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第十九話 情報収集(前編)

 情報屋を名乗る男からいろいろと情報を引き出したシルクはそれを精査しながらミルの行方を追い始める。

 彼は最後の最後までかなり渋っていたが、マミ・シャルロッテについての情報も渡してくれた。


 亜人追放令をはじめとして、何かと亜人を遠ざけるような印象がある彼女ではあるが、男によるとその実は逆のようだ。

 亜人との正しい友好関係を築くという言葉を彼女の側近に漏らしていたことがあるらしく、その時の様子からそれが彼女の本心ではないだろうかという推測がされているのだ。


 つまり、亜人追放令というのは単純に亜人を追放するということに重きを置いていない。ということになる。

 そうなると、その意図は何か? 例えば、亜人とのつながりによって得られる利益の独り占めだとすると、その割には亜人との接触が少ないように思わえる。ただし、シルクが知らないだけで、マミ個人が亜人との交流があるという可能性もあるが……ほかには何かしらの理由により、やむなく亜人を排除しなければならない可能性。

 後者の理由だった場合厄介だ。


 前者なら取り入って、何とかミルを取り返せるのだろうが、後者であればただでさせ邪魔な亜人が、もっと別の方向でも邪魔をしに来たという風にしか映らない可能性がある。

 そうなると、交渉以前の問題だ。


 そもそも、彼女はミルに何をしようというのだろうか? ミルは確かに特殊な事情を抱えているが、それを除けばごくごく普通の少女にしか見えない。そして、マミがより寿命の長い亜人と一緒に過ごさせようと配慮をするのなら、エルフが相手でも問題がないはずだ。

 確かにエルフには妖精などとは違い明確な寿命が存在しているが、それは人間の数百倍は長い上に体も丈夫にできているため、人間より簡単に死ぬということはない。それにシルクは行商なので各地を見て回ることもできるはずだ。


 なのにマミはミルをシルクから引き離して、どこかへと連れて行ってしまった。


 シャラブールでの一連の出来事からシルクと一緒にするのを危険だと判断したのか、もしくは別の要因があったのかはわからないが、それだけは確かな事実だ。


「……とまぁそんなことを考えたところで仕方ないといえば仕方がないが……」


 いずれにしても、最終目標はミルの奪還。

 これだけは変わらない。


 そのためにはまずは情報を集めることが大切だ。あの情報屋を名乗っていた男はとにかく基本は聞き込みだと言っていた。つまり、町の中で人が集まる場所……例えば、酒場などでそれとなく目撃情報などを探すのが大切らしい。ただ、このとき気を付けることはあまりあからさまに聞きすぎないこと。ただでさえ、相手に顔を知られているのだから、あまり怪しまれるような行動はとるべきではない。

 そう考えながらも、シルクは町のはずれの方にある酒場へと向かう。


 その酒場はエルフ商会のシャラブール支部の近くにあり、何かしらの情報がつかめるのではないかとの考えからの行動だ。

 もちろん、極力怪しまれないようには注意を払う。


「さて、それじゃ行きますか……」


 ただし、今はまだ昼間であり、酒場に人が集まってくる夜まではまだ少し時間がある。

 それまでの間にせめて少しでも手がかりが欲しいのでシルクは今日自分が訪れた場所をできる限りの範囲で行ってみようと考えて、エルフ商会の支部へと向かった。




 *




 エルフ商会シャラブール支部。

 先ほどまでの騒動などまるでなかったかのように静まり返っているその支部の入り口の扉をゆっくりと押し開ける。


「これはこれはシルクさん。お帰りですか?」


 シルクが中に入るなり現れたメイもまた、何事のなかったかのように笑顔を振りまいている。

 こうしているあたり、彼女の立場が今市読めないが、一応彼女にもミルのことを聞いてみようと口を開く。


「えぇ戻ったわ……それにしても……」

「それ以上言うのはなしですよ」


 シルクが何を言おうとしたのか見切ったらしく、メイはシルクの言葉を遮った。

 その表情こそ笑顔のままだが、そこに得体のしれない恐怖すら感じる。


「なるほど……そういうことか」

「どういうことですか?」

「いや、なんでもない」


 これで確定した。

 メイはマミの味方……要するに敵であると。


 彼女としてはしっかりと任務を遂行しているだけということなのだろう。そう。単純にシルクとメイを助け出したうえでしっかりとマミのところへと誘導するという大切な任務を……シルクとしては彼女が案内した先に偶然マミがいたという可能性も捨てきれていなかったのだが、これで彼女が意図的にそうなるように行動していたということが確定されるわけである。


「荷物を置いてもいい?」

「はい。かしこまりました。荷物をお預かりするだけでよろしいですか?」

「それでかまわないよ。私はもう一度出るから、帰りまでその荷物をちゃんと置いておいてほしい」

「はい。間違いなく預かります」


 シルクは持っていた荷物のうち、必要最低限のもの以外をメイに渡す。

 その瞬間に彼女の様子を観察してみるが、何ら不自然な点はない。まるで先の出来事など全くなかったかのようだ。ただ、それだけに余計に不自然さが目立つ。

 そもそも、彼女が本当に何のかかわりのない人間だとすれば、“一緒にいた女の子は大丈夫だったんですか?”の一言ぐらいあってもおかしくないはずだ。いや、もっと言えば“あの女の子は一緒じゃないんですか?”が一般的な質問かもしれない。あの現場にいて、脱出のための誘導をしたのなら、そうでないとおかしいのだ。


 しかし、目の前にいる彼女は平然とした表情でシルクから荷物を受け取っている。


 シルクはメイに荷物を渡すと、そのままシャラブール支部を後にする。

 これから聞き込みをしていくのなら、彼女の動向にも気を付ける必要がある。それがわかっただけでも収穫があったといえるかもしれない。


 シャラブール支部から外に出ると、時刻は少し進んで徐々に空が赤くなり始めていた。

 シャラブール支部がある路地裏から大通りに出ると、目的の酒場へと向かう。


 途中で見かけたという程度の店で実際はどのように営業しているかわからないが、大体の酒場は昼に営業しているか否かの違いはあっても、夕刻から夜にかけて営業していないという店は少ない。

 シルクは店を探しているような風を装って、地図を片手に時々周りの様子を確認しながら町を歩く。


 どうやら、誰かが後をついてきているということはなさそうだ。


 シルクはそのあともそういった動きを繰り返しながら、大通り沿いにある酒場へと入っていった。

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