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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第7章:東都の日常⑤

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第94話:管理者を頭数に入れるな

管理者は便利な生き物ではありません。

「結城さんー」


「はい?」


新人がやってくる。


嫌な予感しかしない。


最近この予感はだいたい当たる。


「例の定常作業なんですけど」


「うん」


「やりました?」


俺は固まった。


三秒ほど固まった。


「……は?」


「え?」


「いや、え?」


新人も固まった。


俺も固まった。


しばらく見つめ合う。


「俺が?」


「はい」


「なんで?」


「え?」


「なんで?」


新人のCPU使用率が上がる。


俺のCPU温度も上がる。


「いや、その……」


「いや、そのじゃなくて」


俺は深呼吸した。


深呼吸した。


大事なことなので二回した。


「それ、誰の担当?」


「私です」


「じゃあなんで俺がやるの?」


「……」


新人フリーズ。


俺もフリーズ。


怒りを抑えるためである。



---


現在。


月末。


俺くん超忙しいモード。


勤怠確認。


勤怠送付。


締め作業。


顧客対応。


緊急案件。


その他もろもろ。


全部積み上がっている。


その状態で。


「やりました?」


である。


やってるわけねぇだろ。



---


俺はトイレへ向かった。


危険を感じたからだ。


アンガーコントロールである。


個室に入る。


鍵を閉める。


深呼吸。


「管理者を頭数に入れるな……」


ボソッと呟く。


「管理者を頭数に入れるな……」


二回目。


「管理者を頭数に入れるな……」


三回目。


大事なことなので三回言った。



---


喫煙所。


俺はタバコに火をつけた。


ぷかぁ。


煙が空へ消える。


俺の理性も少し戻る。


「紫苑くん?」


振り返る。


堂条さんだった。


「どうした」


「いや別に」


「顔」


「顔?」


「キレてる」


「キレてません」


「キレてる」


即答だった。



---


事情を説明した。


堂条さんは聞いていた。


静かに聞いていた。


最後まで聞いていた。


そして。


「それは紫苑くんが悪い」


「は?」


俺の怒りゲージが再点火する。


「なんで!?」


「今まで助けすぎた」


「ぐはっ」


クリティカルヒット。



---


「困ったら紫苑くん」


「うっ」


「忙しいから紫苑くん」


「うっ」


「よく分からないから紫苑くん」


「うっ」


「結果」


堂条さんが指をさす。


「やりました?」


「ぐはぁぁぁぁぁっ!!」



---


堂条さんは笑った。


「だから管理者は便利屋やるなって言ったろ」


「言ってましたね……」


「自業自得」


「ぐぬぬ」


反論できない。


悔しい。


でも反論できない。



---


「で?」


「で?」


「月末終わったの?」


「終わってません」


「じゃあ戻れ」


「はい……」



---


俺は席へ戻った。


そして決意した。


今月だけは。


今月だけは。


自分の仕事を優先しようと。


そう思った。


思っただけだった。


五分後。


「結城さんー」


「なんだ」


「ちょっと相談が」


俺は空を見上げた。


東都の空は今日も青かった。


紫苑 「管理者を頭数に入れるな」


堂条さん 「お前が育てた文化だぞ」


紫苑 「ぐはぁっ」


堂条さん 「自業自得」


紫苑 「反論できねぇ……」


管理者あるある回でした。

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