ブラン
「・・・ついにやったわ」
私の名前はブラレット・B・モンブラント、通称ブラン。この国【レッドランド王国】の、とある貴族の家に三女で生まれた由緒ある家の子よ。
そして、この学園・・・【レッドランド冒険者学園】は次世代の冒険者を育成する養成機関なの。
なんでも、国の始まりは一人の冒険者が我が身ひとつ、実力で起こした国であるとされている。そんな始まり方のせいか、この国や学園は基本的に実力主義と言う事になっているわ。
この学園も学生の成績や実力に応じて優遇措置が取られている。日々の生活を送る寮に、支給される備品、貴重な魔法文献の閲覧権などね。
基本的に実力が全て・・・それは貴族も平民も関係は無い。ある意味で公平に聞こえるでしょう。でも、人に劣っている人間には地獄でしかないわ・・・私の様な。
私は貴族で生まれながらも基本的な戦闘能力が人より低かったの。そして、反対に私の親・・・家族たちは能力が人の数倍は高かったわ。それが私の扱いの悪さに拍車をかけた。
家族たちは私を家族と認めていない。お父様から頭を撫でられた事すら無いの。私はそんな家で見下されながら、日々を耐えながら生きてきたわ。
この学園に入学出来たのは最後の温情と言っていいわね。おそらく、この学園生活で何も残せなければ私は適当な家に嫁に出されるか。最悪、貴族の名を捨てる事になる。要するにこれが最後のチャンスなの。
私は何としても結果を出さなければいけない。このままで・・・家族に見放されて終わるつもりなんてないわ。
・・・でも、基本的な能力が劣る私には簡単に結果を出せる筈は無い。だから、私は【従魔契約】に可能性をかける事にしたわ。【従魔契約】によって、強力な魔物を従魔に出来たなら戦闘が苦手な私でも戦えるかも知れないと考えたからよ。
冒険者の中には【テイマー】として名を馳せた者もいるからね。従魔の力に頼るだけ?だけど、この国では合法となっているわ。
私は【契約の指輪】を手に入れて(この指輪は結構高いの)強い魔物をテイムする為に、学園の敷地内にある山に入ったわ。この学園は国が経営しているだけあって、かなり広いの山に湖まで敷地内にある程よ。
私は強力な魔物を探している内にかなり奥まで入ってしまったみたい。そして、慌てて戻ろうとしている内に【ブルーベア】に遭遇してしまった。
【ブルーベア】は森にいる魔物の中でかなり強い魔物と聞いていたわ。
願ったり叶ったりと、私は隙を見て【従魔契約】を結ぼうとした。でも、【ブルーベア】には隙なんて出来なかった。この【従魔契約】は能力が対象より高いか、よっぽど油断している相手でなければ効果は薄いらしいから。
私は魔法を使って隙を作ろうとしたけど、全て躱されてしまったわ。元々少なかった魔力が尽きかけ・・・殺されると思った時だった。
ーーーードガガガッ!!ーーーー
・・・私は助けられた妙な杖を持ったモンスターに。
そのモンスターは小柄ながらも愛嬌がある風貌をしていたわ。杖から火を放ち、ブルーベアをいとも簡単に追い払ってしまった。そして、私は・・・チャンスだと思ったわ。
見た事の無い種族のモンスターだったけど、ブルーベアでさえ簡単に追い払う事の出来るモンスター。確か、東の国の言葉で棚からぼた餅って言うんだっけ?
人に慣れているのか、警戒心がゼロで隙だらけ。【契約の指輪】を使うなら今しか無いと感じた。私は無防備に近寄って来るこのモンスターに指輪を使った。指輪から出た魔法の光はモンスターを包み込み・・・そして、契約は成功したのだった。
契約が成功したら、モンスターと会話が出来るようになった。【契約の指輪】の効果にモンスターと心にパスが出来ると魔法書に書いてあったから、その効果であると考えたわ。
話して見ると、『邪神様』とか『人権』とか妙な事ばかりを言う魔物だった。まぁ、あまり頭は良くなさそうだったわね。
でも、【ブルーベア】を追い払う力を持っているならば、戦闘には期待出来そうね。こいつがいれば、やっと皆を見返せる筈だわ。
私は『モツ』と名乗ったモンスターを連れて学園、学生寮に帰って来た。私としても不服のあるボロボロの洋館にね。
さっきも言ったけど、この学園での待遇は成績や実力によって決まる。まだ、学園に入学して初めの月だけど、入学試験の結果によって私はこの寮となったらしい。
・・・この寮は学園から、落ちこぼれの最後の砦などと言われているわ。
寮で暮らしているのは私を含めて四人しかいない。暮らせなくはないが色々と問題のある設備に、何よりアンデットモンスターでも出そうな雰囲気が苦手だ。早く、昇格して別の寮に移りたいわ。
・・・今の私ならば、それも可能な筈。
私には既に強力なモンスターが味方についたのだから。そして、これからはあのモンスターとの信頼関係を築かなければならない。
私は一度部屋に戻り、必要な道具を持って寮の裏にある馬小屋へと戻る。持っているの魔物図鑑や魔法書だ。まずはあのモンスターの事を知ろうと思う。
そして、私は馬小屋の扉を開けた。そして、目に飛び込んで来たのは・・・。
「な、何よこれ〜〜!?」
・・・私は中の光景を見て思わず叫んでしまったのだった。