悪を滅する獄炎
エクスクローMKⅡとの戦いの最中、突如戦場に吹き荒れる熱風!
れなたちは飛ばされそうになりながらも地面にしがみつき、エクスクローは周囲を見渡して困惑している。
「な、何だ…?何が起きて…ぐふ!!」
大きな声をあげながらうつ伏せに倒れるエクスクロー。
彼を背後から蹴飛ばしたのは…白髪を美しくなびかせる亜華魔姫だった。
将達を中心に、皆が声をあげる。
更に亜華魔姫に続き、炎のオーラを纏う鬼子が降りてくる。
戦場に熱風が吹き荒れていた。
周囲の岩は熱を帯び、赤く光っている。
十五人もの戦士が、エクスクローを取り囲む。
それでもエクスクローの余裕は崩れなかった。
「何だ?追い詰めたつもりか?」
エクスクローは実に愉快そうに肩を鳴らした。
そんなエクスクローに臆する事なく、れみが目の前に立ち塞がり、指差す。
「その通りだ!覚悟しろ!」
小さなれみの大きな声に、一同の闘争心が震える。
構えをとり、エクスクローに意識を集中する!
「…愚か者どもが!!」
エクスクローは地を蹴る。
沢山の戦士達に囲まれても全く迷いなく向かっていく!
まずはラオンと葵だ。二人を手早く潰そうと拳を振り下ろすが、二人は既に攻撃を読んでいた。
ラオンがエクスクローの右腕をナイフで切りつけ、葵が左腕に発砲!
再生力が高いとは言え、痛みは感じる。エクスクローが怯んだ隙に、背後からエックスと粉砕男が飛び出す!
エクスクローは腕を叩きつけようと振るうが、二人は空中で回転して華麗に回避、顔面に蹴りを炸裂させる!
吹っ飛ばされるエクスクローだが、地面に手足を叩きつけてその場に留まる。
そして、今度は両手の平から赤い光弾を連射!
ドクロとテリーが光弾と光弾の隙間を潜り抜けながら、黒い光弾を放ってお返しする!
よく見ると二人の真横には銃弾も飛んでいる。葵が二人を援護してくれているのだ。
エクスクローは黒い光弾を殴って破壊、爆発に顔を覆いつつも、その爆発で銃弾も砕いていた。異形の口を開いて嘲笑ってみせた。
「所詮は弱者の小細工よ!」
距離を詰めたドクロとテリーはエクスクローの両足にそれぞれ手の平を叩きつけた!
「はっ、何だ今のは?痛くも痒くもないわ!」
エクスクローは自身の背後に回り込んだドクロとテリーに拳を叩き込もうとしたが…。
直後、エクスクローの両足から爆発が起きた!
膝をつくエクスクロー。先程、手の平から魔力を貼り付けたのだ。
ドクロがニヤリと笑いながらエクスクローを見上げた。
「どう?弱者の小細工は」
エクスクローは急いで足の傷を再生しようとするが、更なる衝撃が足を襲う!
今度はれなとれみが足に殴りかかったのだ。たまらずエクスクローは膝をついたまま拳を放ちまくり、二人と殴り合う。
「ぐぬうう!!」
次に痛みが走ったのは背中だ。
斬りつけるような痛みだ。
後ろに回り込んだ百戦鬼、叡光鬼が背中を切り裂き、返り血に全身を染めていた。
そんな二人の真横を、剛強鬼が駆け抜けていく!
斬られたばかりの背中に力将の名に相応しい痛烈な拳を叩き込みまくり、少しずつ前のめりに倒していく!
そしてれなとれみが、こちらに倒れてきたエクスクローの顔面に蹴りをお見舞い!
背後と正面から衝撃の挟み撃ちにされたエクスクローは膝だけでなく全身を仰向けに倒す。
舞い上がる砂煙に顔を覆いつつも、皆一歩も引かない。
「行きなさい!!憑将、そして狩人!」
叡光鬼が叫ぶと同時に、エクスクローの周囲に炎が出現!
炎の輪に取り囲まれたエクスクローの頭上から、二つの影が落ちてくる!
一つは炎の刀を振り下ろす鬼子、もう一つは踵を振り下ろす亜華魔姫!
エクスクローは腕からの衝撃波で炎を消そうと腕を振りかぶるが…!
「させるかー!!」
れなが叫び、エクスクローの右腕に青い破壊光線、オメガキャノンをぶち込んだ!
そこから百戦鬼が空中飛行姿勢に移り、オメガキャノンを食らったばかりの右腕を槍で斬りつける!
血飛沫と共に、ついに右腕がもげるエクスクロー!
「ぐはああ!!おのれええええ!!!」
完全にダウンしたエクスクローの頭に、鬼子と亜華魔姫の一撃が炸裂した!
あまりの衝撃に声すらあげず、エクスクローはうつ伏せに倒れる。
息を切らす一同。
…今度こそやったと、誰もが思った時だった。
「!?」
全員が同時に息を呑む。
エクスクローの体が、溶けていくのだ。
ドロドロと赤い液体と化しながら崩れていき、周りに広がる。
一同は空中飛行してそれをかわす。エクスクローは完全に液状化し、真っ赤な湖と化した。
…そして、湖の中心から、不気味な頭が飛び出す!
それは、エクスクローの顔ではなかった。
真っ赤に光り、飛び出しそうな程大きな目玉に異様に裂けた口を持ち、不釣り合いに並ぶ牙を持つ液状の顔だ。
「くききゃああああああ!!!」
そのエクスクロー…だったものは甲高い奇声を発しながら、全身から真っ赤な血飛沫を噴出する!
直ぐ様百戦鬼が槍を振るい、赤い光のドームを展開、全員を守る。
ドームの中で、一同は地上を見る。
血は着弾すると、白い煙をあげながら少しずつ地面を溶かしていく…!
そうこうしてる間にも、怪物は耳障りな奇声を発しながら血飛沫を放ち続ける!
ドームは少しずつ薄れていく。百戦鬼は苦悩に満ちた声で呟く。
「このバリアは一度使うとしばらく使えん…。やつの大量の血をかわしつつ、全力の攻撃を仕掛けなければ勝てないだろう」
しかし、この隙間なく飛んでいく血飛沫をかわしつつ、意識を集中させる必要がある全力攻撃を仕掛けるのはあまりに困難だ。
血を消し飛ばそうにも、全員の力をあわせてもこの量の血を正確に消し飛ばすのは困難を極める。
どうすれば…?
「俺がやる…」
一人が、手を上げた。
…火竜だ。
一同が、火竜を見る。
戦いの中で受けたダメージで、もう既に息が荒い状態だった。
「俺の炎の拳のエネルギーを最大にすれば、広範囲の熱波を打てるはずだ。血は俺に任せろ」
「え、でもそんな事したら…」
れなの一言で、火竜が俯く。
「…やめて!」
鬼子が叫んだ。
…角を生やしつつも、とても優しい泣き顔で。
「そんな事したら…火竜、あなたの命が持たない!今は戦うのさえ危険なのに、全力を出したりしたらきっと身が持たない…!」
火竜の手を取る鬼子。
…火竜は、そんな彼女の手を優しく振り払う。
「鬼子。長年悪鬼と戦い続けてきた相棒だろ。俺が信じられないのか?」
それだけ言い残し、地上に再び目を向ける火竜だが…。
「信じてるからこそよ!!!」
鬼子の叫びに、一同の肩が動く。とても鋭い叫びだった。
「信じてる…。あなたが死ぬ訳ないって。でも、でも…!万が一…また大切な人を失ってしまう事になったら…!どうしても頭によぎるのよ!」
「…そん時はそん時だ」
言いにくそうに、火竜は答えた。
…曇った空気が、一同を包む。
「…ほうほう。これが人間の決意ですか」
そんな空気の中、叡光鬼があえて呑気な声を出す。
そして、震える手で刀を引き抜き、言った。
「我々も守りに回りましょう」
えっ、と皆の声があがる。叡光鬼は続ける。
「血飛沫が飛んだら、火竜さんの熱波の後ろに我々の魔力波も放出します。私達将の魔力があれば、ここにいる全員を一時的に包む魔力の壁ができるでしょう。その隙に皆さんは一気に全力の攻撃をかけるのです」
敵を見下ろす叡光鬼。ドームは、あと僅かしかなかった。
「我々に残された力はあと僅か。もしこの一撃が失敗すれば、全員跡形もなく溶かされるでしょう。皆さん、死ぬ気で攻撃ですよ。あとはもう、気合いです!」
知将と呼ばれる叡光鬼が、気合いとやや抽象的な表現をした。
それほど今は切羽詰まった状況なのだ。
「…よっしゃー!!やるぞ!!」
…追い込まれれば追い込まれる程燃えるれなが、叫んだ。
同時にドームは消え、怪物の寄声がこだます!
「ききゃあああああ!!!」
凄まじい勢いで飛んでくる血飛沫。気づけば周りの地形もかなり崩壊していた。
火竜は右手に全ての魔力を集め、突きだす!
火竜の腕から血が吹き出しつつも、強大な熱波が放たれた。
同時に叡光鬼が刀、百戦鬼が槍、剛強鬼が拳を振るい、赤い光の壁が放たれた!
熱波と壁が互いに合わさり合い、れなたち一同の体を包むドーム状のバリアとなった。
その瞬間、三将は飛行する力も失い、地へと落ちていく。
落ちつつも、三人は同時に叫ぶ!
「いけえええええええ!!!」
「うあああああああああ!!!!」
れなたちの咆哮のような叫びが、怪物を威圧する!
仲間達は、猛風の如く怪物へ迫る!
ラオンが紫電を纏うナイフで怪物の体を切りつけ、葵が銃弾を猛連射、怪物の全身を撃ち抜く!
ドクロとテリーは地を抉る黒い光線、れみはエネルギー最大の特大レーザーを指から放ち、怪物に直撃、爆発させる!
怪物の液状の体が空中に飛ばされる。自身の破片を撒き散らしながら、爆風に唸る怪物。
地上へ落ちる前に、粉砕男とエックスが連続で拳を振り上げ、怪物を更に打ち上げる!
天高く舞い上がった怪物に、れながミサイルのような勢いで突撃していく!
空中の怪物は、無我夢中で口から赤い光線を吐き、こちらに向かってくるれなを何とか止めようとする!
だが無駄だ。れなの体を覆っていたバリアが、崩壊しつつも防いでくれた!
バリアが完全に消えるより前に、れなは拳を突き出した!
そのあまりの勢いでれなは怪物の体を貫通、悪鬼世界の天空で、黄色いツインテール髪を美しくなびかせた。
怪物は叫びながら地上へと落ちていく。
「ほら、行って来い!!!」
火竜が鬼子の手をとり、怪物目掛けて投げ飛ばすように突き出した!
火竜に投げられた勢いのままに飛んでいく鬼子。
飛んでいくうちに段々とバランスを整えていき、地上に落ちた怪物に狙いを定める。
鬼子は飛行能力を持たない。しかし今、こうして空を飛べている。
これは妖姫のおかげだ。
後ろを見ると、妖姫が優しく微笑んでいた。
「お前ならできる!迷わず切り裂くが良い!」
鬼子は、心強さに打ち震えた。
こんな小さな子に、こんな大きな力を感じられるとは。
「いくぞ、鬼子」
すぐ横から、声がした。
…亜華魔姫だった。
頷く鬼子。
黙ったまま、二人は顔を見合わせた。
気づけば怪物は、すぐ目の前だ!
鬼子は炎の刀を振り上げる。
…しかし。
「だめだ!先にやられるぞ!」
粉砕男の声と共に、怪物が口にエネルギーを瞬時に集め、光線を吐き出そうとしていた。
何もしても間に合わせようと、更に勢いをつける鬼子達だが…!
その時、二つの奇跡が起きた。
「ぐがあああっ!?」
誰も攻撃していないというのに、突然怪物は激痛を覚え、光線を中断した!
怪物の体には、黒い刃が突き刺さっている。
「…!今よ!」
もはや誰の攻撃なのかと困惑する暇すらない。
そこからさらにもう一つの奇跡が起きた。
亜華魔姫の手に、何か大きな力が集中したのだ。
そして、彼女の手に何かが光と共に現れる。
…それは、激しい炎の刃を持つ刀。鬼子が振っている物とはまた違う刀だった。
これは…。
「獄炎刀!!」
地上の仲間達が同時に叫んだ。
「双炎!!!罰刻殺刀!!」
…双炎罰刻殺刀。
鬼子、亜華魔姫、妖姫の叫びは、一瞬も乱れなかった。
天へ昇らんばかりの二つの火柱、そして閃光が、怪物の目の前で交差する。
刀を振るう。
音もなかった。
だが、確かに天は唸った。
「ぎゃがあああああああああかがあああああああ!!!!!」
今までで一番の叫び声をあげながら怪物は苦しみ、全身から白い煙を巻き上げる。
少しずつ地面に吸い込まれていき…最期は、跡形もなくこの世から消えてしまった。
赤い空に、刀を持つ鬼子と亜華魔姫がいた。
戦いは、終わった。
炎の刀は、ただ静かに燃え続けていた。




