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第Ⅱ章──生まれ変わり

 第二章──生まれ変わり




 Ⅰ


 気がつけば──そいつは(おさな)い狛犬として存在していた。

 けれど自分が何者なのか、どこから来たのかも分からなかった。

 ()(そん)(しん)が強いそいつは自分が何者であるかを(つね)(さが)(もと)めていた。



「おい、あれを見てみろ。狛がいるぞ」ニヤケながら(さい)()(きょう)(だい)(げん)(はく)に言った。

「白の国を攻めに行く前にアイツの霊気を吸い取ってやろうギシシシ」

「ほれ…ガキの(こま)──オレ様たちにキサマの霊気をよこせ!」

「嫌だ…わたくしは(したが)わない…」

「なに?…ガキ狛のくせに(なま)意気(いき)な──これでも()らえ!」犲は(むち)を振るった。幼い狛犬はその場に倒れたが、やがて立ち上がると仕方なく狡狗に従った。

「初めからそうしていれば、痛い思いをせずにすんだのに──バカな狛だ…ケケ」

「生意気なヤツだから、オレ様たちがコイツに取り憑いて白の国に行くとしようぜ」

「そいつは名案だ!白の国に行ってもオレ様たちだとバレないし、こいつの霊気も吸い取れる」


 その狛犬は今まで何度も鞭で(たた)かれた。最初は狡狗に反発(はんぱつ)していても最後は自分が折れた。心の奥底では自尊(じそん)(しん)を持ちつつも、狡狗に従おうとする悲しい(さが)がそれを邪魔(じゃま)するからだった。




 Ⅱ


「着いたにゃ──うわさどおり白の国は楽園だにゃ!」

「早くこの国を頂いちまおう兄弟!」

晶晶白露(しょうしょうびゃくろ)を持っているオレ様たちなら楽勝(らくしょう)だ…ヒヒヒ!」

「おい兄弟…変な奴が来たぞ!ギシシシ」

「本当だな兄弟…ヒ―ヒヒヒ」

「痛めつけてやるにゃ…ヒョヒョヒョ──兄弟」

「ギシシシ…こいつの兄弟の使い場所おかしいよな兄弟」

「ヒヒ、たしかになぁ…兄弟」

「おい三兄弟とやら…そのマヌケな会話はまだまだ続くのか?」

 (しゃく)(がの)(みこと)口元(くちもと)(ゆる)めて、少し小馬鹿(こばか)にした口調(くちょう)で言った────。


 ☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆


「…………これはすべて神様が仕組(しく)んだことですか?」そばにいたお付きの者が(たず)ねた。

「いいや…。私は良心を持ってしまった(さい)という(こう)()を狛犬にしてやっただけだ…。だが、なにぶん初めてのこと。こんなことになるとは…」

「犲を狛犬にするとき、なにかの間違いで時空(じくう)(ゆが)み、過去に戻されたのですね?」

「そのようだな。そして狛犬へと生まれ変わった犲は過去の自分自身と出会い、そして──()しくも錫雅尊の下僕(しもべ)となった…」

「いやはや…なんという偶然(ぐうぜん)なのでしょう…。しかし、出来過(できす)ぎですよね…?こんなことが本当にあり得ますか?」

「まぁ、どこかのいたずら好きの神がちぃーとばかり細工(さいく)をしたかもしれんな…コホンッ…」


 ☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆──☆彡☆


「お前は本当に自分が生まれた時のことを覚えていないのか?」

「はいご主人様──いしは気づくと拗隠の国を彷徨(さまよ)っておりましたから…」

「記憶を忘れた狛犬か…。何かよほどのことがあったのかもしれんな…」

「過去がどうあれ、わたくしはご主人様の下僕(しもべ)になれたのですから幸せですけん」

「お前は下僕じゃない、家来だ。──本当は(とも)だと思っているが、お前がそれを許さないから家来と言っているだけだ」

「ご主人様……わたくしは…わたくしは…」

「泣くないし……ほら、そろそろ帰ろう。お前の背中に乗せてくれ」

「はい──どうぞ、お乗りください!」



 心優しい霊神と出会い、良心の芽生えてしまった狡狗の────誰も知らない物語


 完


いし誕生の秘話はいかがでしたか?


本編では書けなかったエピソードでした。

錫雅尊によって犲という狡狗の心に良心が芽生えた時から、この狡狗をいしにしたいとずっと思っていました。

短編ながらやっと書き上げることができました。




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― 新着の感想 ―
[一言] 犲は何か違うと思っていましたが、そうだったんですね! ビックリ‼️です。 じゃあ、あたいは? まだまだ、他の外伝もあるのかな〜❓
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