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悪意の杖の力

れなとれみが暮らしている研究所には、倉庫がある。

その倉庫のなかには、ある物がガラクタに混じっていた。


一つは青い宝石が嵌め込まれた杖。

この杖は、ある強力な力を秘めていた。

れなはこの杖を取りだし、天に掲げ、目を閉じ、力を集中する。


…れなの体が黒い光に包まれ、黄色い髪は漆黒に染まっていく。

そして、すぐに黒い髪の姿に変身した。

この杖は、れなが過去に手に入れた一品。

れなはこれに込められた悪意の力を使い、この姿になれるのである。

悪意の力と言っても、本人の理性には全く問題はない。れなは度々この力を使い、悪を討ってきた。


「…おりゃ!」

気迫のこもった声と共に、れなは体に纏う悪意の力を気合いで払う。

すると、髪の毛から黒色の色素が吹き飛ばされたように黄色の髪に戻る。

変身を解除したのだ。

「この力を上手く使いこなせれば、戦いでもかなり有効になると思うんだけどなー」

ひたすら杖を掲げ、変身しては解除し、変身しては解除を繰り返す姉の姿を呆然と見つめるれみ。

戦いの事になると積極的なやつなのだ。

「お姉ちゃん…お風呂掃除しよう?博士は出張だし、私達が研究所の事やらないと…」

「え?やーだ。料理も洗濯も掃除も買い物も印鑑も破壊も創造もれみがやってよ」

杖を握ったまま平然と言ってくるダメ姉に、れみの怒りが爆発。

「貴様ぁ!」

怒号をあげると、れなは飛び上がり、杖を握ったまま走り抜けていった。

倉庫は散らかしっぱなし。やれやれと倉庫を片付けようとするれみ。


「ん?」

ある物が目に入る。


それは…ガラクタに立て掛けられている茶色い刀。

これも確か…過去の戦いで手に入れた物。

地獄の力を宿しているという刀、獄炎刀(ごくえんとう)という武器だ。

本来なら鞘が外れ、炎の刃が飛び出すのだが、あまりに強力な力を持つ為か、普段は引き抜けないようになっている。

実際今、車をも投げ飛ばすれみの腕で引き抜こうとしても震えるばかりでびくともしない。

実はこの刀も、過去にシンと戦った際に使ったもの。

鬼子が鬼人に変身する能力も、この獄炎刀の力を模して習得した物だ。

しかし、なぜこんな刀が地上に現れたのか…それは、誰にも分かっていない。

今でこそ自宅の倉庫に置いているものの、よくよく考えると中々得体の知れない不気味な物なのだ。

「…またこれのお世話にならないと良いけど」




その頃、れなは杖を持ってきてしまった事に気づいていた。

研究所からだいぶ離れた距離で気づいてしまったようだ。ここは住宅地のど真ん中。あまり急いで走ったり飛んだりすると、周りの人々に迷惑がかかる。

「ええ…でもこんなの持って買い物なんか行ったらどんな目されるか分からないしな…。万引きしたと思われそうだし」

れなの目線が行ったり来たりしている。何とも怪しげな様子の彼女だが、幸い仕事で忙しい人々は彼女には見向きもしない。


「おい!」

いかにも強そうな声がした。

驚いて見てみると…そこには紫の球体から翼が生えたような奇妙な生き物が飛んでいた。

黄色く、鋭い目の顔がついている。れなは、この奇妙な生物を知っていた。


「デビルマルマン!!」

こいつはデビルマルマン。ダイガル、ガンデルと並ぶ闇姫軍四天王の一人。こう見えて、悪魔のなかでも最強クラスの存在で、相手するとれな達も苦戦を避けられない相手だ。

闇姫軍四天王の恐ろしさはこの見た目。威厳もクソもない見た目なので、その恐ろしさを予想できないのだ。

しかも運の悪い事に、デビルマルマンは機嫌が悪いらしい。酔っ払いのように左右にふらついて飛びながら、れなに近づいてきた。

「おいれな。その汚え足どかせよ」

「え?」

れなはふと足元を見た。


気づかなかったが、足元には闇姫を模した人形が落ちていた。

かなりの完成度だ。どうやらこれを落としてしまい、探し回っていたらしい。

闇姫軍四天王がこんな場所に何の用かと思ったが、この人形を探してるだけのようだ…。


あいにくれなは闇姫が嫌いだ。足をあげ、更にもう一発踏みつけてやった。

デビルマルマンは大激怒。

「貴様ぁぁぁぁ!!!」

「うひょひょひょひょひー!!ほほっほほほー!!!楽しいいいいいいぎもぢいいいいいいいゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャっヒホホホヒハヤナタマヤハサイマユナカタマ」

デビルマルマンは怒号をあげるなか、れなは狂ったように笑いながら残像が見えるほどの速度で闇姫人形を踏みまくる。

そんな彼女に、デビルマルマンの怒りが爆発!

「死ねええええええ!!!」

一瞬で距離を詰め、れなの頬に猛烈な拳の一撃を決めてやった。

れなは民家を次々に突き破りながら吹っ飛んでいく。

最後に頑丈な塀を派手な音と共に破壊し、コンクリートの地面に背中をぶつける。

背中を抑えながら起き上がるれなだが…起き上がった瞬間に追い付いてきたデビルマルマンにまたもや殴られた。

その打撃の嵐で暴風が巻き起こされ、コンクリートの地面が破片を散らす。

仰向けに倒れたれなを中心に穴が空いていく。

テクニカルシティの地下へ押し込まれていくれな。

地下水道へ落とされ、下水に落とされる。

「ぐうう…!!痛いし汚いし最悪だー!!」

れなは顔面の痛みを堪えながら飛行。こんな事になっても、杖はきっちり持っていた。

勢いよく下水を散らしながら、曲がりくねった地下水道をあちこち飛び回る。

主の顔を踏まれたも同然のデビルマルマンは怒り狂っており、両手から紫の光弾をひたすら放ちながられなにも追い付かんばかりの速度で向かってくる。

光弾があちこちで爆発を起こし、地下水道を破壊していく。

これ以上の破壊は許さない。

「…これ私が悪いよね。でも!だからって破壊行為が許される訳がない!!」

ようやくれなの方からデビルマルマンへ向かう。

はじめの攻撃は蹴りに決めた。というか、杖を持ってるので下手に拳は使えない。

デビルマルマンを下水に蹴り落とそうと横に回転して蹴りつける!

しかしデビルマルマンはそれをヒラリとかわし、逆に上向きにれなを蹴りつけた!

れなは今度は天井を突き破り、地上へ蹴り出される!

更に吹っ飛ばされてる滞空時間中にデビルマルマンはれなの真上に先回りし、またもや蹴りつけ、再び地下へと叩き込んだ!

地上へ地下へと忙しい日だ。流石にここまでやられるとれなのダメージもかなりのものになっているが、杖は手放さない。

「ぐ…!こんな時こそこの杖の使い時だよね…!」

れなはふらつきつつも立ち上がり、杖を頭上へ掲げる。

薄暗い地下水道を青く照らす杖。

危機を目の前にし、杖の力もより強く呼応されたのか、先程よりも更に凄まじい光を放つ!!


瞬時に黒髪になるれな。

デビルマルマンは予想だにしない変身に一瞬動きを止めてしまった。

すかさず飛び出し、今までやられたぶんを込めた蹴りを叩き込んだ!

ボールのように地上から大空目掛けてぶっ飛ぶデビルマルマン。

れなは地下から飛び出し、更に攻撃を叩き込もうとするが、デビルマルマンは回転する自身の体を瞬時に制御、翼を広げてより素早く向かい、腕を突き出してくる!

れなは両手でそれを受け止める!

勢いに押されて地面に足がめり込むが、何とか耐えられた。

やはり、黒髪になると戦闘力が倍増する。

そのままデビルマルマンの小さな手を握って持ち上げ、自身の周囲にひたすら叩きつけまくる!

コンクリートの地面が凹んでいき、最終的には大穴が空けられてしまう。コンクリートの破片から逃げ惑う人々。

「ぐ…貴様…!闇姫様みたいな髪しやがって…!」

「まあそれもそのはずだよ。悔しいけどこの力は、闇姫との戦いのなかで得たものだからね!」

デビルマルマンの怒りが頂点に達し、町の上空へ飛翔、右手を掲げ、魔力を集中させる。

右手を中心に時空が歪んでいき、紫色の巨大な光弾が形成される!

「闇姫様のお顔を踏みつけた罰だ!この町ごと消えてもらおうか!」

町の人々からしてみればとんでもないとばっちりだ。それだけは避けなくてはならない。

れなは右手を向け、エネルギーを集め、叫ぶ!

「オメガキャノン!!」

悪意の力で黒く染まったオメガキャノンが、天高く飛び出し、光弾を貫く!

貫かれた光弾は空中で大爆発、空が紫色に染まり、デビルマルマンはそれに巻き込まれる。

「お…おのれえええ!!次会ったら顔面を剥いで、買い物の時に入れ物として使ってやる…!!」

謎の捨て台詞を残し、デビルマルマンは飛ばされていった。


れなは地面にへたれこみ、息を切らした。

「よ、良かった…。私のせいで町が滅びるところだった…」

堂々としているように見えたが、れなは緊張していた。

ほっ、と胸を撫で下ろし、これからは下手にやつを刺激しないように気を付ける事にした。



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