モジュール・クリエイト
〜〜〜現代サイド〜〜〜
「知ってるか?ドングリって食えるんだぜ」
『だから、どうしたですかっ!?僕にドングリを食えとっ!?』
物が乱雑に散らかっている部屋の中。パソコンには森の中を歩く珍獣が映されている。それを見て俺は笑う。
画面は上空から覗くように映し出されていた。
珍獣・・・モツをターゲットになら360度動かすことが出来るようだが、ターゲットは変える事が出来ず固定されているようだ。
古いパソコンにマイクを使って、チャットの様にオペレーションをする。それが画面の中のモツに聞こえた(?)ようだ。モツは俺に突っ込みを入れた。実に反応がいい奴だ。
森の中をただ歩くのは暇そうなので適当にアドバイスをする。もっとも、それが役に立つかは知らんがな・・・まぁ、ただの雑談だ。
ちなみにドングリの食い方であるが、勿論食べるのは堅い殻では無く中身だ。中身は生でも食えなくは無いが渋いらしい。よって加熱して食べるのがオススメだ。乾燥させても行けるし、コーヒーの代用品にもなるとか・・・興味があったら試して欲しい。
あと、モツの事も分析してみる。
モツはどうやら、5歳児ほどの知脳しか無いようだ。幾つかの質問をして、子供じみた答えや言動などが多かった。会話が成り立つから、単純な知性はあるようだな。
この世界に来る前の事・・・即ち、パソコンのゲームモンスターであった時の記憶は無いようである。この世界で初めて生まれと言う事であろうか?
それにしては、おかしな事に基準知識(?)のようなモノを持っているようだ。ようするに善悪の判断などのモラルが分かるという事だ。記憶が無いのに知識があるなどと訳がわからん。
もはや、今の段階でその理由など分かりそうも無いので保留にしておく(丸投げと言っていいが)。情報が少ない事もあるが、分からん事をうだうだと考えるのは時間の無駄だからな。
・・・それはさて置き、もう一度パソコンである事を確認する。
「・・・【モジュール・クリエイト】か。中々、面白い機能じゃ無いか」
先ほどのモツに送った爆弾を思い出す。
あれはパソコンのモジュール機能を使って、俺が作りだした物だ。どうやら、その機能を使えば色々な物をプログラミングによって作り出し、モツの周囲に送ることが出来るようだ。
それと『作る』のと、『送る』のは別の機能であり、作るのはパソコンのモジュール作成ソフトを。送るのは育成ゲームで使っていた【プレゼント】と呼ばれるコマンドを使用している。
モジュール作成ソフトは随分前にパソコンにインストールしたソフトである。
絵を描くようにしてアイテムなどを描き、効果を設定。更に、アニメーションのようにエフェクト仕様で動かすことも出来る。それが、モツに送ると自動発動するようだ(使用をモツに委ねる事も出来る)。
【プレゼント】はその名の通り、育成中のモンスターにプレゼントを送り好感度を上げる効果を持っている(先ほどの使い方は微妙に違う)。
その他にも育成ゲームで使えるコマンド・・・モンスターを洗う機能などがあったが使えるかは微妙な物である。
「・・・全く、実に面白いじゃないか」
それらを調べて俺はとても気分が高揚していた。
もしかしたら、これはラノベなどにある『異世界もの』であると俺は推測していたのだ。
あのタイミングと状況から見て、あの雷が落ちた事がきっかけであるとは思われる。
俺はラノベなどが結構好きでよく読んでいる。その異世界転移ものの状況と符合するのだ。異世界に落ちたのは育成モンスターであるが、それが実際に起こるなどと興奮するなと言う方が無理だ。
この世界が本当に異世界なのか・・・それを調べる為にモツの目標を異世界を調べる事にしたのだ。未知なる世界・・・一体どのような世界なのだろうか、興味が尽き無い。
異世界を知り、おまけでモツをサポート。モツの行動を安全な所から見て笑う・・・まさに、ゲーム感覚であった。
『あ、あの・・・神様?』
「ん、何だ?」
モツの声で現実に戻り、返事をキーボードで打ち込む。
「あっちの方から、声見たいなものが聞こえたです。・・・どうしましょうか?」
どうやら、考えに夢中で聞き逃していたようだ・・・事態は動いた。
「そうか。そこから声の持ち主がわかるか?」
『いえ、分から無いです。それに、結構遠くみたいでした。何か・・・悲鳴のような感じだったです』
ラノベで言うならば、テンプレであった。しかし、もしかしたら知的生命体・・・人間かも知れない。これは調べて見るべきだろう。
「・・・よし、調べに行け」
『ええっ!?でも、悲鳴ってことは危険があるかもですよ、それでも行けと?』
「勿論だ。安心しろ武器ならやる。今、送るぞ」
俺はモジュールを起動してモツ用の武器を作る。
もし、異世界ならばモンスターの線もある。モツの同類ならコミュニケーションが取れるかも知れないからな。とりあえず、未知との初接触だ万全を期して行こう。
「・・・出来た。転送!!」
そして、完成した武器をモツの元に送る。
『あっ!来たですよ!!・・・何ですか、これ?』
モツは送られてきたそれを物珍しそうに眺めている。
「それはライフル銃と言う武器だ。下手に弄るなよ・・・今、お前が覗きこんでいる穴から弾がでるからな」
『ほえっ!?先に言ってですっ!?』
銃口を覗きこんでいたモツは慌てて、銃を手から離した。そう、モツに送ったのは【アサルトライフル】であった。
【アサルトライフル(突撃銃)】は現代兵士の基本装備である。その性能はライフルとサブマシンガンの中間機能であり、射程こそライフルに劣るが連射が可能となっている。ちなみに弾薬は30発だ。
「だから、丁寧に扱えって。暴発するだろうが」
それから、俺は口頭で銃の使い方をモツに教える。この装備ならば、大抵の敵に遅れは取らない筈だ。
『よし・・・行くですよ!!』
銃を装備したモツが悲鳴のした場所を目指す。茂みを掻き分け・・・そろり、そろり。
・・・さて、この先には何が待ちわびているのだろうか面白い事があるのを期待するのみだな。