72. 愚女
「アニエスを陛下に紹介したいのだ……」
それだけしか聞かされてないわたくしは、わけが分からないまま、このホールに立っていた。陛下を始めとしたロイヤルファミリーにただ恐縮している。それに、お父様、お母様、我が妹カリーヌの登場には驚くばかりだ。
でも、彼は仰った。わたくしの無実を証明すると。
「あ、あんたらああ!?」
懐かしくもあり、憎らしくもある同級生のコーム、シリル、ディオンが申し訳なさそうに現れた時、妹が大声で叫んだ。そして、カリーヌらの断罪が始まると思った。もうケヴィン様はこの世にいない。わたくしは不謹慎なれど、彼の呪縛から解き放たれたのだ。だから、無実さえ証明して頂ければ彼女らを責めるつもりはなかった。
「陛下の前で正直に話してもらおう。君たちはカリーヌに頼まれて、アニエスを陥れることに協力したんだな?」
「ち、ちょっと、ジェラール!そんな言い方ないじゃんか。まるで脅しじゃないのよお!」
「カリーヌ、彼女らは既に罪を認めてるのだ」
「なっ……」
「それに私は王太子だ。お前に呼び捨てされる覚えはない」
「くっ……」
カリーヌは項垂れ、不貞腐れた表情を浮かべる。
「も、申し訳ありません!カリーヌ様がアニエス様に扮して虐めたことも、虐められたことも全て演技でした。それを広めたのも私どもでございます!」
「何故、協力した?」
「将来の王太子妃として何でも願いを叶えると仰って……」
「兄ケヴィンはどう絡んでいる?」
「アニエス様と婚約破棄し、カリーヌ様と結ばれたいから協力をご指示されました……」
ジェラール様は証言した彼女らに大きくに頷いた。
「陛下、以上でございます。どうかアニエスの無罪をお認めください」
「よかろう。晴れて堂々とオードラン公爵家へ戻るが良い」
「ありがとうございます」
はっ!わたくしの罪が解かれた……。解かれた……。
「アニエス!」
お父様とお母様が駆け寄ってくる。そして強く抱きしめられた。
「何で本当のことを話さなかったんだ!」
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい」
暫く抱擁が続いたけど、お父様は不貞腐れたカリーヌの元へ向かって行く。そして「バッチーン!」と平手打ちをした。
「この大馬鹿ものがーーっ!!」
「いったーーい!!やめてよお!お父様ああ!」
「どれだけ性根の腐った娘なんだ、お前は!!」
何度も何度も平手打ちするお父様は、涙を流していた。
「も、もういいよ……」
わたくしは思わず口にした。
「よくない!……陛下!申し訳ございませんでした!我が娘、愚女カリーヌをどうか処分なさってください!」
お父様は無理矢理カリーヌを座らせ、ともに土下座しながら詫びた。
「ふーむ……そうだな。カリーヌの処分は父親であるお前が決めろ。それで良いかな、ジェラール?」
その時、彼はわたくしと目を合わせた。そして……。
「はい。アニエスさえよければ」




