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62. 内柔外剛

 ※ジェラール視点


 陛下へ拝謁し、ルーク様の容態悪化に至る経緯を申し開きした。心臓の病などと全くのデタラメを並べ心苦しい限りだが、必死に演技したおかげでご納得頂いたようだ。陛下から明日の貴族院議会での説明を指示され、私は宮殿を退出した。


 これで第一関門は突破だ。ホッと胸を撫で下ろしながらビソンと宿泊する宮廷のゲストルームへ向かう。


「殿下、万全の体制を整えておりますから、ご安心ください」


 とはいえ、彼の連れて来た配下は四、五人。私のお供である役人を入れても十人と満たない。何が万全なのか……。


「アニエスの警護は?」

「二名です。それにバルナバが側に」

「なに?彼は王都へ来てるのか?」


 おい、留守番と言ったはずだ。何をどさくさに?


「申し訳ありません。彼もアニエスが心配で王都へ行きたがっていましたし、こちらも人手は多い方が良いので許可しました」

「……そ、そうか」


 明日の議会が無事終われば、アニエスを宮殿へ連れて行かなければならない。だが、その前に兄が強引に彼女を奪うとも限らず、心配はしていた。私も近くに宿泊する。だから見張っていようと考えていたのだ。


 まあ、バルナバや警護の者が居るなら騒ぎがあれば、直ぐに駆けつけて止めることは可能だ。今回、彼のどさくさな行動は不問にしよう。


「……にしても、何か物々しい雰囲気だな」


 宮廷前の大通りには軍隊らしき兵隊が警戒に当たっていた。臨時の議会開催ではあるが、ここまで警備する必要はないだろうに。


「殿下、明日の報告はどちらに転がっても可笑しくはありません。暴動が起こるとも限らず、王室としては最大限の警戒をしてるものだと思います」


 暴動って……そ、そんなに大事な報告なんだ……。


 正直、十年前に王都から辺境の地、そしてペチェア島へ転々とした私は政局に疎い。ルーク様薨御とはそんなに影響する話なのか?


 嘘なのに……。


 そう考えると背筋が寒くなってきた。だがもう遅い。陛下へ真顔で申し開きしたのだ。しっかりと信じて頂いたのだ。もうこうなれば、とことん「嘘・デタラメ」を並べまくるしかない。




 宮廷に入るとブリスが一人でキセルを吹かしている姿を捉えた。何やら考えごとをしてる様に見える。


「あ、ヤツだ」

「殿下、彼は果たして味方なのですか?……まあ、明日になれば分かりますが」

「もしかして、私らの到着を待っていたのかな」

「さあ。一応、声掛けしましょう」


 と、近寄った時、ブリスが私に気がついてこちらへ向かって来た。


「殿下、報告は終わりましたか?」

「ああ、ご納得頂いた。問題は明日だ。それよりアニエスは?」

「ええ、部屋へ送り届けましたよ。次官殿の部下が入口を見張ってますから、先ずは心配ないかと」

「そうか。ありがとう。……で、兄とは?」

「まだ拝謁してません。いや、会う気はない」

「それで大丈夫なのか?」

「会えば、アニエスを連れてこいとか言われそうなんでね。面倒くさいじゃないですか」

「な、なるほど……」

「まあ、明日はケヴィン様の警護に当たるから、その時に言われるでしょう。だが大混乱の最中だ。諦めざるを得ないね、きっと。ははは……」


 大・混・乱……か。ビソンの暴・動と言い、私の嘘は政局にとんでもない影響を及ぼすのだ。


 ふーむ。思ったよりこの国は安定していない。強そうに見えて実は繊細でもろい内柔外剛(ないじゅうがいごう)の様だ……。


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