見守るサクラ――。


この場にいる、玲以外の全員が感じていた。

目の前にいるのは間違いなく玲のはずなのに、何かがおかしい。

別人ではない。むしろ――

それは、誰もが知る昔の『如月玲』だった。

感情を表に出さず。

誰にも隙を見せず。

完璧な仕事だけを求める。

『冷徹生徒会長・如月玲』。

生徒会室の空気が凍りつく。


その時――

バンッ!!勢いよく扉が開いた。

「みんな、ちょっと話がある!」

肩で息をする烈。そして、部屋の中央に立つ玲を見た瞬間、烈の表情が険しくなる。

「やっぱり……屋上のところで倒れた後からお前……」

静まり返る生徒会室。

全員の視線が玲へ集まる。

そして烈は、目の前の生徒会長を睨みながら低い声で言った。

「お前は……誰なんだ?」

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